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7:魔導師として宮廷入りしたので、あの日の話をしませんか?
運命を変えるためにできること 1
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「メルヒオールさまの中にリシャール殿下を失いたくない気持ちがあるのなら、あたしがどうしてあなたを求めるのかわかるでしょう?」
アルフォンシーヌは切々と訴えるが、メルヒオールの唇がわずかに動いただけで声はなかった。
「自分がいるからリシャール殿下が王になれないのだと考えているのであれば、それは間違いです。リシャール殿下はメルヒオールさまを必要としています。だから、あなたの目の前であたしを抱いたんじゃないですか。失わずに済むのであれば、傷ついても構わないと行動したんですよ」
こうなる前に、リシャール殿下ともきちんと話しておくべきだった。
こうなる前に、メルヒオールという人物としっかりと向き合うべきだった。
だけど、これは後悔じゃない。反省し、活かすための一歩にせねば。
「あたしだって同じです。傷ついたって構わない。あなたがそばにいてくれるなら、それでいい。生きて、結末をきちんと見届けけてください、メルヒオールさま」
「……アルフォンシーヌ」
見上げた頬に、メルヒオールの掌が触れる。温かくて、頼もしい大きな手。涙を拭われるとくすぐったい。
「俺は、君に愛される資格はないんじゃないかと……そう考えていたのですが」
「資格なんて必要ないです。必要なのは受け入れる覚悟だけなんですよ?」
「ですが、殿下を王にするためには、殿下が王に相応しいことを精霊王に認めさせる必要があります。足りない魔力を補う必要もありましょう」
そこまで告げて、メルヒオールの表情が曇った。
続くだろう言葉の心当たりに、アルフォンシーヌは苦笑を浮かべる。
メルヒオールさまは嫌だと感じてくれているのね。あたしは……割り切っているつもりだけど。
メルヒオールは小声に変えて続きを告げる。
「特に後者については、魔力の相性の都合でアルの身体を媒介に使うことになります。ことの次第によっては……その、三人でということになりかねないのですが……」
「えっと、そこは……頑張りますので」
背後にいるリシャールが聞き耳を立てている気配がある。だが、メルヒオールの得意とする風の魔法でノイズを発生させているようなので、おそらく聞こえていないだろう。
メルヒオールが大きなため息をついた。
「そんなに殿下のほうがうまいんですか?」
「はい?」
驚きで目を瞬かせるアルフォンシーヌに、メルヒオールは不機嫌そうに言葉を続けた。
アルフォンシーヌは切々と訴えるが、メルヒオールの唇がわずかに動いただけで声はなかった。
「自分がいるからリシャール殿下が王になれないのだと考えているのであれば、それは間違いです。リシャール殿下はメルヒオールさまを必要としています。だから、あなたの目の前であたしを抱いたんじゃないですか。失わずに済むのであれば、傷ついても構わないと行動したんですよ」
こうなる前に、リシャール殿下ともきちんと話しておくべきだった。
こうなる前に、メルヒオールという人物としっかりと向き合うべきだった。
だけど、これは後悔じゃない。反省し、活かすための一歩にせねば。
「あたしだって同じです。傷ついたって構わない。あなたがそばにいてくれるなら、それでいい。生きて、結末をきちんと見届けけてください、メルヒオールさま」
「……アルフォンシーヌ」
見上げた頬に、メルヒオールの掌が触れる。温かくて、頼もしい大きな手。涙を拭われるとくすぐったい。
「俺は、君に愛される資格はないんじゃないかと……そう考えていたのですが」
「資格なんて必要ないです。必要なのは受け入れる覚悟だけなんですよ?」
「ですが、殿下を王にするためには、殿下が王に相応しいことを精霊王に認めさせる必要があります。足りない魔力を補う必要もありましょう」
そこまで告げて、メルヒオールの表情が曇った。
続くだろう言葉の心当たりに、アルフォンシーヌは苦笑を浮かべる。
メルヒオールさまは嫌だと感じてくれているのね。あたしは……割り切っているつもりだけど。
メルヒオールは小声に変えて続きを告げる。
「特に後者については、魔力の相性の都合でアルの身体を媒介に使うことになります。ことの次第によっては……その、三人でということになりかねないのですが……」
「えっと、そこは……頑張りますので」
背後にいるリシャールが聞き耳を立てている気配がある。だが、メルヒオールの得意とする風の魔法でノイズを発生させているようなので、おそらく聞こえていないだろう。
メルヒオールが大きなため息をついた。
「そんなに殿下のほうがうまいんですか?」
「はい?」
驚きで目を瞬かせるアルフォンシーヌに、メルヒオールは不機嫌そうに言葉を続けた。
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