7 / 45
第1章
家
しおりを挟む
このときの私は、きっと気でも違っていたんだと思う。
そりゃ、確かにこの男は可哀想だった。
傍から見て、哀れというか無様というか。
だって考えてみてほしい。
大人の男が、男子小学生から虐められている様を。
ボコボコにされている様を。
一体何がどうなってああなったのか全く見当もつかないけど、とりあえず惨めだった。
本当に惨めだった。
それを踏まえても、一体なぜ私はこの男を家に連れてきたのだろうか。
甚だ疑問だ。
若い男は、和室の隅で蹲っていた。
身体には細かな擦り傷や切り傷、脛や肘に青あざが何か所が出来ている。
確実に痛いところを何度も蹴られたようだ。
この男は先ほどまで地面にしゃがみ込んでいたから、身体のあちこちに砂がついている。
最悪だ。
先に風呂に入らせれば良かった。
畳が砂まみれになってしまった。
本当、私はどうかしている。
なぜこの男を連れてきたのだろうか。
お母さんとお父さんが死んで、かなり精神が不安定になっているのかもしれない。
正常な判断が出来ていない。
1人暮らしの天涯孤独JKが、見知らぬ若い男を家に連れ込むなんてどう考えてもヤバい。
しかも両親が死んでから数日も経っていないのに。
これがあれか。
不良への道なのか。
「す、すみません……。助けていただいて、ありがとうございます」
「い、いえ」
和室の中の大きな塊が喋った。
「本当に面目ないです」
「いえ、お気になさらず」
私はそう言って、持ってきたバスタオルと父親のスウェットを渡す。
「一旦、お風呂に入ってください。砂まみれですので」
「お、お風呂ですか?」
「はい。お願いします」
この状況がかなりイレギュラーなのはさておき、ここでは私が家主だ。
この男に拒否権はない。
「湯舟は沸かしたので、入ってください」
「は、はあ」
私は男を無理やり起き上がらせ、風呂場に連行した。
そりゃ、確かにこの男は可哀想だった。
傍から見て、哀れというか無様というか。
だって考えてみてほしい。
大人の男が、男子小学生から虐められている様を。
ボコボコにされている様を。
一体何がどうなってああなったのか全く見当もつかないけど、とりあえず惨めだった。
本当に惨めだった。
それを踏まえても、一体なぜ私はこの男を家に連れてきたのだろうか。
甚だ疑問だ。
若い男は、和室の隅で蹲っていた。
身体には細かな擦り傷や切り傷、脛や肘に青あざが何か所が出来ている。
確実に痛いところを何度も蹴られたようだ。
この男は先ほどまで地面にしゃがみ込んでいたから、身体のあちこちに砂がついている。
最悪だ。
先に風呂に入らせれば良かった。
畳が砂まみれになってしまった。
本当、私はどうかしている。
なぜこの男を連れてきたのだろうか。
お母さんとお父さんが死んで、かなり精神が不安定になっているのかもしれない。
正常な判断が出来ていない。
1人暮らしの天涯孤独JKが、見知らぬ若い男を家に連れ込むなんてどう考えてもヤバい。
しかも両親が死んでから数日も経っていないのに。
これがあれか。
不良への道なのか。
「す、すみません……。助けていただいて、ありがとうございます」
「い、いえ」
和室の中の大きな塊が喋った。
「本当に面目ないです」
「いえ、お気になさらず」
私はそう言って、持ってきたバスタオルと父親のスウェットを渡す。
「一旦、お風呂に入ってください。砂まみれですので」
「お、お風呂ですか?」
「はい。お願いします」
この状況がかなりイレギュラーなのはさておき、ここでは私が家主だ。
この男に拒否権はない。
「湯舟は沸かしたので、入ってください」
「は、はあ」
私は男を無理やり起き上がらせ、風呂場に連行した。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる