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第4章

媚薬

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「えっ、媚薬……?」

「とりあえず、今日はもう休め」

「媚薬? 媚薬ってどういうことですか?」

「うるせぇ。そのまんまの意味だ」


 私は殿下に連れられ、部屋に戻る。


「媚薬って、私どうなるの?」

「そんなにキツいやつじゃない。心配するな。そもそもお菓子として扱われていたものを、誰かが媚薬としても使えるとかなんとか――ああ、もうこれ以上俺に説明させるな!」


 殿下はなぜかキレて、私をベッドの上に投げ捨てた。

「痛っ」

「ちょっと待ってろ。あいつらに話つけてくる」

「あいつらって」

「あんたの世話係だ!」


 殿下はカッカしながら部屋を出ていく。


 しばらくして、部屋に2人の世話係たちが戻って来た。

「マーガレット様、すみませんでした……」

「私たち、そういうつもりではなかったんですが」


 彼女たちは可哀想に、ペコペコと私に何度も頭を下げる。

「いえいえいえ、わかってます。怒っているのは殿下だけですし」

 私は彼女たちに気にしないでと伝えた。


 というか、なんであの人あんなにイライラしてたんだろう。


 媚薬だなんだと騒いでいたけど、少し身体が熱くなるくらいの効果があるだけで、そんなに大げさになるほどではないのに。


「夜遅くにすみません。もうお部屋に戻っても大丈夫ですよ」

「は、はい。失礼しました」


 私は2人を帰らせ、殿下の方を向いた。

「あそこまでさせる必要はないでしょう。彼女たちは私の体調をおもんぱかってくれたのよ」

「……」


 殿下は黙りこくったまま、部屋の椅子に座っている。

「何かあったの?」

 私は尋ねた。

「チョコレートのことで。言いたくないなら、もちろん言わなくても良いけど」

「幼いころ」

 殿下は口を開く。


「お菓子だと言われて、当時の世話係に渡されてな。そいつは女だった」

「えっ」

「子どもだったからというのもあろうが、俺はとことんああいうものに弱いらしい。未遂だったが、危ないところだった」

「うっわぁ……」


 ウル殿下と既成事実を作れば、うまくキャリアアップできると思ったのだろうか。


 どこの国も、宮廷はそんな感じなのね。
 
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