上 下
20 / 42

第017話、ムッキムキジム再び

しおりを挟む

今日は休日、何しようかなと散々悩んだが、筋トレ以外の趣味がない俺は結局ジムに来ていた、前にノミー課長やヨネーさんと一緒に来た『ムッキムキジム』だ。
※ 第012話、『初めての○○』を参照


「前回は三人で来たけど、今日は俺一人だ、一通り器具の使い方はノミー課長に教えてもらったし、何をしようかな」

俺は受付に向かった、受付の女性は俺を覚えててくれたようだ、一度しか来てないのに嬉しいな。

「こんにちは~ あ、前にノミー様と来られてた方ですね、今日はお一人ですか? 案内はどうされます?」

ノミー課長がインパクト濃いから、俺の事も覚えていたのかもしれない、前に一通り器具の使い方は教わったし、今日はのんびり筋トレしてみるかな。

「前に来た時にノミーさんに教わったので大丈夫です」

「わかりました、ではごゆっくりどうぞ~」

俺はそう言って一人で中に入っていく、中を見渡すと今日も女性が多いようだ、俺も筋肉をムキムキにしたらモテるのだろうか。

「ほんとにここは女性が多いよな、 "筋トレ女子" かっこいい」

その中でもひときわ目を惹く後ろ姿の女性を見つけた、引き締まったとてもかっこいい背筋をしている、ノミー課長が『良い背筋には鬼神が宿るよ』と言っていた事を思い出した。 黙々とトレーニングをこなす女性をジーッと眺めていると、女性が振り向いた、見覚えのある女性だ。

(凄いなあの人、重たい負荷を使って黙々とトレーニングしている)

「あ、サルナス君!」

女性が声をかけてきた、前の職場でお世話になったヨシムさんだ、あの頃からこんな筋肉あったかな? もしかしたら着やせをするタイプだったのかもしれない。
※ 第001話、『仕事やめようかな、、、』を参照


「ヨシムさん! お久しぶりです、こんなとこで会えるなんて」

「久しぶりだね、元気にしてた? プロテイン飲むか?」

相変わらず、爽やかなイケメンという感じだ、すすめてくるのは甘いお菓子からプロテインに変わっていた、俺の近況をなぜか知っている。

「そういや、サルナス君もあの魔法道具屋やめたんだって?」

「はい、なんか違う道を歩んでみようかなって思って」

「それで今は治癒院で働いてるんだろ?」

「えっ? なんで知ってるんですか?」

誰から聞いたのかな、共通の知り合いで治癒院のこと知ってるのはシラハくらいだけど、シラハは捕まっているし、俺は疑問の目をヨシムさんに向けた、ヨシムさんは俺の目線に気づいたようだ。

「うちの上司に聞いた、ナカムーさんってわかる?」

たしか、ノミー課長のライバルって名乗ってたムキムキの男性だ、ヨシムさんの上司だっはたのか、そういえば良い後輩が入った、と言ってたな。

「わかります、ムキムキの男性ですよね? ひげの濃い、眉毛の濃い」

「あ~、そうそう、特徴をよく覚えてるね」

だってキャラが濃かったもん、ノミー課長と同じくらい。

「うちの治癒院は親がやってるんだけど、私は治癒師として新人だからナカムーさんの下についてるの、ここはナカムーさんから連れてこられてね、『治癒師には筋肉も必要だ!!』って力説してた」

なるほど、それがヨシムさんの素晴らしい背筋のきっかけか、ナカムーさんスパルタっぽいもんな。

「はは、なるほど、言いそうですね」

実際、俺は魔物を相手にした時は筋肉のおかげでよく動けたし、たしかに必要だよな。
※ 第009話~第010話、参照


「ここには時々きてるんだけど、思ってたより女の人が多くて、安心したよ」

「そうらしいですね、俺もここに来るまではジムは男性が多いって思ってました」

ほんと驚いた、しかもきれいな女性が多い、素晴らしい。

「それで~、可愛い女の子が目当てで、サルナス君はきたのかな~?」

ヨシムさんはニヤニヤしている。

「ち、違いますよ、元々は家でもトレーニングしてたけど、更なる筋肉の必要性を感じてジムに来たんです!」

「そんなに慌てなくても~」

ヨシムさんはまだニヤニヤしている、こんなキャラだっけ? 前はあんまり人をいじるタイプではなかったけど。

「なんか、雰囲気かわりましたね? 前も明るかったですけど、更に明るくなったというか」

「うん、いま仕事が充実してるからね、こっちの方が合ってたみたい、ナカムーさんも濃いけど良い上司だよ」

ヨシムさんは目をキラキラしている、やはりナカムーさんは誰が見ても濃いのか。

「サルナス君も変わったよね? 少し明るくなったと思う、笑顔は相変わらずだけど(笑)」

「う"っ そればかりは難しくて、、、」

笑顔については、なんだろ? 呪いなのかな、いつからこんな笑顔になったのだろう、周りが天使の笑顔だから余計に目立つよな。

「でも、男で治癒師って、今まではいなかったんでしょ? どう? 実際に働いてみて」

「そうですね、治癒師についていろいろイメージは変わりましたね、笑顔が素敵で優しい、だけじゃなくて、強いとも感じています」

(これは言いにくいが怖い時もある、表向きは天使だが、実はドSの悪魔ではないかと疑っている、そのうちヨシムさんもそんな風に染まるのだろうか)

「そうだね、私も強さも必要だなって常々感じてるよ」

「あとは、、、男なので、ボッチになるかと思いましたが、意外とみんな構ってくれて、けっこう楽しいですよ」

「へぇ~、仲良くやってるんだね、よかった、お姉さんは安心した!」

ほんと、面倒見の良いお姉さんという感じだ、ヨシムさんと話していると、ふと視線を感じる。 周りの…女性からの視線のようだ、モテ期が俺にもきたのか? でもそれにしては邪な感じの… 黒い視線だ。

「ん?」

「どうした?」

「いや、なんか視線を感じるような……」

「あ~、ごめん、たぶんそれ私のせいかも…」

「なんでですか?」

ヨシムさんは申し訳なさそうな顔をしている、イケメンな女性の困り顔も良いね、原因はヨシムさんなのか? 何も思い付かないが、ここはとりあえず聞いてみよう。

「それが、ここに通いだしてから、いろんな女の子に声をかけられてね、最初は嬉しかったけど、中には目つきが、その、怪しいというか、怖いというか…… 私はそういう趣味はないので、トレーニングに集中したいって話して、それからは落ち着いたんだけど、男の子と話しているから気になるのかも」

「あ~…」

そう言われると、視線を向けている女性達は俺を睨んでいるようにも見える、なんか怖いっす、女性でもイケメンなら女性にモテるのだな、闇討ちとかやめてね、その時は全力で逃げます。

「モテまくりですね、羨ましい」

「ん~、できたら男の人にモテたいけど、あんまりそういう雰囲気にはならないのよね、お酒を飲みにいっても、最終的には肩を組んで笑いあって、歌ってるしね」

たしか、新人歓迎会でもそんな感じだったな、最初は俺も照れてたが、話しやすいし、気前いいし、兄貴って感じがしたもんな、このまま鍛えていけば更に "兄貴ー!" になるのではないだろうか。

「そういや、ヨシムさん、凄いトレーニングしてましたよね、あれってかなり重たいでしょ?」

「うん、普通はあの半分くらいかな、ナカムーさんがスパルタでね、鍛えてるうちにあの重さが当たり前になったよ」

少し興味はあるな、半分なら俺でもいけそうだし、俺はヨシムさんが使ってた器具をジーッと見つめる。

「俺もやってみようかな」

「する? 手伝うよ」

ヨシムさんは嬉しそうに手伝ってくれた、周囲の女性からの目線は更に怖くなった、怖いからその目はやめて、お願いします。


***

器具の名前は『ラットプルダウンマシン』
背筋を鍛えるのに最適なマシンだ。

使い方は
01-上から "⊥" の形をしたバーがぶら下がっている、その先には重りがついており、重さを調整できる。
02-マシンに座って、肩幅よりも広めに手を開き、両手でバーを持つ。
03-バーを上に持ち上げ、やや身体の前へ持ってくる。
04-ゆっくりとバーを下げる、胸に向かってバーを引きよせるために、ひじを閉じるように腕を動かす。
05-素早く元の姿勢へ戻す動作を繰り返す。


***

ヨシムさんは俺を器具に座らせて、説明を始める、だんだん声が大きくなり、テンションあけあげになってあるようだが、大丈夫かな、目が少し怖い。

「背中を鍛えることで姿勢もが良くなる! 肩や首のコリもとれる! そして脂肪も燃焼しやすくなり…… 痩せる!!」

ヨシムさんは熱く語った、そしてヨシムさんの合図に合わせて器具を動かす、とりあえず重量はヨシムさんの半分で、ヨシムさんの合図に合わせて上げ下げしてみるが、けっこう速い、キツイ。

「はい! 1・2、1・2、、、 はい! もっと速く! 遅いっ! はやーく!」

ヤバい、なんかヨシムさんの目がヤバい、すでにヨシムさんはドSの天使に汚染されているのでは、あんなに優しかったのに変わり果てて。

「あの、もう少しゆっくり……」

「口答えしない! 黙ってやる!」

「はい~~っ!!」


***


「はぁー、はぁー、ぜひー……」

「ごめんごめん、つい張り切っちゃった」

「……」

俺は返事ができない、無言で昇天している、頭から湯気も出てる、ヨシムさんの謝り顔もイケメンだ。

「ごめんって、ね!」

ヨシムさんは可愛い笑顔をしている、なんかとてもスッキリした笑顔だ、治癒師ってストレスたまるのかな。

「いいえ、良いトレーニングになりましたよ」

俺は何とか答えた、研修の時もそうだったけど、治癒師ってこんなん多いのか? やはりドSの天使なのでは? 汚染区域が広がるのを食い止めたいけど、もう遅いのかも。


「さて次は……」

「あっ、ヨシムさん、お腹すきません? 昼御飯どうですか?」

(今日はもういいっ! ドSの天使はもうお腹いっぱい)

俺は会話を変えて食事の話題を出した、甘いスウィーツなど、ヨシムさんなら好きそうだ。

「もうそんな時間? そうね、気になってる店があるんだけど一緒に行く?」

「はい、行きます」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...