魔導師として宮廷入りしたので、そのお仕事はお引き受けしかねます!

一花カナウ

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5:魔導師として宮廷入りしたので、襲撃されても怯みません!

俺よりも 1

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 アルフォンシーヌが連れて来られたのは、リシャールの部屋の真上にある部屋だった。そこはメルヒオールの待機場所でもある。
 部屋の中に入ると、一番奥に配置された大きなベッドにまで進み、アルフォンシーヌはそこに降ろされた。

「師匠はあたしが襲われるってわかっていたんですか?」

 起き上がろうとするが、そのまま横になっているようにと手で指示される。仕方なくベッドに寝そべったままで待っていると、メルヒオールはローブを脱いだ。

「ええ、概ね。殿下を襲うと外交問題になりますが、警備のために連れてきた魔導師ならば影響は最小と踏んだのでしょう。貸していただいているこの国の兵士が何の動きも見せないあたり、君を襲撃するように命じたのはここの上層部の人間ですかね」

 ローブについた埃をバサバサと振って払い、椅子に投げ置く。そして彼はベッドに上ってきた。
 隣で寝られるようにと横に移動したアルフォンシーヌだったが、メルヒオールはそんな彼女の上に自然な動作で覆いかぶさった。

「あたし、そんなに弱く見えますかね?」
「少なくとも幼くは見えると思いますよ。童顔ですし、その体型であればなおさら」

 視線が薄い胸元をなぞる。仰向けに寝そべっていても、横に流れてしまうほどの胸はない。

 童顔なのは分かりきっていることだけど……。

 ここで気にしている体型のことに触れられるとは。アルフォンシーヌは思わずむすっとしてしまう。

「アル? 侮られてしまったことに怒りを覚えるなら、もっと強くなればいい。俺が鍛えてさしあげますよ」

 メルヒオールはそう告げて、アルフォンシーヌに口づけをした。

「ん……今夜の護衛はよろしいのですか? あたしが襲撃されたばかりなのに」

 彼に触れられたい気持ちはあるが、こんなときに不謹慎な気がする。隣国にやってきたのは、殿下の警護のためであって、メルヒオールと楽しむためではないのだ。
 するとメルヒオールはクスッと小さく笑う。

「殿下の命令です。君を守るようにと」

 そして再びキス。軽く触れて離れた。

「殿下は余裕ですね……」

 守れというのだから、ここで呑気に交わっている場合ではないだろう。警戒しつつ、同じ部屋で過ごすだけ――そうは考えても、行為をやめる気にはなれない。
 メルヒオールは手袋を外すと、アルフォンシーヌの頬を優しく撫でる。

「今回の外遊のメンバーは、こうなることを想定して割り振っているのです。君は守られていればいいんですよ」
「はい? って、んっ……」

 長い口づけ。舌が絡まる。

 気持ちいい……。

 アルフォンシーヌの官能を煽るように舌が上顎を丁寧になぞる。力が抜けて、彼に全てを任せてしまいたい気持ちが身体を支配しかけるも、唇が離れて正気に戻る。
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