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1:魔導師として宮廷入りしたので、そのお仕事はお引き受けしかねます!

記憶にありませんが、なにか? 1

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 それはとても情熱的な口づけだった。
 アルフォンシーヌ・カスペールの十八年の人生の中で、一度も経験したことがないほどの。

 って、ちょっと待って!

 状況が把握できない。相手が誰なのかもわからなかった。なぜなら、意識を取り戻したばかりだからだ。

「んっ、んんっ!」

 とにかく、この人物を引き離すことが先決だと声を上げる。だが、口をふさがれた状態であるために、まともにしゃべることができない。鼻にかかるような音だけが出る。
 ベッドらしき場所に押し倒されているらしかった。手は相手にしっかりと押さえられている。足は自由のようだが、相手にスカートを踏まれているらしく、バタバタさせるくらいしかできていない。相手はアルフォンシーヌに馬乗りになっているようだ。ただ、部屋が暗くて相手の顔はよく見えない。場所についても同様だ。
 そうしている間も口づけは何度も角度を変える。舌先がアルフォンシーヌの唇を優しく舐め、その刺激で薄く口を開くと、その時を待っていたかのように相手の舌は奥へと侵入する。歯列をなぞられると奇妙な感覚が身体の芯から湧いてくる。

 これが口づけ?

 自分が知識として持っているものとは違う。アルフォンシーヌは焦った。身体が変化していることに気がついたからだ。

「あっ……」

 声を出そうとして、舌がさらに奥に伸びた。アルフォンシーヌの小さな舌に相手の舌が触れて、甘い痺れを感じた。抵抗していたはずの身体からふっと力が抜ける。

「んっ……」

 身体が熱い。意識を取り戻したと思っていたが、どこかふわふわとした気分になってきた。病気で熱に冒されているみたいな。

 何が起きているの?

 得意の魔法で相手を引き離すこともできただろう。だけども、今の精神状態では制御できる自信がなかった。アルフォンシーヌの得意な魔法は炎を操る攻撃型の魔法。この場所がどこなのかは不明だが、制御を失った魔法は相手もこの場所も全て灰にしてしまうほどの威力を発揮しかねない。自分の力の範囲や効果を正確に把握しているアルフォンシーヌは、そんな無謀なことをしようとは思わなかった。
 抵抗をやめたからだろう。相手は優しくアルフォンシーヌの舌を絡め取り、不思議な感覚を引き出していく。

 気持ちがいいの、あたし?

 自分が何をされているのかよくわからなかった。ただ、今まで感じたこともない心地よさに身を任せつつあった。

「ん、ふっ……」

 舌がぐるりとまわって口の中を探る。奥の方を舐められると、息苦しさとともにゾクゾクした。
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