4 / 5
第一章 復讐の下準備の下準備
第三話 高慢に溺れる脇役
しおりを挟む
「おい、コイツの服を売ってくれ。」
「かしこまりました。ではこれでいかがでしょうか?」
出されたのはこの少年にぴったりのサイズの白い麻の長袖の服、革のジャケット、焦げ茶の6分丈のズボン。
その商品を出す早さに思わず口が開いた。
「どうやって一瞬で服を用意したんだ?」
「お客様の要望を先に予測するのは商人の極みですから。」
「煮ても焼いても食えそうにないジジイだな。」
この少年は犬の獣人。耳や尻尾、髪の色は汚れすぎて分からん。ドブの底の泥みたいな色になってしまっている。
とりあえず風呂にでも入れてもう少しましな見た目にしてもらおうかな。
「ほら代金。ここに風呂はあるか?」
「一応ございますが。」
「こいつを入れて洗ってくれ。髪の色も分からん。」
「承知しました。上がった時に服も着させておきましょう。」
先に金を払って奴隷をつれてってもらう。
暇つぶし感覚で商品を見ていると奴隷が帰ってきた。
帰ってきた奴隷は、濃い茶色い色をした髪と毛並みだった。髪はショートヘアで耳や尻尾の毛は比較的短め、か?
面白い道具とかはなかったな。なんか意外、って言うか、俺が覚えてるのはあと一年後くらいの商品だった。
「終わりました。これでしばらくは顔を出さないおつもりで?」
「ああ。色々としないといけないことが多いんだ。お前も殺そうかとも考えたが、よく考えてみればお前は利益を追いかけてるだけだったしな。」
こいつは確か後々王族に取り入って俺の邪魔をしてきたんだよな。俺の恨みを買わず、かつ金が良く入るような絶妙な嫌がらせ。
「ほっほっほ。それは良かった。では、またのご来店をお待ちしております。」
「じゃあな。」
奴隷を連れて店を出ると、チラチラ視線は感じるが誰も寄ってこない。本当にありがたい。
うーん。会話がない。暇だ。
「喋れるか?」
「・・・・・・うん。」
「ステータスを見せてみろ。」
「・・・・・・ステータスオープン。」
名前 無し 空腹 疲労 奴隷
年齢 16
種族 犬魔獣人『異常種』 女
職業 獣魔剣士 LV1
レベル 1
レベルp 0p
スキルp 0p
振り分けp 0p
HP 98/67
MP 126/2
STR 74
DEX 68
VIT 53
AGI 88
INT 69
MND 62
LUK 11
CRI 45
ネイチャースキル
『成長異常LV-1-』『獣化LV-1-』『魔獣化LV-1-』『魔剣化LV-1-』
『復讐者の奴隷LV--』
ユニークスキル
『魔獣人化LV-1-』
カーススキル
『三首暴食LV-1-』
マジックスキル
『強化魔法LV-1-』
ノーマルスキル
『剣術LV-1-』『武舞LV-1-』『加速LV-1-』
・・・・・・女?16歳?名無し?三首暴食?異常種?レベル1? はっきり言って超雑魚。俺が軽く叩くだけでミンチになりそうで怖い。
うーん。成長異常、ね。だから外見が小6程度なのか。納得。
いや成長異常って言うネイチャースキルがあるから納得はするけど、なんでだ?・・・・・・まあ、言いか。
とりあえずなんか食わせてやらないとなあ。まあなんかの果物でいいか。
「おっちゃん。キリコの実を8つとナルの実を2つくれ。これ代金。」
「ほいっ。お? どこから引っ張って来たんだ?その坊主は。あんちゃん意外に金持ちだったんだなあ。ガハハハ!」
おっちゃんはこの奴隷をやはり男の子だと思ったようだ。
ルナの実は果肉まで紙みたいに真っ白な色をした、顔くらいの大きさで、梨みたいな食感とキウイのような味のする実だ。
豪快に笑う行商人のおっちゃんに別れを告げて離れる。
・・・・・・あのおっちゃんは、最後まで俺に手を出さなかったんだよな。むしろわざと裏切った奴らの足を引っ張ってたくらいだし。あっち側にいたことは気に食わないが。感謝はしてるんだよなあ。
しばらく黙りこくって会話が無いまま道を進んで行き、宿屋が見え、着いた。
「2つ日間、ベッドは二つでお願いします。」
「はい。では、112号室へ案内いたします。」
この宿屋はけっこう広い。快適だし対応はいいし、ただまあ、主人がクソすぎることを除けばなんだがな。
「ありがとう。」
「では、ごゆっくりお休みください。」
案内役をしてくれた受付が帰っていった。
「さてと、じゃあ早速一つ質問するぞ。」
「っ。・・・・・・。」
ピクン、と反応した。少し動揺しているようだった。
少年・・・じゃなかった。少女か。少女に聞きたいことがいくつかある。というより、買った理由だし、どう答えようとこいつの悪いようにはするつもりはない。
同じような奴だからだ。同属や同類ではない。仲間や味方になることもない。
ただ、同じ道を歩み、手を汚してでも、人の道を外れようとも、復習をするかどうか。それを問う。
の前に。
「腹減ってるんだったら素直に言え。さっきからお前の腹の虫がしょぼくれた音を出してうるさい。」
「ぐふぉっ。こほっ、こほっ。ケホ・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・いいのか?」
あれま喋り方が男の子じゃないですか。
俺はこいつを奴隷として扱うつもりはほとんどないんだから、当然だ。名前が無かろうが外見が幼かろうが対等に扱うつもりだ。
「当たり前だ。なんだ?無理やり重労働でもさせられて使い潰されるとでも思ったか?」
コクコクコクコクコク
無言で何度も頷かないで欲しかった。否定して欲しかった。俺ってそんなに酷いふうに見えるのか?
「はあ。とりあえず。ほれ、さっさと食え。話はそれから。」
コクン
シャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャク
5つほど投げ渡したキリコの実を小さな口で必死にほおばって食べる姿は、リスみたいな小動物に見えて可愛らしかった。
「ぷふぁ~。うまかった~。・・・あっ。」
「別に敬語とかいらん。普通に話せ。」
「う、はい。」
うーん。こいつ、体に心が引っ張られて年相応の性格になってないぞ?外見と性格は合ってるんだけど、実年齢とは全く合ってないんだよなあ。
「唐突に聞くが、お前は誰が憎い?殺したい?復讐したい?」
「っ。・・・・・・。・・・・・・・・・・・・ぶ。」
少しだけ耳に届いた呟くような声に、思わず笑みがこぼれた。
「・・・俺を裏切った全部。俺を騙した全部。俺を壊した全部。俺から奪った全部。全部、全部全部全部全部全部。全部が憎い、殺したい。生きたまま皮を剥いで血の池に突き落として地獄のような悪夢のような現実の中で苦痛の中で殺したい。」
静かで、暗い、沈みこみそうなほどに深く低い声が聞こえた。
「俺も殺したい奴がいる。そいつらは俺から何もかも奪った。騙した。壊した。潰れて砕けて溶けて燃えてどろどろした冷たい熱の固まりになった何かが、俺を突き動かす。蟲を喰わせ、裏切らせ、騙しあいををさせて、身も心も魂もすべてを縛り、奪い、壊し、潰してやりたい。ゴミみたいなこの世界の現実の中で死ねない苦痛を味あわせてやりたいんだ。」
ああ。同じだ。どこまでも同じでどこまでも違う、こいつの中の静かに燃え上がる炎。一度出てきたその炎は止まることを知らない。戸惑いを知らない。
「俺は復讐したい奴がいる。お前にも復讐したい奴いる。どうせなら一緒に手を汚して壊してみよう。汚してみよう。潰してやろう。過去も今も未来も夢も現実も全て粉々にした上で殺してやろう。俺はお前にそれをしてやれる。だから、お前の答えを聞かせろ。お前は俺と・・・・・・・・・・・・・―――」
「―――復讐をしてみるか?」
その答えは顔を見るだけで分かった。そいつは、俺と同じ顔で笑っていたから。
「もちろん。同じような闇を持ってるんだったら、、いい復讐が出来そうだし。よろしくお願いします。えと、ご主人様?」
「ああ。よろしく。」
そう言って、復習する方法について語り合い花を咲かせて、夜は更け、次の日へと変わっていった。
*****
「ふぁ~あ。おーよく寝た。ん。ん? んん?? んんん~~???」
すがすがしい朝。早くやりたい拷問が多すぎて、逆に頭がすっきりしている。そんな素晴らしい朝。
素晴らしい朝。のはずなのに。
布団を丸めた巨大なボールが、俺の上に乗っかっていた。
ゴソゴソ ゴソゴソ
「ふぁあ。おはようございます。ごしゅじんさま。」
「お、おう。おはよ、う?」
どういうことなんだ?
布団の塊の中から少女(名無し)が這い出てきた。芋虫のようにもぞもぞと布団を掻き分け顔だけ出して、眠たげな目をしたかわいらしい少女の顔。
この世界に来たばかりの頃なら眼福なんだけどなー。昨日あれだけ狂った笑い声を上げて復讐について語り合ったからかな、なんとも思わなくなってしまった。
って、そんなことはどうでもいい。今聞きたいのは何で布団の塊の中にいることだ。
「何で布団の塊の中に?」
「えーと。寝るときや体を休める時に体が冷えすぎるとHPが徐々に削られて、何度かしそれで死に掛けまた。」
・・・・・・『成長異常』のせいか?わからないことが多すぎる。そして寝起きのせいか括舌が悪い。
まあいいか。
「とりあえず起きろ。まずはお前の武器を買ってレベリングだ。最初の復讐は俺が貰っていいか?」
「はい。んん~、ふぅ。後々でも復讐が出来たらいいよ。その相手が弱いままじゃ倒せないの?」
「ああ。お前にもかなり協力してもらう。そいつはお前みたいな一見弱そうな奴を嫌っているし、その上その弱そうなやつに負けるなんてことになったら、そいつにとってはもう終わりだろうな。」
「あくまでそいつにとっては、終わりでしょ。まあ、終わることなんてもうないけど。」
その通り。終わらせる気なんて毛頭ない。終わらせるときが来るとすれば、それは全ての復讐が終わり、残りの時間をもてあました時だろう。
「ああ、そうそう。昨日のお前が言っていた例のアイデア、最高だな。使わせてもらうよ。その為には俺もがんばらないとなあ。」
「うん。俺そんなことされたら心が折れちゃう自信があるよ。」
「そんな自信はいらねえけどな。」
まあ、うん。俺は別に生きてても死んでても今は復讐をできればそれで良いや。
復讐は結局のところは自己満足であって、誰かのためではない。俺達の復讐において契約や縛る物は何もない。単なる口約束だ。
ただ、決して破ることが出来ない口約束。
ただ、破れば対価を払うだけ程度の約束。
ただ、自分が持つ全てというだけの対価。
ただ、最後に残った復讐心さえ奪うだけ。
ただ、奪われたが最後、本当の意味で全てを失うだけ。
俺達は、そういう道を選んだだけで。違う道は全部無視してまっすぐにこの道を進んで行くだけで。裏切るという行為は、俺達を壊した奴等と同じ所へといくから、全てを消されようともしないだけで。
だから、この道を選んだときから後戻りなんて出来ない。こうやって感傷に浸り、高慢に溺れ、復讐に酔って。
脇役の俺達の復讐はまだ始まってもいない。これから始まる復讐に、俺達の全てが震えるようで。それがまるで、身を打つ快楽のようで。
『闇紫高慢を獲得しました。』
「かしこまりました。ではこれでいかがでしょうか?」
出されたのはこの少年にぴったりのサイズの白い麻の長袖の服、革のジャケット、焦げ茶の6分丈のズボン。
その商品を出す早さに思わず口が開いた。
「どうやって一瞬で服を用意したんだ?」
「お客様の要望を先に予測するのは商人の極みですから。」
「煮ても焼いても食えそうにないジジイだな。」
この少年は犬の獣人。耳や尻尾、髪の色は汚れすぎて分からん。ドブの底の泥みたいな色になってしまっている。
とりあえず風呂にでも入れてもう少しましな見た目にしてもらおうかな。
「ほら代金。ここに風呂はあるか?」
「一応ございますが。」
「こいつを入れて洗ってくれ。髪の色も分からん。」
「承知しました。上がった時に服も着させておきましょう。」
先に金を払って奴隷をつれてってもらう。
暇つぶし感覚で商品を見ていると奴隷が帰ってきた。
帰ってきた奴隷は、濃い茶色い色をした髪と毛並みだった。髪はショートヘアで耳や尻尾の毛は比較的短め、か?
面白い道具とかはなかったな。なんか意外、って言うか、俺が覚えてるのはあと一年後くらいの商品だった。
「終わりました。これでしばらくは顔を出さないおつもりで?」
「ああ。色々としないといけないことが多いんだ。お前も殺そうかとも考えたが、よく考えてみればお前は利益を追いかけてるだけだったしな。」
こいつは確か後々王族に取り入って俺の邪魔をしてきたんだよな。俺の恨みを買わず、かつ金が良く入るような絶妙な嫌がらせ。
「ほっほっほ。それは良かった。では、またのご来店をお待ちしております。」
「じゃあな。」
奴隷を連れて店を出ると、チラチラ視線は感じるが誰も寄ってこない。本当にありがたい。
うーん。会話がない。暇だ。
「喋れるか?」
「・・・・・・うん。」
「ステータスを見せてみろ。」
「・・・・・・ステータスオープン。」
名前 無し 空腹 疲労 奴隷
年齢 16
種族 犬魔獣人『異常種』 女
職業 獣魔剣士 LV1
レベル 1
レベルp 0p
スキルp 0p
振り分けp 0p
HP 98/67
MP 126/2
STR 74
DEX 68
VIT 53
AGI 88
INT 69
MND 62
LUK 11
CRI 45
ネイチャースキル
『成長異常LV-1-』『獣化LV-1-』『魔獣化LV-1-』『魔剣化LV-1-』
『復讐者の奴隷LV--』
ユニークスキル
『魔獣人化LV-1-』
カーススキル
『三首暴食LV-1-』
マジックスキル
『強化魔法LV-1-』
ノーマルスキル
『剣術LV-1-』『武舞LV-1-』『加速LV-1-』
・・・・・・女?16歳?名無し?三首暴食?異常種?レベル1? はっきり言って超雑魚。俺が軽く叩くだけでミンチになりそうで怖い。
うーん。成長異常、ね。だから外見が小6程度なのか。納得。
いや成長異常って言うネイチャースキルがあるから納得はするけど、なんでだ?・・・・・・まあ、言いか。
とりあえずなんか食わせてやらないとなあ。まあなんかの果物でいいか。
「おっちゃん。キリコの実を8つとナルの実を2つくれ。これ代金。」
「ほいっ。お? どこから引っ張って来たんだ?その坊主は。あんちゃん意外に金持ちだったんだなあ。ガハハハ!」
おっちゃんはこの奴隷をやはり男の子だと思ったようだ。
ルナの実は果肉まで紙みたいに真っ白な色をした、顔くらいの大きさで、梨みたいな食感とキウイのような味のする実だ。
豪快に笑う行商人のおっちゃんに別れを告げて離れる。
・・・・・・あのおっちゃんは、最後まで俺に手を出さなかったんだよな。むしろわざと裏切った奴らの足を引っ張ってたくらいだし。あっち側にいたことは気に食わないが。感謝はしてるんだよなあ。
しばらく黙りこくって会話が無いまま道を進んで行き、宿屋が見え、着いた。
「2つ日間、ベッドは二つでお願いします。」
「はい。では、112号室へ案内いたします。」
この宿屋はけっこう広い。快適だし対応はいいし、ただまあ、主人がクソすぎることを除けばなんだがな。
「ありがとう。」
「では、ごゆっくりお休みください。」
案内役をしてくれた受付が帰っていった。
「さてと、じゃあ早速一つ質問するぞ。」
「っ。・・・・・・。」
ピクン、と反応した。少し動揺しているようだった。
少年・・・じゃなかった。少女か。少女に聞きたいことがいくつかある。というより、買った理由だし、どう答えようとこいつの悪いようにはするつもりはない。
同じような奴だからだ。同属や同類ではない。仲間や味方になることもない。
ただ、同じ道を歩み、手を汚してでも、人の道を外れようとも、復習をするかどうか。それを問う。
の前に。
「腹減ってるんだったら素直に言え。さっきからお前の腹の虫がしょぼくれた音を出してうるさい。」
「ぐふぉっ。こほっ、こほっ。ケホ・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・いいのか?」
あれま喋り方が男の子じゃないですか。
俺はこいつを奴隷として扱うつもりはほとんどないんだから、当然だ。名前が無かろうが外見が幼かろうが対等に扱うつもりだ。
「当たり前だ。なんだ?無理やり重労働でもさせられて使い潰されるとでも思ったか?」
コクコクコクコクコク
無言で何度も頷かないで欲しかった。否定して欲しかった。俺ってそんなに酷いふうに見えるのか?
「はあ。とりあえず。ほれ、さっさと食え。話はそれから。」
コクン
シャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャク
5つほど投げ渡したキリコの実を小さな口で必死にほおばって食べる姿は、リスみたいな小動物に見えて可愛らしかった。
「ぷふぁ~。うまかった~。・・・あっ。」
「別に敬語とかいらん。普通に話せ。」
「う、はい。」
うーん。こいつ、体に心が引っ張られて年相応の性格になってないぞ?外見と性格は合ってるんだけど、実年齢とは全く合ってないんだよなあ。
「唐突に聞くが、お前は誰が憎い?殺したい?復讐したい?」
「っ。・・・・・・。・・・・・・・・・・・・ぶ。」
少しだけ耳に届いた呟くような声に、思わず笑みがこぼれた。
「・・・俺を裏切った全部。俺を騙した全部。俺を壊した全部。俺から奪った全部。全部、全部全部全部全部全部。全部が憎い、殺したい。生きたまま皮を剥いで血の池に突き落として地獄のような悪夢のような現実の中で苦痛の中で殺したい。」
静かで、暗い、沈みこみそうなほどに深く低い声が聞こえた。
「俺も殺したい奴がいる。そいつらは俺から何もかも奪った。騙した。壊した。潰れて砕けて溶けて燃えてどろどろした冷たい熱の固まりになった何かが、俺を突き動かす。蟲を喰わせ、裏切らせ、騙しあいををさせて、身も心も魂もすべてを縛り、奪い、壊し、潰してやりたい。ゴミみたいなこの世界の現実の中で死ねない苦痛を味あわせてやりたいんだ。」
ああ。同じだ。どこまでも同じでどこまでも違う、こいつの中の静かに燃え上がる炎。一度出てきたその炎は止まることを知らない。戸惑いを知らない。
「俺は復讐したい奴がいる。お前にも復讐したい奴いる。どうせなら一緒に手を汚して壊してみよう。汚してみよう。潰してやろう。過去も今も未来も夢も現実も全て粉々にした上で殺してやろう。俺はお前にそれをしてやれる。だから、お前の答えを聞かせろ。お前は俺と・・・・・・・・・・・・・―――」
「―――復讐をしてみるか?」
その答えは顔を見るだけで分かった。そいつは、俺と同じ顔で笑っていたから。
「もちろん。同じような闇を持ってるんだったら、、いい復讐が出来そうだし。よろしくお願いします。えと、ご主人様?」
「ああ。よろしく。」
そう言って、復習する方法について語り合い花を咲かせて、夜は更け、次の日へと変わっていった。
*****
「ふぁ~あ。おーよく寝た。ん。ん? んん?? んんん~~???」
すがすがしい朝。早くやりたい拷問が多すぎて、逆に頭がすっきりしている。そんな素晴らしい朝。
素晴らしい朝。のはずなのに。
布団を丸めた巨大なボールが、俺の上に乗っかっていた。
ゴソゴソ ゴソゴソ
「ふぁあ。おはようございます。ごしゅじんさま。」
「お、おう。おはよ、う?」
どういうことなんだ?
布団の塊の中から少女(名無し)が這い出てきた。芋虫のようにもぞもぞと布団を掻き分け顔だけ出して、眠たげな目をしたかわいらしい少女の顔。
この世界に来たばかりの頃なら眼福なんだけどなー。昨日あれだけ狂った笑い声を上げて復讐について語り合ったからかな、なんとも思わなくなってしまった。
って、そんなことはどうでもいい。今聞きたいのは何で布団の塊の中にいることだ。
「何で布団の塊の中に?」
「えーと。寝るときや体を休める時に体が冷えすぎるとHPが徐々に削られて、何度かしそれで死に掛けまた。」
・・・・・・『成長異常』のせいか?わからないことが多すぎる。そして寝起きのせいか括舌が悪い。
まあいいか。
「とりあえず起きろ。まずはお前の武器を買ってレベリングだ。最初の復讐は俺が貰っていいか?」
「はい。んん~、ふぅ。後々でも復讐が出来たらいいよ。その相手が弱いままじゃ倒せないの?」
「ああ。お前にもかなり協力してもらう。そいつはお前みたいな一見弱そうな奴を嫌っているし、その上その弱そうなやつに負けるなんてことになったら、そいつにとってはもう終わりだろうな。」
「あくまでそいつにとっては、終わりでしょ。まあ、終わることなんてもうないけど。」
その通り。終わらせる気なんて毛頭ない。終わらせるときが来るとすれば、それは全ての復讐が終わり、残りの時間をもてあました時だろう。
「ああ、そうそう。昨日のお前が言っていた例のアイデア、最高だな。使わせてもらうよ。その為には俺もがんばらないとなあ。」
「うん。俺そんなことされたら心が折れちゃう自信があるよ。」
「そんな自信はいらねえけどな。」
まあ、うん。俺は別に生きてても死んでても今は復讐をできればそれで良いや。
復讐は結局のところは自己満足であって、誰かのためではない。俺達の復讐において契約や縛る物は何もない。単なる口約束だ。
ただ、決して破ることが出来ない口約束。
ただ、破れば対価を払うだけ程度の約束。
ただ、自分が持つ全てというだけの対価。
ただ、最後に残った復讐心さえ奪うだけ。
ただ、奪われたが最後、本当の意味で全てを失うだけ。
俺達は、そういう道を選んだだけで。違う道は全部無視してまっすぐにこの道を進んで行くだけで。裏切るという行為は、俺達を壊した奴等と同じ所へといくから、全てを消されようともしないだけで。
だから、この道を選んだときから後戻りなんて出来ない。こうやって感傷に浸り、高慢に溺れ、復讐に酔って。
脇役の俺達の復讐はまだ始まってもいない。これから始まる復讐に、俺達の全てが震えるようで。それがまるで、身を打つ快楽のようで。
『闇紫高慢を獲得しました。』
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…
雪見だいふく
ファンタジー
私は大学からの帰り道に突然意識を失ってしまったらしい。
目覚めると
「異世界に行って楽しんできて!」と言われ訳も分からないまま強制的に転生させられる。
ちょっと待って下さい。私重度の人見知りですよ?あだ名失神姫だったんですよ??そんな奴には無理です!!
しかし神様は人でなし…もう戻れないそうです…私これからどうなるんでしょう?
頑張って生きていこうと思ったのに…色んなことに巻き込まれるんですが…新手の呪いかなにかですか?
これは3歩進んで4歩下がりたい主人公が騒動に巻き込まれ、時には自ら首を突っ込んでいく3歩進んで2歩下がる物語。
♪♪
注意!最初は主人公に対して憤りを感じられるかもしれませんが、主人公がそうなってしまっている理由も、投稿で明らかになっていきますので、是非ご覧下さいませ。
♪♪
小説初投稿です。
この小説を見つけて下さり、本当にありがとうございます。
至らないところだらけですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
完結目指して頑張って参ります

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる