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第1章

食事

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 竹中には世話になったが、これ以上彼女の家にいるのも忍びない。

 
 とりあえずあの全焼したアパートに戻って荷物を引き取るか、一向にかかってこない大家や警察に電話をするか。


 正直生きる希望も何もかもないが、せっかく竹中に助けてもらったし。

 とりあえず、何かしなきゃいけないなあ――なんて思ったが。


 クソ不味い。

 マジで不味い。


 竹中の作った朝ごはんが。


 冷えた米はまだ良い。

 ゴミ箱にサトウのごはんのパッケージがあったから、多分それだ。


 だが、せっかく用意してくれたのだろう、目玉焼きは真っ黒こげだった。

 ウィンナーは全く火が通っていない。

 キャベツの千切りは、もはや千切りではなく十切り。


 明らかに料理に慣れていないことがわかる。


 俺は申し訳なく思いつつも、冷蔵庫の中身を確認した。


 ……ない。

 何もない。


 料理をしようと買ったは良いものの、全く使った形跡のない味噌などの調味料。

 賞味期限の切れそうな卵に、いつのかわからないお菓子類。


 そして、1ダースは入って良そうなビールの数々。


 俺でさえ、もうちょっと中身入ってるぞ。

 まあ、全部焦げちまったけど。


 竹中は有名企業にお勤めのキャリアウーマンだ。

 かなり忙しいんだろうが、それにしてもない。


 まともな食事を普段から取っていないのだろう。


 俺はしばし悩んだ挙句、昨日交換した竹中のチャットに、

「食べ物は何が好き?」

 と、恐る恐る送った。


「何? 作ってくれるの? ハンバーグが食べたい!」

 という返事が来たのは、外では「昼休み」と呼ばれる時刻だった。


 
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