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第2章

財政

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「……嘘でしょ?」

「本当だ」


 私は頭の中で、結婚式の準備やら何やらを思い浮かべる。


「結婚式って、確かに結構するけど。それでも財政をひっ迫するほどじゃないんじゃない?」

「それでさえひっ迫するんだ。正直言って、この国は今本当にギリギリだ。ブローディアに貿易を一方的に打ち切られたせいで、他の国からもあまり買われないようになったんだ」

「パイナップルってさ、よそでは取れないんでしょ? それなら、どうしてどの国も買わなくなったのかしら」


 
 私は向こうでパイナップルを食べたことがないから全くわからないが、少なくともそれで国が成り立っていたのなら、かなりの年数パイナップルが大量に輸出されていたということになる。

 すると、例えばブローディアでも、パイナップルは食事風景の中で一般的なものになっているのではないだろうか。

 なら、わざわざブローディアがマハナとの貿易を着る必要はないはずだ。


「それがな、ブローディアでも取れるようになったんだ」

 と、ウル殿下。

「でも、南国でしか取れないのよね?」

「ああ。しかし、どうも魔法で常に暖かい気温を保てる環境を作り出したらしい。マハナの気温を再現して、作ることが成功した。それが安く販売されているから、」

「ブローディアも他の国も、わざわざマハナまで買い付けに来なくなったってことね」


 私は腕を組んで考える。


「ねぇ」

「ん?」

「どうして、マハナは何の対策も取らなかったの?」

 私はウル殿下に尋ねた。

「ああ……。やった」

 でも、と言い訳がましく言う。

「所詮、俺たちの国は弱小だ。ブローディアよりもさらに安くすれば、余計に生きられなくなる。だからほとんどを王宮の財政で賄っているんだ。しかし、それも限界が来ている」

「ウル殿下ってさ、馬鹿なの?」

「……あ?」

「馬鹿っていうか、わけわかんないっていうか」

「……何が言いたい?」

「だって、初めて会ったときに私に対して、この国を変えないといけないとかなんとか言っていたくせに、その程度で諦めるんだと思って」

「じゃあ、あんたが提案しろよ」


 私に馬鹿と言われ、不機嫌になったウル殿下が言った。


「俺にそこまで言うならな」

「簡単よ」

 私は即答する。

「値段を高くすれば良いわ」

「……馬鹿か? そんなことをすれば、ますます売れなくなるだろ」

「わかってないわね。人っていうのはね、値段が高いものほど良いものだと思う傾向にあるのよ。で、その高いものを買うのが一種の自分たちを表現する目的になっているわけ」

「どういうことだ」

「つまり、値段を高くしてマハナのパイナップルを特別にさせるの。もちろんそれだけじゃ駄目よ。ブローディアのパイナップルはあくまでも人工。天然を強調した商品として売り出せば、全世界のパイナップル好きな金持ちが、ある程度は買うようになるわ」
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