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第2章
夜
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バーナードに借りを作るのは少し気に食わないが、背に腹は代えられなかった。
私は超鬼教師である数学担当の林先生ばりに厳しいバーナードの指導のもと、1日中数学を叩きこまれた。
正直、あの林先生にキレられる方が、まだマシってくらい。
「なんでこんなのも出来ないんだ?」
「お前、本当にカオルの妹かよ」
「これ、10歳くらいの子どもが習う範囲じゃないのか?」
など。
普通に嫌味含めた罵り方をされ、私はすっかり参ってしまった。
ただまあ、教え方はかなりうまく、不本意ながら、高校生になってから今までの数学の範囲はきっちり網羅出来たと思う。
夜遅くに帰ってきた薫は、私が半泣きになりながらバーナードに教えを乞うているのを、驚き半分、嬉しさ半分といった表情で見つめていた。
「良かった。2人とも、仲良くなったみたいで」
「「仲良くない(ねぇよ)!」」
集中力の限界による苛立ちで、私とバーナードはほぼ同時にそう叫んだ。
「勘違いするな! 俺はお前の頼みだから、妹に教えてやっただけだ」
「そうよ。今日は本当に助かったしマジでありがとうございましたって感じだけど、仲良くはなってない。そこんとこ、お兄ちゃんはわかってて」
「わかった、わかった」
そう言うわりに、兄は嬉しそうだった。
日曜日は兄の家に泊まると、明日の学校に間に合わない気がするので、さっさと兄を連れて元の世界に戻る。
来た道と同じように薫が「扉」を開き、小学校のトイレに戻る。
「もし毎週通うなら、お願いだから小学校のトイレじゃなくて、他の道も見つけてほしい。普通に犯罪な気がする」
と、私は兄に訴えたが、あののほほんとした様子だと、次週からそうなる気はまったくしなかった。
帰路につき、1日ぶりの家に灯をともす。
いつも通り風呂を沸かし、歯を磨き、明日の準備をする。
違うのは、今回が初めての両親のいない週末だったということ。
だけどまあ、と、ベッドに入ってぼんやりと自分の部屋の天井を見つめた。
両親のいない生活は、本当に辛くて寂しいものだって覚悟していたけれど。
生き別れの兄と異世界の人たちと過ごしたおかげで、その気は少し紛れたのかもしれない。
私は超鬼教師である数学担当の林先生ばりに厳しいバーナードの指導のもと、1日中数学を叩きこまれた。
正直、あの林先生にキレられる方が、まだマシってくらい。
「なんでこんなのも出来ないんだ?」
「お前、本当にカオルの妹かよ」
「これ、10歳くらいの子どもが習う範囲じゃないのか?」
など。
普通に嫌味含めた罵り方をされ、私はすっかり参ってしまった。
ただまあ、教え方はかなりうまく、不本意ながら、高校生になってから今までの数学の範囲はきっちり網羅出来たと思う。
夜遅くに帰ってきた薫は、私が半泣きになりながらバーナードに教えを乞うているのを、驚き半分、嬉しさ半分といった表情で見つめていた。
「良かった。2人とも、仲良くなったみたいで」
「「仲良くない(ねぇよ)!」」
集中力の限界による苛立ちで、私とバーナードはほぼ同時にそう叫んだ。
「勘違いするな! 俺はお前の頼みだから、妹に教えてやっただけだ」
「そうよ。今日は本当に助かったしマジでありがとうございましたって感じだけど、仲良くはなってない。そこんとこ、お兄ちゃんはわかってて」
「わかった、わかった」
そう言うわりに、兄は嬉しそうだった。
日曜日は兄の家に泊まると、明日の学校に間に合わない気がするので、さっさと兄を連れて元の世界に戻る。
来た道と同じように薫が「扉」を開き、小学校のトイレに戻る。
「もし毎週通うなら、お願いだから小学校のトイレじゃなくて、他の道も見つけてほしい。普通に犯罪な気がする」
と、私は兄に訴えたが、あののほほんとした様子だと、次週からそうなる気はまったくしなかった。
帰路につき、1日ぶりの家に灯をともす。
いつも通り風呂を沸かし、歯を磨き、明日の準備をする。
違うのは、今回が初めての両親のいない週末だったということ。
だけどまあ、と、ベッドに入ってぼんやりと自分の部屋の天井を見つめた。
両親のいない生活は、本当に辛くて寂しいものだって覚悟していたけれど。
生き別れの兄と異世界の人たちと過ごしたおかげで、その気は少し紛れたのかもしれない。
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