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第4章

チョコレート

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「ウル殿下!」

「うおっ! ーーな、なんだ?」


 私は走って執務室に向かい、勢いよく扉を開けた。


 突然入ってきた自分の婚約者に、ウル殿下は驚いて腰を抜かした。

「ウル殿下、チョコレート!」

「えっ、なんだ? チョコレート?」

「チョコレート! ーーあっ、ケイキさん」


 ウル殿下に注目しすぎて、隣に座るケイキにきづかなかった。

 彼もまた、目と口を大きく開けている。

「お久しぶりです」

「お、お久しぶりです」


 私たちはお辞儀をして挨拶を交わした。


 あっ、そう言えば。

 殿下から、

「ケイキとは金輪際口を聞くな」

 と釘を刺されてたんだった。


 ……まあいいや。

 殿下、ここにいるし。


「チョコレートですよ、殿下」

「だからチョコレートがどうしたんだ?」


 私は彼に近づき、無様に座り込んだ彼の腕を取る。

「パイナップルの次に流行りそうな食べ物です」

「ああ……」


 なんか反応が今1つだな。


 想像していたものとは違ったウル殿下の反応に少々がっかりしつつ、私は彼を立ち上がらせる。

「チョコレート、ご存知ですか?」

「ご存知も何も、マハナの田舎の方の郷土料理だろ。随分とマニアックなもん持ってきたな」

「そうなのですか?」


 私はケイキに視線を向ける。

「ええ」

 彼は大きく頷いた。

「チョコレートは、ここからさらに南の地域で取れるカカオという木の実をすり潰し、その脂肪分に砂糖とミルクを混ぜて固めたものですね」

「へえ」


 カカオ。

 まったく聞いたことがない。


「それで?」


 殿下は椅子に座り直した。

「なんでチョコレートなんだ?」


 私は答える。

「さっき、世話係の人たちからチョコレートをもらったんです。食べてみたら本当に美味しくて。こんなもの、ブローディアじゃ手に入らないですし、きっとかなり売れると思います」

「ちょっと待て。チョコレートを食べたのか?」

「? はい。そうですけど……」


 ウル殿下は頭を抱え、盛大にため息をついた。

「……だからそんなにテンションが高いのか」

「どうかしましたか?」


 ウル殿下は、言いにくそうな顔をする。

「チョコレートはただ単なるお菓子じゃねぇ。媚薬としても使われていた。食べると身体が熱くなって、脳が興奮するんだ」
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