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第3章
困惑
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「……で」
ギルは心底面倒くさそうな顔をした。
「怒られたってわけ?」
「怒られたわけじゃないわよ」
私はムッとした。
「ただ、今は1人にしてくれって」
「それを怒ってるって言うんだろうが」
私の発言の何が嫌だったのだろうか。
ルドルフ殿下の顔は、苦痛で歪んでいた。
「……あなたは」
と、殿下。
「あなたは本当に、人じゃないんですね」
「ええ、そうよ」
と、私は言う。
「私は妖精族の末裔。あなた方人間とは違うわ」
「……人でないあなたに、人の心を問う気はありません。ただ」
殿下は目を伏せて言った。
「私があなたの考えを理解しがたいのと同様、あなたも私の考えを理解してくれない、ということだけはわかりました」
「え?」
「……すみません、少しの間1人にさせていただけませんか? 疲れているので」
と、自分の家から追い出されたのがつい先ほどのこと。
その話をしたとき、ギルには、
「人でなし」
と、罵られてしまった。
「当たり前のことを言わないで。どう考えても人じゃないわよ、私は」
「そういう意味じゃない。ルドルフの気持ちを全く考えてないってことだ」
「どういうこと?」
ギルはため息をついた。
「人間と魔族は何もかも違う。お前がそういう考えに立っているのは理解出来るが、人間にとってお前の考えは薄情でしかない。ルドルフの人を救いたいという気持ちを考えず、お前は自分の意見を述べてあいつを傷つけたんだ」
「気を遣えと?」
「端的に言えば、そういうことだ」
なんというか、その。
「人間って、変わってるのね」
なすべきこと、運命が決まっているのにも関わらず。
自分の力では何も出来ないというのに。
それに抗おうと、死地へ向かう気でいる。
「あの子と言い、あの子の父親と言い。平気で自分の首を自分で締めようとするなんて……。全くもって、論理的でないわ。理解不能よ」
「それが人間ってもんだ」
ギルは遠い目をした。
「俺たちとは違う生き物なんだよ」
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「怒られたわけじゃないわよ」
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「それを怒ってるって言うんだろうが」
私の発言の何が嫌だったのだろうか。
ルドルフ殿下の顔は、苦痛で歪んでいた。
「……あなたは」
と、殿下。
「あなたは本当に、人じゃないんですね」
「ええ、そうよ」
と、私は言う。
「私は妖精族の末裔。あなた方人間とは違うわ」
「……人でないあなたに、人の心を問う気はありません。ただ」
殿下は目を伏せて言った。
「私があなたの考えを理解しがたいのと同様、あなたも私の考えを理解してくれない、ということだけはわかりました」
「え?」
「……すみません、少しの間1人にさせていただけませんか? 疲れているので」
と、自分の家から追い出されたのがつい先ほどのこと。
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「人でなし」
と、罵られてしまった。
「当たり前のことを言わないで。どう考えても人じゃないわよ、私は」
「そういう意味じゃない。ルドルフの気持ちを全く考えてないってことだ」
「どういうこと?」
ギルはため息をついた。
「人間と魔族は何もかも違う。お前がそういう考えに立っているのは理解出来るが、人間にとってお前の考えは薄情でしかない。ルドルフの人を救いたいという気持ちを考えず、お前は自分の意見を述べてあいつを傷つけたんだ」
「気を遣えと?」
「端的に言えば、そういうことだ」
なんというか、その。
「人間って、変わってるのね」
なすべきこと、運命が決まっているのにも関わらず。
自分の力では何も出来ないというのに。
それに抗おうと、死地へ向かう気でいる。
「あの子と言い、あの子の父親と言い。平気で自分の首を自分で締めようとするなんて……。全くもって、論理的でないわ。理解不能よ」
「それが人間ってもんだ」
ギルは遠い目をした。
「俺たちとは違う生き物なんだよ」
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