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【番外編】嬌声を背後で聴きながら
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「んんっ!」
抵抗しようと手を出せば、掴まれて壁に押さえつけられる。
え、えっと、待って、この人――。
舌が絡まり、相手の舌がアルフォンシーヌの口腔内に侵入。上顎の気持ちのよい場所を丹念に擦られるとふっと力が抜けた。
「あ、はぁ……」
唇は離れたのに、名残惜しそうに唾液で繋がっている。
視線をやっとの思いで上げていくと、サラサラの金髪と眼鏡の奥の青い瞳が見えた。メルヒオールだ。
意地悪そうに彼の口の端が上がる。
「盗み聞きとはよい趣味ですね」
「あ、あの、こ、これは……」
「それに――」
メルヒオールの手が下着を避けて秘所に入り込む。すっかり濡れたそこに触れると、溝を抉るようになぞった。クチュっと水音が聞こえ、アルフォンシーヌの身体はたちまちに火照った。
「ああ、こんなにして」
「だ、ダメ……」
ここで大きな声を出したら隣に気づかれてしまう。壁に背中を押し当てられたときには魔法で音を消されていたが、いつまで有効なのかはわからない。
「疼きを取り去ってあげましょう。声、出して構いませんよ。音消しの魔法はかけてあります」
「ふぁ、あっ、そ、それも心配した、っけど」
激しさを増す指の動きに意識が持っていかれる。手袋のまま触られているが、それはそれで快感になってしまうから悔しい。
アルフォンシーヌが気持ちよさから逃れたくて必死に首を横に振ると、メルヒオールが首を傾げた。
「あ、ああ。隣の音も聞きたいですか? いいですよ。一緒に盗み聞きしましょうか、後学のために」
盗み聞きに参加するというので拘束を解いてもらえるだろうと安心すると、想定外のことが起こった。
「あ、ああんっ、も、もっとぉ、もっと、ちょうだ、いひぃっ」
「はぁ……はぁ……こう、か?」
パンパンと腰がぶつかる音がする。その声と音は――。
ぬわぁぁぁぁっ!
大音量で部屋に響き渡ったのは隣の情事の音声。壁に耳を当てて聞いていたよりもずっとはっきりと聞こえる。
「し、師匠っ!」
まさかこういう展開になるとは思っていなかった。悲鳴を上げたほうがよかったかもしれないが、開かれた唇に声はない。一瞬頭の中が真っ白になったせいだ。
とにかくこの悪趣味なことをやめさせようと、気を取り直したアルフォンシーヌはあえて彼を「師匠」と呼ぶ。
ところが、彼の返事は素手になった二本の指先の挿入で行われた。
「んっ、あ、ああっ……!」
何度も身体を重ねているから、アルフォンシーヌの気持ちのよい場所など熟知しているのだろう。軽く曲げられた指先が、中のざらっとした窪みをギュウギュウと押し、官能を煽る。
「ずいぶん興奮していらっしゃいますね。中もぐっしょりじゃないですか」
「ああ、ん、だめ、し、ししょ……んっ」
メルヒオールと壁に挟まれ身動きが封じられている。アルフォンシーヌは彼のローブに縋り、快感をやり過ごそうとするが、隣の嬌声が耳に入るだけで全身が反応してしまう。
こんなことはいけないってわかってるのに……。
彼の指をぎゅうっと締め付ける。そしてブルっと小さく震えた。
「指だけでは物足りなさそうですね」
メルヒオールの指が引き抜かれる。その動きだけで一度軽く達してしまった。汗が全身をしっとりとさせる。
「お、お願い……もう、許して」
盗み聞きをしてしまったのは悪かったと思う。このままここで彼としてしまったら、次の課題に間に合わない。なにごとかがあったと思われるだろうが、研修課題を落とすわけにはいかないのだ。
それに、こんなところでモタモタしていたら誰かが課題の器具を取りに部屋に来てしまうじゃない!
「許す? 俺以外でこんなに濡らしておいて、よく言いますよ」
ローブの内ポケットから小瓶を取り出し、慎重に蓋を開ける。それは最近になって使い始めた液体の入っている瓶だ。
抵抗しようと手を出せば、掴まれて壁に押さえつけられる。
え、えっと、待って、この人――。
舌が絡まり、相手の舌がアルフォンシーヌの口腔内に侵入。上顎の気持ちのよい場所を丹念に擦られるとふっと力が抜けた。
「あ、はぁ……」
唇は離れたのに、名残惜しそうに唾液で繋がっている。
視線をやっとの思いで上げていくと、サラサラの金髪と眼鏡の奥の青い瞳が見えた。メルヒオールだ。
意地悪そうに彼の口の端が上がる。
「盗み聞きとはよい趣味ですね」
「あ、あの、こ、これは……」
「それに――」
メルヒオールの手が下着を避けて秘所に入り込む。すっかり濡れたそこに触れると、溝を抉るようになぞった。クチュっと水音が聞こえ、アルフォンシーヌの身体はたちまちに火照った。
「ああ、こんなにして」
「だ、ダメ……」
ここで大きな声を出したら隣に気づかれてしまう。壁に背中を押し当てられたときには魔法で音を消されていたが、いつまで有効なのかはわからない。
「疼きを取り去ってあげましょう。声、出して構いませんよ。音消しの魔法はかけてあります」
「ふぁ、あっ、そ、それも心配した、っけど」
激しさを増す指の動きに意識が持っていかれる。手袋のまま触られているが、それはそれで快感になってしまうから悔しい。
アルフォンシーヌが気持ちよさから逃れたくて必死に首を横に振ると、メルヒオールが首を傾げた。
「あ、ああ。隣の音も聞きたいですか? いいですよ。一緒に盗み聞きしましょうか、後学のために」
盗み聞きに参加するというので拘束を解いてもらえるだろうと安心すると、想定外のことが起こった。
「あ、ああんっ、も、もっとぉ、もっと、ちょうだ、いひぃっ」
「はぁ……はぁ……こう、か?」
パンパンと腰がぶつかる音がする。その声と音は――。
ぬわぁぁぁぁっ!
大音量で部屋に響き渡ったのは隣の情事の音声。壁に耳を当てて聞いていたよりもずっとはっきりと聞こえる。
「し、師匠っ!」
まさかこういう展開になるとは思っていなかった。悲鳴を上げたほうがよかったかもしれないが、開かれた唇に声はない。一瞬頭の中が真っ白になったせいだ。
とにかくこの悪趣味なことをやめさせようと、気を取り直したアルフォンシーヌはあえて彼を「師匠」と呼ぶ。
ところが、彼の返事は素手になった二本の指先の挿入で行われた。
「んっ、あ、ああっ……!」
何度も身体を重ねているから、アルフォンシーヌの気持ちのよい場所など熟知しているのだろう。軽く曲げられた指先が、中のざらっとした窪みをギュウギュウと押し、官能を煽る。
「ずいぶん興奮していらっしゃいますね。中もぐっしょりじゃないですか」
「ああ、ん、だめ、し、ししょ……んっ」
メルヒオールと壁に挟まれ身動きが封じられている。アルフォンシーヌは彼のローブに縋り、快感をやり過ごそうとするが、隣の嬌声が耳に入るだけで全身が反応してしまう。
こんなことはいけないってわかってるのに……。
彼の指をぎゅうっと締め付ける。そしてブルっと小さく震えた。
「指だけでは物足りなさそうですね」
メルヒオールの指が引き抜かれる。その動きだけで一度軽く達してしまった。汗が全身をしっとりとさせる。
「お、お願い……もう、許して」
盗み聞きをしてしまったのは悪かったと思う。このままここで彼としてしまったら、次の課題に間に合わない。なにごとかがあったと思われるだろうが、研修課題を落とすわけにはいかないのだ。
それに、こんなところでモタモタしていたら誰かが課題の器具を取りに部屋に来てしまうじゃない!
「許す? 俺以外でこんなに濡らしておいて、よく言いますよ」
ローブの内ポケットから小瓶を取り出し、慎重に蓋を開ける。それは最近になって使い始めた液体の入っている瓶だ。
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