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期待
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「お腹すいてきたな。ご飯食べに行こうか」
田丸に促されて歩き出した。
また、一緒にご飯を食べれることが嬉しい。
もっと一緒にいたいなと思ってしまう。
それからは、ずっと田丸のペースだった。
ランチにパスタを食べて、午後からは買い物をした。
お揃いのマグカップを買ったり、洋服を買ってもらったり。まるで恋人みたいに過ごした。
夜は飲み会があるらしくて、それに参加するために居酒屋へ行った。
そこでは、田丸の同期の人がたくさんいた。
その中には婚約者もいるようで、みんなに紹介してくれた。
婚約者の人はすごく綺麗な人だった。
写真で見るよりずっときれい。
会社の上司の娘だった。下請けの会社の経理をしているそうだ。
田丸は仕事ができるから、上司のお気に入りだったに違いない。
今度の出張を依頼してきた上司の娘さん。
2人の邪魔をしてはいけないと思って、あまり話さないようにしていた。
でも、田丸の方から声をかけてくれた。
「大丈夫?あんまり飲んでいないけど」
「うーん。ちょっと酔っちゃったかも……」
「じゃあ、今日はもう帰ろっか」「うん。ありがとう」
心配してくれる田丸の優しさに甘えてばかりだと思った。
駅まで送ってくれた。
「気をつけて帰ってね」
「はい」
「じゃあ、先に…」
「…………」
「どうかした?」
「田丸も一緒に帰る?」
「えっ?」
「今日、1人になりたくなくて……」
「そ、それはどういう意味?」
「そのままの意味です」
「……わかった。じゃあ、そうしよう」
田丸と2人で電車に乗った。
「何かあったのか?」
田丸が聞いてきた。
でも、本当のことは言えなかった。
「何でもありません。ただ、寂しくて」
嘘をついた。
きっと、バレているだろうけど。それでもいい。
田丸と一緒にいられるなら。
田丸は居酒屋に電話をしてから、僕と帰ってくれた。
僕は、田丸の婚約者に嫉妬している。
こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
これ以上迷惑をかけたくなかった。
でも、このまま別れるのが辛くて泣きそうになった。
「田丸、僕は酔っているみたい」
「オレも」
優しく微笑んでくれた。
田丸の顔が、僕の顔に近づいてきた。このままキスされると思うほど。でも違った。
田丸は、僕の耳元で囁いた。
「明日も早いからねよう」
一瞬、何かわからなかった。
田丸の吐息がかかるくらい近かっただけ。
期待していたから、がっかりした。
田丸が僕のことを好きと言うわけがない。そんなことはわかっていたはずなのに。
期待した自分が恥ずかしくなった。
そして、僕たちの降りる駅が近付いてきてしまった。
「田丸、ここだね」
「そう……?」
「うん。今日はありがとね」
「こちらこそ、楽しかったよ。また、誘ってもいい?」
「もちろん!」
一緒の会社の寮に帰ると、部屋に戻った。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
田丸と別れたあと、僕は部屋で泣いてしまった。
涙が止まらなかった。
翌朝、目が覚めた時は頭が痛かった。
田丸に促されて歩き出した。
また、一緒にご飯を食べれることが嬉しい。
もっと一緒にいたいなと思ってしまう。
それからは、ずっと田丸のペースだった。
ランチにパスタを食べて、午後からは買い物をした。
お揃いのマグカップを買ったり、洋服を買ってもらったり。まるで恋人みたいに過ごした。
夜は飲み会があるらしくて、それに参加するために居酒屋へ行った。
そこでは、田丸の同期の人がたくさんいた。
その中には婚約者もいるようで、みんなに紹介してくれた。
婚約者の人はすごく綺麗な人だった。
写真で見るよりずっときれい。
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田丸は仕事ができるから、上司のお気に入りだったに違いない。
今度の出張を依頼してきた上司の娘さん。
2人の邪魔をしてはいけないと思って、あまり話さないようにしていた。
でも、田丸の方から声をかけてくれた。
「大丈夫?あんまり飲んでいないけど」
「うーん。ちょっと酔っちゃったかも……」
「じゃあ、今日はもう帰ろっか」「うん。ありがとう」
心配してくれる田丸の優しさに甘えてばかりだと思った。
駅まで送ってくれた。
「気をつけて帰ってね」
「はい」
「じゃあ、先に…」
「…………」
「どうかした?」
「田丸も一緒に帰る?」
「えっ?」
「今日、1人になりたくなくて……」
「そ、それはどういう意味?」
「そのままの意味です」
「……わかった。じゃあ、そうしよう」
田丸と2人で電車に乗った。
「何かあったのか?」
田丸が聞いてきた。
でも、本当のことは言えなかった。
「何でもありません。ただ、寂しくて」
嘘をついた。
きっと、バレているだろうけど。それでもいい。
田丸と一緒にいられるなら。
田丸は居酒屋に電話をしてから、僕と帰ってくれた。
僕は、田丸の婚約者に嫉妬している。
こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
これ以上迷惑をかけたくなかった。
でも、このまま別れるのが辛くて泣きそうになった。
「田丸、僕は酔っているみたい」
「オレも」
優しく微笑んでくれた。
田丸の顔が、僕の顔に近づいてきた。このままキスされると思うほど。でも違った。
田丸は、僕の耳元で囁いた。
「明日も早いからねよう」
一瞬、何かわからなかった。
田丸の吐息がかかるくらい近かっただけ。
期待していたから、がっかりした。
田丸が僕のことを好きと言うわけがない。そんなことはわかっていたはずなのに。
期待した自分が恥ずかしくなった。
そして、僕たちの降りる駅が近付いてきてしまった。
「田丸、ここだね」
「そう……?」
「うん。今日はありがとね」
「こちらこそ、楽しかったよ。また、誘ってもいい?」
「もちろん!」
一緒の会社の寮に帰ると、部屋に戻った。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
田丸と別れたあと、僕は部屋で泣いてしまった。
涙が止まらなかった。
翌朝、目が覚めた時は頭が痛かった。
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