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第2章

聖女 ~国王視点~

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 あの女のせいで、散々な目にあった。


 わしは、王座の間で地団駄を踏む。

 あの女が空けた穴のせいで、ミシミシと床が音を立てた。

 穴の端から、ボロボロと大理石の床が崩れていく。


「へ、陛下!」


 兵士がわしを止めに来た。

「辞めてください! 城が崩れます」

「うるさい! わしに命令する気か!? お前らクビにするぞ!」

「……っ」


 顔を青ざめた兵士は黙り込んだ。


 誰も、何も言わない。

 呆然として、穴の開いた天井を見つめている。


 その何もしない連中を見て、わしはまた苛立ちを募らせていった。




「出張聖女」というサービスを聞いたとき、わしは、

「これは良い」

 と思った。


 正直言って、このギーリウス王国はまだ経済的にも政治的にも安定していない国だ。


 「聖女」と呼ばれるような人間を呼べば、魔法で王国の問題を解決してもらえる。


 しかも、相手は若い女だ。

 そろそろ王妃に飽きてきたころだったから、もし顔が良ければ、聖女を新たな妾にすれば良いんじゃないかとも思った。


 わしは国王だ。

 国王の妾になることなど、女にとってはこれ以上の喜びなど存在しないだろう。


 隣国にこの話を持ち出されたわしは、早速出張聖女を呼ぶことにした。


 ――が。
 
 それは、わしの期待外れの女がいた。


 顔は良いが、女としてはどうかと思うような人間だった。

 せっかくわしが誘ってやったのに、ゴミを見るような目つきで、

「いや、無理ですが」

 と言い出す。


 腹が立ったので、深夜兵士たちを使って無理やり夜伽をさせようとしたが、あの女は魔法を使って兵士たちをボコボコにしやがった。


 しかも、給料制であったことも痛手だった。

 出張聖女に支払わなければならない金銭が大きい。

 財政を圧迫するのだ。


 わしは宝石やなんやらを集めるのが趣味だから、それを購入するための資金を残しておかなければいけなかった。

 だが、聖女を雇ったことでそれが出来なくなった。


 わしは不満だった。


 どうにかして、出張聖女に対する費用を削減しなければならない。


 そんなことを考えていたある日、大臣から良い案を提示される。

「こういうのはどうでしょうか――出張聖女には契約が終了したときに一括で払うと言えばよろしいのです。その間に本物の聖女を探しておいて、見つかったら理由をつけてクビになさるのはいかがですか? 粗を探して、それが原因で我がギーリウス王国に多大な悪影響が出た、と言えばこちらから給料を払う必要がなくなります」


 大臣の案を、わしは採用した。

 こうして、金食い虫な出張聖女をこき使いつつ、わしの言うことだけを聞いてくれる可愛いい本物の聖女探しをスタートさせたのだ。


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