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百合のように艶やかに、薔薇のように芳しく 3
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ぞわわわっ……。
ひんやりとした感触に、俺は今まで感じたことのない何かを覚えた。
「なんとも言えない表情をしてくれるね。他の誰かにこんなところを触られたこと、ないでしょ?」
指先が足の付け根にゆっくりと近付く。
「んっ……や、やめっ……そ、それ以上は……」
「ふふっ……どうしようかな。私を誘惑した罪は重いよ?」
「ちょっ……待てって……」
「声を出しても良いよ? 好きなだけたくさん喘いで、私を楽しませてよ」
指先が内腿を行ったり来たりしている。その感触がくすぐったいのか気持ちが良いのか、よくわからない。
「お前……なんでそう……んあっ……」
股間に手が伸ばされて、ひんやりとしたその刺激に身体が震えた。
「こんな私、汚らわしいでしょ? この学校は私を褒めて受け入れてくれるけど、私は男しか愛せない存在。ここは私にお似合いの場所だと思わない? 生徒は女のコだけだし、先生も女性が多いのだから」
股間をまさぐりながらの切なげな告白。
俺はされるがままでありながらも、彼の台詞にしっかり耳を傾けた。だから美樹の発言の矛盾に気付いて、俺は涙ぐみながらも返す。
「じゃあ……なんで美樹は……俺をここに呼んだんだっ……んぅっ……」
「…………」
手付きが変わる。無茶苦茶で無秩序に撫で回されていたのが、おとなしく優しくなった。
「そ、それに、俺はまだ、お前がこの学院にいる本当の理由、聞いちゃいねぇぞっ!」
快楽に溺れそうになるのを吹き飛ばすために、俺は思いっきり叫んだ。
「夜だって、お前、何処に出掛けているんだよっ!」
俺はまだ美樹のことをよく知らない。この学校では誰よりも間近で接していたはずだ。他の生徒たちみたいに素直に憧れることもあったし、夜中にこっそりと抜け出しているのに気付けばすごく心配した。本人の様子は楽しげに見えたし、聖カサブランカ女学院に馴染んでいるようにも感じられたが、誰よりも孤独だということを俺は見抜いていたつもりだ。だから、そんな彼を放っておくことができなくて、でも訊こうとすれば拒むから、だからずっと何も訊かずにいたというのに。
「……馬鹿」
動き回っていた手が静かになった。
「……葵の……馬鹿……」
すっと離れて、美樹はペタンと崩れるように座った。
「気が……済んだか?」
「葵は……私を拒絶しないの? こんなことをした私を、許すことができるの?」
「お前は、俺に嫌われたくて襲ってきたのかよ?」
ふるふると首が横に振られ、俺に向けられた長いポニーテールが揺れる。
「だったら、今回は見逃す。……まぁ、なんか変な感じだが……」
はぁ、とため息を一つついて上体を起こす。太股にひんやりとした刺激が残っていて、反射的にぶるっと身体を震わせた。
「怒っていいんだよ? 葵」
「びっくりはしたけど、今のは忘れてやれる範囲。なかったことにしてやってもいい」
髪を手櫛で整えながら告げる。すると美樹はくるっと素早く振り向いた。
「駄目。なかったことにはしないで。――だから、葵は私を警戒してよ。ね?」
「……わかった」
必死な彼の目を見ていたら、他に掛ける言葉は浮かばない。俺は静かに頷く。
美樹が微笑みを取り戻したところで、予鈴が鳴り響いた。
ひんやりとした感触に、俺は今まで感じたことのない何かを覚えた。
「なんとも言えない表情をしてくれるね。他の誰かにこんなところを触られたこと、ないでしょ?」
指先が足の付け根にゆっくりと近付く。
「んっ……や、やめっ……そ、それ以上は……」
「ふふっ……どうしようかな。私を誘惑した罪は重いよ?」
「ちょっ……待てって……」
「声を出しても良いよ? 好きなだけたくさん喘いで、私を楽しませてよ」
指先が内腿を行ったり来たりしている。その感触がくすぐったいのか気持ちが良いのか、よくわからない。
「お前……なんでそう……んあっ……」
股間に手が伸ばされて、ひんやりとしたその刺激に身体が震えた。
「こんな私、汚らわしいでしょ? この学校は私を褒めて受け入れてくれるけど、私は男しか愛せない存在。ここは私にお似合いの場所だと思わない? 生徒は女のコだけだし、先生も女性が多いのだから」
股間をまさぐりながらの切なげな告白。
俺はされるがままでありながらも、彼の台詞にしっかり耳を傾けた。だから美樹の発言の矛盾に気付いて、俺は涙ぐみながらも返す。
「じゃあ……なんで美樹は……俺をここに呼んだんだっ……んぅっ……」
「…………」
手付きが変わる。無茶苦茶で無秩序に撫で回されていたのが、おとなしく優しくなった。
「そ、それに、俺はまだ、お前がこの学院にいる本当の理由、聞いちゃいねぇぞっ!」
快楽に溺れそうになるのを吹き飛ばすために、俺は思いっきり叫んだ。
「夜だって、お前、何処に出掛けているんだよっ!」
俺はまだ美樹のことをよく知らない。この学校では誰よりも間近で接していたはずだ。他の生徒たちみたいに素直に憧れることもあったし、夜中にこっそりと抜け出しているのに気付けばすごく心配した。本人の様子は楽しげに見えたし、聖カサブランカ女学院に馴染んでいるようにも感じられたが、誰よりも孤独だということを俺は見抜いていたつもりだ。だから、そんな彼を放っておくことができなくて、でも訊こうとすれば拒むから、だからずっと何も訊かずにいたというのに。
「……馬鹿」
動き回っていた手が静かになった。
「……葵の……馬鹿……」
すっと離れて、美樹はペタンと崩れるように座った。
「気が……済んだか?」
「葵は……私を拒絶しないの? こんなことをした私を、許すことができるの?」
「お前は、俺に嫌われたくて襲ってきたのかよ?」
ふるふると首が横に振られ、俺に向けられた長いポニーテールが揺れる。
「だったら、今回は見逃す。……まぁ、なんか変な感じだが……」
はぁ、とため息を一つついて上体を起こす。太股にひんやりとした刺激が残っていて、反射的にぶるっと身体を震わせた。
「怒っていいんだよ? 葵」
「びっくりはしたけど、今のは忘れてやれる範囲。なかったことにしてやってもいい」
髪を手櫛で整えながら告げる。すると美樹はくるっと素早く振り向いた。
「駄目。なかったことにはしないで。――だから、葵は私を警戒してよ。ね?」
「……わかった」
必死な彼の目を見ていたら、他に掛ける言葉は浮かばない。俺は静かに頷く。
美樹が微笑みを取り戻したところで、予鈴が鳴り響いた。
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