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第1章
ハンバーグ
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夜、俺の作ったハンバーグを竹中は美味しそうに頬張っていた。
「美味しい?」
「うん。美味しい」
嬉しそうな顔で食事をする竹中を見て、俺は少しホッとした。
心の中で、
「これはお礼だから。一泊させてもらったお礼だから」
と言い訳しながら、鍵をかけて近くのスーパーに向かった。
カギを渡されたところで、外に出たところで、竹中にカギを返す方法はもう一度顔を合わせることだけだ。
ロッカーや郵便受けに入れてしまっても良いが、人の貴重品を勝手にそんなところに入れるのは問題だし。
うんそうだ。
だからこれは断じて違う。
全くもって下心とかはない。
そう言い聞かせながら、後ろめたい気持ちを払拭するためにひたすらタネをこね続けた。
正直、俺の料理のレベルはそんなに高いわけじゃない。
朝から深夜まで仕事をして、家では眠るだけの日々。
休日あまりにも外に出たくないときに、家にあるもので軽く作るくらいだ。
出来ることと言ったら、めんつゆで味つけしたスパゲッティくらいだろうか。
そんな俺が作った見栄えの悪いハンバーグを、竹中は心底美味しそうに食べている。
いや、本当は美味しくないのかもしれない。
気を遣っているだけなのかもしれない。
タネはべちゃべちゃで、焼き過ぎて焦げている。
正直、出来合いを買って食卓に並べた方が良かったんじゃないか――。
そんな不安に気づいたのか、竹中はにっこりと微笑んでみせる。
「人のご飯食べられるの、すごく嬉しい。ほら、自分の料理って飽きちゃうから……」
「竹中、料理するのかよ」
俺は驚きを隠せなかった。
「ああ、えっと……」
竹中は苦笑する。
「あの、ごめん……。下手くそとかそう言う意味じゃなくて」
ここまで言って、全然自分が弁明出来ていないことに気づいた。
「うーん。私、料理苦手なの」
「本当ごめん……」
「良いの、気にしないで。事実だから」
竹中は首を横に振る。
「料理教室も通おうと思ってたんだけどね。仕事が忙しかったりで……。頑張って作っても褒めてもらえないし、全然成長しないしで最近は全然作ってないの」
「そうだったのか」
だから、冷蔵庫があんなに殺風景だったのぁ。
「うんそう。だから嬉しいの。ありがとう」
竹中の大人っぽい笑顔に一瞬見惚れていた俺は、次の言葉に反応するのが数秒遅れた。
「羽柴君が良いならさ。私と一緒に住まない? ここで」
「美味しい?」
「うん。美味しい」
嬉しそうな顔で食事をする竹中を見て、俺は少しホッとした。
心の中で、
「これはお礼だから。一泊させてもらったお礼だから」
と言い訳しながら、鍵をかけて近くのスーパーに向かった。
カギを渡されたところで、外に出たところで、竹中にカギを返す方法はもう一度顔を合わせることだけだ。
ロッカーや郵便受けに入れてしまっても良いが、人の貴重品を勝手にそんなところに入れるのは問題だし。
うんそうだ。
だからこれは断じて違う。
全くもって下心とかはない。
そう言い聞かせながら、後ろめたい気持ちを払拭するためにひたすらタネをこね続けた。
正直、俺の料理のレベルはそんなに高いわけじゃない。
朝から深夜まで仕事をして、家では眠るだけの日々。
休日あまりにも外に出たくないときに、家にあるもので軽く作るくらいだ。
出来ることと言ったら、めんつゆで味つけしたスパゲッティくらいだろうか。
そんな俺が作った見栄えの悪いハンバーグを、竹中は心底美味しそうに食べている。
いや、本当は美味しくないのかもしれない。
気を遣っているだけなのかもしれない。
タネはべちゃべちゃで、焼き過ぎて焦げている。
正直、出来合いを買って食卓に並べた方が良かったんじゃないか――。
そんな不安に気づいたのか、竹中はにっこりと微笑んでみせる。
「人のご飯食べられるの、すごく嬉しい。ほら、自分の料理って飽きちゃうから……」
「竹中、料理するのかよ」
俺は驚きを隠せなかった。
「ああ、えっと……」
竹中は苦笑する。
「あの、ごめん……。下手くそとかそう言う意味じゃなくて」
ここまで言って、全然自分が弁明出来ていないことに気づいた。
「うーん。私、料理苦手なの」
「本当ごめん……」
「良いの、気にしないで。事実だから」
竹中は首を横に振る。
「料理教室も通おうと思ってたんだけどね。仕事が忙しかったりで……。頑張って作っても褒めてもらえないし、全然成長しないしで最近は全然作ってないの」
「そうだったのか」
だから、冷蔵庫があんなに殺風景だったのぁ。
「うんそう。だから嬉しいの。ありがとう」
竹中の大人っぽい笑顔に一瞬見惚れていた俺は、次の言葉に反応するのが数秒遅れた。
「羽柴君が良いならさ。私と一緒に住まない? ここで」
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