【R18】眼鏡で筋肉なオジサマ所長がネクタイ解いて片手でボタンを外して見下ろしてくるんですが、過労で見た淫夢ってやつですよね?

一花カナウ

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誰を想像したんだ?

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「と、とにかく、ですね。私、大丈夫なのでっ! この玩具片付けて、着替えて布団に入って寝るので。私を想ってふけっていたことについては不問にしますし、口外しませんから、ね?」

 帰ってもらえないだろうか――そう願ったのだが、この山をこの時間に下るのはよろしくない。無傷でここに現れたディオニージオス所長ではあるが、登りよりも下りの方がこの山は危険なのだ。

「……本当に不問でいいのか?」
「別に、これ以上は触れません。そのほうがお互いのためでしょう?」

 思いが通じたとしても、近いうちに離れ離れになる。このまま答え合わせなんてしないで、なかったことにしたほうが互いにいいはずだ。

「お互いのため、か……」
「あの、着替えたいので、一度作業室から出ていただけませんか? こんな時間に外に出ろだなんて言いませんから。ね?」

 仕切り直しといきたいところである。性的に興奮状態である私が、いつまでこうしたやり取りができるか定かではない。着替えて、強制的にいつもの仕事の様子に近づけて冷静さを取り戻したいのだ。
 私が説得にかかれば、ディオニージオス所長は私に向き合った。

「一つ、聞いてもいいだろうか」
「一つだけですよ。私が返したら、作業室から一度出てください」

 譲歩して返せば、ディオニージオス所長は頷いて私を見下ろした。
 視線が交錯する。短い沈黙がとても長く感じられた。
 やがて所長のセクシーな口元が動いた。

「――ナディア君は自身を慰めるために誰を想像したんだ?」
「え?」

 それを答える義務はあるだろうか。当人を前に、それも私で自慰をしたと告白されたあとに正直に告げられようか。
 私がポカンとしていると、ディオニージオス所長は慌てて手を振った。

「あ、いや、すまない。恋人はいないらしいと、その、聞いていたから、だな。そういうことをするときは誰を思うのだろうかと……ああ、もういいんだ。僕は疲れが溜まっているんだな。急なことでいろいろと準備があったし」

 そう早口で告げると、私と約束したとおりに作業室を出てくれた。

 ――私の想い人が誰なのか気になるのか……。

 私を想いながら自慰をしたのは、きっと彼の周囲にいる女性が私だけだからだ。工房で仕事をする生活では女性に会うことも少ない。麓の町もそう大きなものではないから娯楽施設も乏しく、性欲の発散をどうにかしたくてもうまくいかないのだろう――だから、私を使った。

 ――襲ってしまうんじゃないかと不安に感じる程度には、成人女性として認識されたってことなのかな。

 君はまだ子どもだからと告白を断られたことを思い出す。あのときから成長したことは認めさせることができたのだと考えたら少し嬉しい。

「大人に……なれたのかな……」

 握ったままの玩具を棚に片付けて、自分の衣服を置いた場所に戻ろうとしたそのときだった。
 眩しい光と大きな音。地響きが起きる。
 たちまちに部屋の明かりが消えた。
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