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第1章

結果オーライ

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  その後、ひたすら爆笑し続けるウル殿下に飽き飽きした私は、ブローディア国の方がマシだと言うことに気づき、無事に船に乗って帰りました。

  ーーなんてことはもちろんなかったが。


  心の底から本当に帰ってやろうかと思うくらい、めちゃくちゃウザかった。


「ごめん。ごめんって。許してくれ」

「……」

  私は、ウル殿下の謝罪を無視した。


  夜も、抱きついてくるウル殿下の身体を押しのけて眠った。

「ごめんな。悪かった」

「本当に悪いと思ってるの?」

「うん」

「じゃあ、なんでそんなニヤニヤしながら言ってんのよ!」


  あー、もう本当に恥ずかしい。

  穴があったら入りたいくらいだ。


  私は布団の中でも頭を抱え、縮こまる。

  小さく丸まった私を見て、もう一度抱きしめようとしてきたウル殿下に向かって、私は軽く蹴りを入れた。


「辞めてって。そんな気分じゃないわ」

「恥ずかしくて?」

「ウザい! 嫌い!」

  私がこんなにも拒否しているのに、それを苦と思っていないのか、ゲラゲラと笑い続ける婚約者を見て、この男は頭がおかしいんじゃないかと思った。


  が、実際は私が思っているよりも、そこまで悪い評価になったというわけでらないらしい。


  次の日、まだ布団から出られない私を置いてウル殿下は仕事をしに行き、そして帰ってきた。

  王子の公務だからもちろん、国王夫妻と一緒に仕事をする機会が多いのだが、


「父上も、そこまで気にしていなかった」

  と、殿下は私に向かって言ってくれた。


  確かにあの礼は王子妃となる人間が国王陛下に向かってするお辞儀からかなり離れた存在ではあったが、少なくとも私が国王夫妻を尊敬しているという気持ちは伝わったらしい。


「それにほら、仮にもブローディアっていう大国から来た姫が、マハナの伝統的な礼を使ったってのが、父上にはグッと来たみたいだ」

「グッと?」

「そう。まあ俺たちの国は基本おおらかだからな。気にすんな」

「……うん」


  一応、結果オーライと言うべきなのだろうか。

  とりあえず好印象は与えたようだ。


「だから、機嫌直せよ」

「別に悪くないわよ」

「悪いよ」

「悪くないってば」

「ほら、怒ってるだろ?」

  ウル殿下は私に近づき、腕を掴んで引き寄せた。

「……っ」

  私は声にならない悲鳴をあげる。

「うーん。まだガチガチだなあ。緊張してるのか?」

「う……。してない」

「嘘つけ」

  殿下は私の背中を軽く叩いた。

「俺は優しいからな。無理やりは好まない。だから、」

  ウル殿下の吐息が、私の耳に直撃する。

「早く慣れてくれ」
  
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