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第4章
コック長
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第3回目の会議で、私はそのチョコレートの重要性について説明することにした。
チョコレート嫌いの殿下は置いておいて、ここでネックなのは会議参加者たち全員がチョコレートをよく知らない可能性があるということだ。
「なんですか、それ?」
で、話が終わってしまう可能性がある。
それは困る。
ほかに良い案があったのならいいけど、それがないのに私の「チョコレート」案を却下されてしまえば、本当にたまったものではない。
私はさっさと結婚してマハナ国での地位を安定させるために、この国の経済を豊かにする必要がある。
そのために、あのチョコレートをより美味しく商品化出来る形にする。
手始めに会議で却下されることのないよう、会議までに試作品を作り、会議参加者たちに配る。
実際に食べてもらって、売れるかどうかを判断してもらうのだ。
私は城のシェフに、試作品作りを手伝ってくれるようにお願いしに行った。
直接私が1人で赴くのはなんとなくはばかれるので、殿下にも一緒に同行してもらう。
本当なら殿下の右腕であるケイキや2人の世話係たち、そして衛兵のアオといった面々の方が仲介者には向いていると思ったが、女性陣ならまだしも、たぶん男性陣と行けば殿下は怒る。
現在比較的穏やかで、嫉妬で怒り狂ったことも忘れていそうな殿下の心をこれ以上刺激するわけにはいかない。
それに、彼らにはほかの業務もあるだろうし。
それならもう、殿下で良いやという結論に至った。
「チョコレート、ですか?」
城のコック長は、困惑していた。
「はい。ご存じですか?」
「ええ、まあ。それはもちろん……」
コック長は殿下の方を見る。
「あの、本当によろしいのですか?」
「問題ない」
殿下はきっぱりと言った。
「我が婚約者の頼みだ。よろしく頼む」
「そこまでおっしゃるのであれば……。承知しました」
コック長は了承してくれた。
彼も、例の事件は知っているみたいだ。
「ありがとうございます。つきましては、高級チョコレートを作っていただきたいのです」
「高級ですか?」
「はい。高級で希少なものをふんだんに使った、富裕層向けの商品を作りたいと考えています」
「なぜ富裕層向けなのですか?」
「マハナは今世界貿易の枠組みから除外されることになりました。つまり、海外と取引するにはこの国に旅行しに来てもらうという手段しかありません。そうなると、海外旅行出来るクラスの人間が今回のターゲットになります」
「お言葉ですが」
と、コック長。
「本来、このチョコレートは郷土料理です。出来るだけお金をかけずに甘いものを食べるというものですよ。それを富裕層向けにだなんて。少しミスマッチではないですか?」
「そんなことありませんよ」
私はにっこりと微笑む。
「お金をかけずに手頃な値段で購入出来るというのも、もちろん重要です。ですが、その無駄にお金をかけることこそがお金持ちには重要なんですよ」
「と言うと?」
「安価なものではなく、あえて高級なものを買うということは、一種のステータスなんです。パイナップルのときと同じですよ。高いものであれば、より彼らの自尊心は高められる。だからみんな買い漁ろうとする、というわけです。それに、お金をかければかけるほど、美味しいものが出来上がるでしょう? 美味しければ口コミは広がる。そして、さらに売れるようになります」
「なるほど……」
コック長は微笑み返した。
「失礼なことを申し上げてしまい、申し訳ありません」
「いえいえ、お気になさらないでください」
「実は、カカオの生産地が私の出身地なんです」
「へぇ」
あの2人と同郷なのか。
「私も好きなんです、チョコレート。いろいろあってここでは食べられなくなりましたが。マーガレット様にそこまでご興味を持っていただけて、あの村出身の身としては鼻高々です。本当にありがとうございます」
チョコレート嫌いの殿下は置いておいて、ここでネックなのは会議参加者たち全員がチョコレートをよく知らない可能性があるということだ。
「なんですか、それ?」
で、話が終わってしまう可能性がある。
それは困る。
ほかに良い案があったのならいいけど、それがないのに私の「チョコレート」案を却下されてしまえば、本当にたまったものではない。
私はさっさと結婚してマハナ国での地位を安定させるために、この国の経済を豊かにする必要がある。
そのために、あのチョコレートをより美味しく商品化出来る形にする。
手始めに会議で却下されることのないよう、会議までに試作品を作り、会議参加者たちに配る。
実際に食べてもらって、売れるかどうかを判断してもらうのだ。
私は城のシェフに、試作品作りを手伝ってくれるようにお願いしに行った。
直接私が1人で赴くのはなんとなくはばかれるので、殿下にも一緒に同行してもらう。
本当なら殿下の右腕であるケイキや2人の世話係たち、そして衛兵のアオといった面々の方が仲介者には向いていると思ったが、女性陣ならまだしも、たぶん男性陣と行けば殿下は怒る。
現在比較的穏やかで、嫉妬で怒り狂ったことも忘れていそうな殿下の心をこれ以上刺激するわけにはいかない。
それに、彼らにはほかの業務もあるだろうし。
それならもう、殿下で良いやという結論に至った。
「チョコレート、ですか?」
城のコック長は、困惑していた。
「はい。ご存じですか?」
「ええ、まあ。それはもちろん……」
コック長は殿下の方を見る。
「あの、本当によろしいのですか?」
「問題ない」
殿下はきっぱりと言った。
「我が婚約者の頼みだ。よろしく頼む」
「そこまでおっしゃるのであれば……。承知しました」
コック長は了承してくれた。
彼も、例の事件は知っているみたいだ。
「ありがとうございます。つきましては、高級チョコレートを作っていただきたいのです」
「高級ですか?」
「はい。高級で希少なものをふんだんに使った、富裕層向けの商品を作りたいと考えています」
「なぜ富裕層向けなのですか?」
「マハナは今世界貿易の枠組みから除外されることになりました。つまり、海外と取引するにはこの国に旅行しに来てもらうという手段しかありません。そうなると、海外旅行出来るクラスの人間が今回のターゲットになります」
「お言葉ですが」
と、コック長。
「本来、このチョコレートは郷土料理です。出来るだけお金をかけずに甘いものを食べるというものですよ。それを富裕層向けにだなんて。少しミスマッチではないですか?」
「そんなことありませんよ」
私はにっこりと微笑む。
「お金をかけずに手頃な値段で購入出来るというのも、もちろん重要です。ですが、その無駄にお金をかけることこそがお金持ちには重要なんですよ」
「と言うと?」
「安価なものではなく、あえて高級なものを買うということは、一種のステータスなんです。パイナップルのときと同じですよ。高いものであれば、より彼らの自尊心は高められる。だからみんな買い漁ろうとする、というわけです。それに、お金をかければかけるほど、美味しいものが出来上がるでしょう? 美味しければ口コミは広がる。そして、さらに売れるようになります」
「なるほど……」
コック長は微笑み返した。
「失礼なことを申し上げてしまい、申し訳ありません」
「いえいえ、お気になさらないでください」
「実は、カカオの生産地が私の出身地なんです」
「へぇ」
あの2人と同郷なのか。
「私も好きなんです、チョコレート。いろいろあってここでは食べられなくなりましたが。マーガレット様にそこまでご興味を持っていただけて、あの村出身の身としては鼻高々です。本当にありがとうございます」
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