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6:魔導師として宮廷入りしたので、やれることだけやってみます!
こうすることくらいしか 1
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そのあとの記憶があやふやだけど……二人が目の前にいるってことは、助かったってことなのよね?
メルヒオールとリシャールとはあの儀式以降、アルフォンシーヌが魔導師として宮廷入りするまでは関わっていない。正確には、メルヒオールとは宮廷魔導師の試験で顔を合わせてはいるが、雑談をすることはなかった。受験生と試験官というだけ。
え、でも、再会したときは公爵になっていたはず。メルヒオール・ファイエって名乗ったってことはそういうことでしょう?
蘇った記憶から推測されるに、メルヒオールは王にならないために王族をやめて臣下になったということなのだろう。
でも、それなのに、殿下はどうして?
リシャールを王にするには今のままではいけないのだろうか。今のリシャールであれば、現国王と同じ道を歩めるのではないか。魔力を持たないわけではないのだから、可能のはずでは。
メルヒオールはリシャールの問いに何も答えない。何も返せない自分に苛立っているのか、歯ぎしりが聞こえる。
埒があかないと考えたのか、リシャールはメルヒオールからアルフォンシーヌに視線を移す。
「アルちゃんもそろそろ思い出してくれないかな? 私の寵妃になるか、メルの正妻になるか、選択するのに必要な情報でしょう?」
寵妃と正妻……今の状況とその言葉がまだ繋がらないんですが。
リシャールの言っている意味がわからないが、忘れていたことについては伝えねばと、アルフォンシーヌは毛布を胸に引き寄せながら唇を動かす。
「メルヒオールさまが殿下の弟君であることは思い出せました。この場所で成人の儀を行い、そのときにメルヒオールさまが精霊王を怒らせてしまったことも。――でも、あたし、どうしてあの場を切り抜けられたのか、理解できないんです。あたし、何かしたんですか?」
問いながら、気づいたことが一つある。
物心がついた頃、魔力の制御のためにたくさんのアクセサリーや道具を身につけさせられていた。だが、《あるとき》からその量は極端に減っている。《あるとき》というのが、この成人の儀の前後ではないだろうか。これまで記憶が飛んでいたから、ピンとこなかっただけで。
リシャールが嬉しそうに笑った。
「そうか。そこまで思い出せたなら、あともう少しですね。せっかくいい格好をしていることですし、直接働きかけましょうか? メルとばかり交わるから、記憶を操作されちゃうわけですし。私の魔力を受けたら、案外と全部、自分の役割も思い出せるんじゃないですか?」
「な、なんでそうなるんですかっ! あたしは嫌ですからね! それに、メルヒオールさまは記憶操作なんてしてませんから! ねえ、師匠! なんか言ってやってください!」
アルフォンシーヌが腰を掛けているベッドにリシャールが近づいてきているが、メルヒオールは動かない。
「師匠? え、待って。メルヒオールさま?」
このままだとリシャールに襲われてしまう。全力で逃げることを選択すれば、魔導師であるアルフォンシーヌに分はある。
だが、さすがに殿下という立場の人間を焼き払うわけにはいかない。
「アルちゃん、メルの意志で君の記憶を改ざんしているわけではないんですよ」
「どういう……?」
ベッドに乗られてしまった。困惑している間に、リシャールに組み敷かれる。
「メルはね、いや、今のメルは、あの時のメルヒオールの他に、別の存在が入っているんです。――それは、実は私も同じでして」
「同じ……っ!」
唇を唇で塞がれる。混乱しているうちに舌が差し込まれた。
メルヒオールとリシャールとはあの儀式以降、アルフォンシーヌが魔導師として宮廷入りするまでは関わっていない。正確には、メルヒオールとは宮廷魔導師の試験で顔を合わせてはいるが、雑談をすることはなかった。受験生と試験官というだけ。
え、でも、再会したときは公爵になっていたはず。メルヒオール・ファイエって名乗ったってことはそういうことでしょう?
蘇った記憶から推測されるに、メルヒオールは王にならないために王族をやめて臣下になったということなのだろう。
でも、それなのに、殿下はどうして?
リシャールを王にするには今のままではいけないのだろうか。今のリシャールであれば、現国王と同じ道を歩めるのではないか。魔力を持たないわけではないのだから、可能のはずでは。
メルヒオールはリシャールの問いに何も答えない。何も返せない自分に苛立っているのか、歯ぎしりが聞こえる。
埒があかないと考えたのか、リシャールはメルヒオールからアルフォンシーヌに視線を移す。
「アルちゃんもそろそろ思い出してくれないかな? 私の寵妃になるか、メルの正妻になるか、選択するのに必要な情報でしょう?」
寵妃と正妻……今の状況とその言葉がまだ繋がらないんですが。
リシャールの言っている意味がわからないが、忘れていたことについては伝えねばと、アルフォンシーヌは毛布を胸に引き寄せながら唇を動かす。
「メルヒオールさまが殿下の弟君であることは思い出せました。この場所で成人の儀を行い、そのときにメルヒオールさまが精霊王を怒らせてしまったことも。――でも、あたし、どうしてあの場を切り抜けられたのか、理解できないんです。あたし、何かしたんですか?」
問いながら、気づいたことが一つある。
物心がついた頃、魔力の制御のためにたくさんのアクセサリーや道具を身につけさせられていた。だが、《あるとき》からその量は極端に減っている。《あるとき》というのが、この成人の儀の前後ではないだろうか。これまで記憶が飛んでいたから、ピンとこなかっただけで。
リシャールが嬉しそうに笑った。
「そうか。そこまで思い出せたなら、あともう少しですね。せっかくいい格好をしていることですし、直接働きかけましょうか? メルとばかり交わるから、記憶を操作されちゃうわけですし。私の魔力を受けたら、案外と全部、自分の役割も思い出せるんじゃないですか?」
「な、なんでそうなるんですかっ! あたしは嫌ですからね! それに、メルヒオールさまは記憶操作なんてしてませんから! ねえ、師匠! なんか言ってやってください!」
アルフォンシーヌが腰を掛けているベッドにリシャールが近づいてきているが、メルヒオールは動かない。
「師匠? え、待って。メルヒオールさま?」
このままだとリシャールに襲われてしまう。全力で逃げることを選択すれば、魔導師であるアルフォンシーヌに分はある。
だが、さすがに殿下という立場の人間を焼き払うわけにはいかない。
「アルちゃん、メルの意志で君の記憶を改ざんしているわけではないんですよ」
「どういう……?」
ベッドに乗られてしまった。困惑している間に、リシャールに組み敷かれる。
「メルはね、いや、今のメルは、あの時のメルヒオールの他に、別の存在が入っているんです。――それは、実は私も同じでして」
「同じ……っ!」
唇を唇で塞がれる。混乱しているうちに舌が差し込まれた。
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