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第3章

効果②

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 そこからは、破竹の勢いだった。


 最初は個人輸入という形で買う人が多かった。

 一部の金持ちの連中が個人で楽しむために、というのが主な目的で、お暇でお金の余っているなんでも一番初めじゃないと気が済まないマダムたちが、自分のポケットマネーでわざわざマハナのパイナップルを購入する。

 それを自分だけのために食べたり、はたまた家族に少しだけ食べさせたり、遊びに来た友人たちに振舞ったりなど、この辺はもう想像だが、そうなることによってどんどんとマハナのパイナップルに注目し始める人々が増え、それに気づいた商人たちが大量に輸入するようになり――。


 私の「ブローディア国第一王女」という名前も、効果があったようだ。


 あのブローディア国王女が召し上がった黄金の果実。


 その文言が世界各国に広がり、マハナ産のパイナップルがブームになっているらしい。


 ブローディアという大国の名前が入っているだけで、その王女が好んでいるというだけで、こんなにも影響力があるのかと正直驚いている。


 私はあの国じゃ邪魔者扱いで、よくて王族のおもちゃだったのに。


 他の国では、ブローディア国王女という称号があるだけで価値があるようだ。


 その反響に、最初は少し渋い顔をしていた王侯会議の連中もにっこりだった。


 世界各国から金が集められ、それらの一部が城の宝物庫に次々と仕舞われていく。


 こんなに上手くいくとは正直思っていなかった。

 人間って、こんなに単純なのか。


 思わず乾いた笑いがこみあげてきた。


「ウル殿下、マーガレット様!」


 執務室の扉を強引に開けて、1人の文官が飛び込んでくる。

「在庫がありません!」



 ウル殿下は、顎に手を当てて少し考えこむそぶりを見せた。

「どうしますか? 今からパイナップルを育てても間に合いませんが」


 文官は酷く焦っている様子だった。

 ここまで走ってきたのか、肩が大きく上下している。

「そうか」


 だがそれとは対照的に、その話を聞いてもウル殿下は顔色1つ変えることはなかった。

「じゃあ、次から注文があっても断ってくれ」

「ですが……」

「しょうがないだろ。ないもんはない」


 文官は困惑した表情を見せる。


 彼の言いたいことはなんとなくわかった。


 せっかく爆発的に人気になったのに、ここで、

「もう売れない」

 なんて言ってしまうと、稼げるものも稼げなくなってしまうということなのだろう。


 文官は恐る恐るというふうに殿下に尋ねる。

「今、マハナの市場に出回っているものを全部買い取るとかは」

「馬鹿か」

 殿下はすぐさま吐き捨てた。

「これはあくまで貿易だ。金を稼ぐために国民の食生活を脅かすのは、国の行動として反しているだろ」

「……はい」


 文官はうなだれた顔で、部屋から出て行った。



 





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