上 下
34 / 39
第二章 地帝国生活編

第三十三話 バトル②

しおりを挟む
 「それじゃあ、ぼちぼち力入れていくかな?」
 「なっ!」

 その一言は、最初から全力で勝負をしていた人間にとっては想定外以外の何物でもなかった。
 リーダーは、何の変哲もないただの蹴りで人一人を失神させたのに、まだまだ底の見えない男に恐怖を抱いた。

 同じように腰をすえても多分逃げるだろうから次はスピード重視だな。
 真正面にでると予想通りに逃げたが、その後ろに回り込み首筋に手刀を打ち込んだ。医療系や動物や人の体に興味を持っていたヒロキにとっては、頚動脈の場所などほとんど手に取るように分かっていた。
 簡単に気絶し、あとに残ったのはもう勝てないという絶望感が漂う空間だった。

 「こ、降参で、す・・・・・!」
 「そうか。すまない、危うくお前も気絶させるとこだった」

 降参を宣言した女は、リーダーについでの実力者らしい。

 『な、なんとぉ!副リーダーが降参を宣言!なんと、圧勝!無傷で、完・全・勝・利!!うぉおおおおおおお!掛け率60:1を、覆しましたあ!!』

 え?掛け率って何?ま、いいか。

 『ヒロキ選手、このまま次の試合へと進みますか!!』
 「じゃあ、そうします」
 『余裕!完全に余裕!汗一つかかないこの異常な人物に、次のチームは勝てるのか!?では、第二回戦!次の相手チームを紹介します!はるばる異世界からきてくださった、今回の優勝候補の一組!37名の『真の勇者』です!キャ~~~~~!!!』

 ・・・・・・は?確か俺がいたクラスは38人だったな。俺から誰も死んでないとしたら37人か。うーん。ちょっとメンドクサイな。

 「ふーん。頭にくる顔をしているな『目無し』」
 「?どういうことですか?」

 知らなかったことのように疑問符を使う。てか、リーダーは大志かよ。ないわー。予想通りとかないわー。

 「ちっ。声までそっくりか。お前が、俺の進んでいる道をとことん邪魔をして先を進んでいくバカ野郎にそっくりなんだよ。だが、お前は(穢れた)獣人だ。あいつではないことは確かだ」
 「(・・・・・・穢れた獣人?)」

 うわー、腹たつなあコイツ!この場にも結構獣人は居るのに。俺にしか聞こえないような声でふざけたこと抜かしやがった。

 『掛け率が判明しました!80:1!?え!?うそ!?こんなに差があったの!?すごい!あ、では、第二回戦、スタートです!』

 「『天空大斬波』!!」

 透明な魔力の塊が、大志があの聖剣?を振るった時に飛んできた。

 「貧弱」

 腕ではじく。そのまま方向を変えて飛んでいくかと思ったが、その場で砕けて少しダメージを受けてしまった。
 て、いやいや。それは問題じゃない。問題はその魔力の塊がぶつかった時の衝撃で包帯が取れてしまったことだ。

 ここで包帯で目を隠していた理由を話そう。
 普通に目を晒していると、何も関係ない通行人の考えまで頭の中に入ってくるのだ。それだけならまだいいが、俺の脳みそのサイズは普通の人間と変わらない。
 つまり、膨大な情報量に頭が耐え切れないのだ。光速思考を使えばどうにかなると思ったが、更に頭に負担がかかり、しばらく自然回復するまで脳を休めなければいけない羽目になってしまったのだ。

 竜眼は魔力を違うエネルギーに変えて使うものだ。つまり、目へ通る魔力を変質させなければいい。のだが、この方法はリミットがある。15分が限界で、それを超えれば眼球にダメージが入る。 このダメージは簡単に言えば、常に目を指でつかれ続けるような感じだ。

 『おおーっとぉ!包帯で隠していた顔が、今、この場で晒されたぁ!!て、え!?イケメン!!』
 うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 ヤッチマッタ感半端ない。

 「お前、どういうことだ?」
 「あーやっちまった。最悪。よりにもよってお前らが相手のときとか。完全にばれた」
 「お前か!そうだったんなら、さっさと死ねぇ!!」

 よし、相手から来てくれた、ラッキー。単なる突進と突きの複合技みたいだな。
 なら、半回転、顎を膝でかちあげ、上に上がってきた顔を肘で叩き落す。まだ意識があるようなので、ミドルキックで吹き飛ばす。

 次に弓矢を持って後ろにいた女。クラスメイトだったらしいけど、眼がうつろになってる気がする。から、『浄化』を乗せた軽い突きで殴り飛ばす。
 やっぱ操られてるかもしれないと思うと助けたくなるじゃん?ね?

 で、次は――――――

 ―――――よし、終了!

 『な、なんとおおおおおお!!大番狂わせ!ななななんと、勇者のチームに、たった一人で勝ってしまったああああああ!!!』

 あーつかれた。予備の包帯、もってきといて正解だった。
 でも、つっかれたなあ。あいつら全員変なスキルで攻撃してきたり妨害して来るんだもん。それに、妨害とか攻撃を避けたら『避けるな!』とか言われるし。
 普通妨害とかされたら避けるよね。攻撃されたら避けるでしょ。

 『このまま第三回戦、ていうかあと6チームありますけど、このまま全部突破しますか!!?』
 「いえ、流石に疲れたので、休ませていただきます」
 『と、言うわけで!つぎは―――――』

 明日も続きかあ。今日でチームは半分以下になったから、俺を含めてあと4チームか。あと二回勝利すればいいな。がんばろう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

美少女だらけの姫騎士学園に、俺だけ男。~神騎士LV99から始める強くてニューゲーム~

マナシロカナタ✨ラノベ作家✨子犬を助けた
ファンタジー
異世界💞推し活💞ファンタジー、開幕! 人気ソーシャルゲーム『ゴッド・オブ・ブレイビア』。 古参プレイヤー・加賀谷裕太(かがや・ゆうた)は、学校の階段を踏み外したと思ったら、なぜか大浴場にドボンし、ゲームに出てくるツンデレ美少女アリエッタ(俺の推し)の胸を鷲掴みしていた。 ふにょんっ♪ 「ひあんっ!」 ふにょん♪ ふにょふにょん♪ 「あんっ、んっ、ひゃん! って、いつまで胸を揉んでるのよこの変態!」 「ご、ごめん!」 「このっ、男子禁制の大浴場に忍び込むだけでなく、この私のむ、む、胸を! 胸を揉むだなんて!」 「ちょっと待って、俺も何が何だか分からなくて――」 「問答無用! もはやその行い、許し難し! かくなる上は、あなたに決闘を申し込むわ!」 ビシィッ! どうやら俺はゲームの中に入り込んでしまったようで、ラッキースケベのせいでアリエッタと決闘することになってしまったのだが。 なんと俺は最高位職のLv99神騎士だったのだ! この世界で俺は最強だ。 現実世界には未練もないし、俺はこの世界で推しの子アリエッタにリアル推し活をする!

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界帰りの憑依能力者 〜眷属ガチャを添えて〜

Jaja
ファンタジー
 ある日、中学2年の頃。  いつの様に右眼疼かせ、左手には、マジックで魔法陣を書き、それを包帯でぐるぐる巻きに。  朝のルーティンを終わらせて、いつもの様に登校しようとしてた少年は突然光に包まれた。  ラノベ定番の異世界転移だ。  そこから女神に会い魔王から世界を救ってほしい云々言われ、勿論二つ返事で了承。  妄想の中でしか無かった魔法を使えると少年は大はしゃぎ。  少年好みの厨二病能力で、約30年近い時間をかけて魔王を討伐。  そこから、どうなるのかと女神からのアクションを待ったが、一向に何も起こることはなく。  少年から既に中年になっていた男は、流石に厨二病も鳴りをひそめ、何かあるまで隠居する事にした。  そこから、約300年。  男の「あれ? 俺の寿命ってどうなってんの?」という疑問に誰も答えてくれる訳もなく。  魔の森でほのぼのと暮らしていると、漸く女神から連絡があった。  「地球のお姉様にあなたを返してって言われまして」  斯くして、男は地球に帰還する事になる。  ※この作品はカクヨム様にも投稿しています。  

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

処理中です...