王女なのに、忌み子として無理やり追放&結婚させられました ~少女は南国で幸せを誓う~

小倉みち

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第2章

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 その夜、ウル殿下はいつものように私の髪を弄んだり、抱きしめてくることもなく、即ベッドに潜り込んで、私に背を向けた。


 厳しい顔で目をつぶった彼に向かい、私は声をかける。

「嫉妬したの?」

「……うるさい」

 ウル殿下は、低くくぐもった声を出した。


 私も彼の隣で横になり、殿下の方に身体を向ける。

「ねえ、殿下」

「……」


 ウル殿下は何も言わない。


 仕方がないので、私は彼の肩を軽く叩いた。

「殿下」

「……」

「殿下ぁ」

「……」

「でーんか」

「……」

「でん」

「あー、もう。うるさい」


 殿下は私の手を掴み、引っ張った。

 私の身体が浮き、彼は両腕を使って私を自分の側に持っていく。

 そのまま、私の頭の下に腕を差し込んだ。

 殿下の筋肉質な腕から、彼の体温が伝わる。


「マーガレット」

 眠そうな声で殿下は言った。

「あんたは俺のものだ」

「……うん」

「で、俺はあんたのものだ。俺たちはこれから結婚する。もちろん王子と王子妃として、未来の国王夫妻として。だが、それ以前に俺たちは夫婦じゃなきゃいけない」

「うん」

「もし王子とその妻という関係性だけだったら、俺は今ここであんたを犯して子どもを孕ませることだって出来る。だが、それじゃ駄目なんだ。ちゃんと愛し合う夫婦じゃなきゃ」


 殿下は私の身体を胸に押しつけた。

 もう片方の手が、私の腰に回される。

 彼の分厚い胸板から、心臓の鼓動が聞こえる。


「ごめんなさい」

 私はそう言って、ウル殿下の背中に手を回した。

 彼の背中は大きく、手が届かない。
 
「ごめんね、殿下」


 ウル殿下は震えていた。


「明日は」

 殿下は小さな声で言った。

「俺の公務についてくれ」

「うん」

「ずっと傍にいてくれ」

「わかった」

「……俺が嫌か?」

「なんで?」

「女々しいだろ?」


 殿下は自嘲するように軽く笑った。

「嫌なんだよ、俺。あんたが他の男の方を見るのでさえ」

「私のこと好きなの?」

「知らねぇよーーでも、もしあんたに裏切られたら、俺は多分生きていけない。無理だ」

「そっか」

「だから、ここにいてくれ。俺を捨てないでくれ」

 彼はそう言って、私の額に軽く唇を当てた。

「ここにいていいの?」

「ああ」


 もう殿下は何も言わなくなった。

 もしかして、眠ったのかもしれない。


 私は殿下の心臓の音を聞きながら、生まれて初めて安心感に包まれた。
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