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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!
ふつうに話し合いませんか? ああ、無理ですか…… 4
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私の息を乱したのちに、マッチョさんは話を軌道に戻す。
「最初にその話を聞いた時には死んでこいと言ったんじゃないかと思ったが、おそらくそういう意味ではない」
「だから、それは私がドラゴンを倒せるくらい強いと思ったからじゃないの?」
呼吸を整えながら、私が思ったままを返す。マッチョさんは首を横に振った。
「それも違う。貴女が偉大な魔導師の血を引く、かの有名な侯爵家のご息女だからだ。貴女は俺を呼びに来たはずだ」
断言された。だが、私にはそういう記憶がさっぱりない。
「いや、そんな話はされてないけど」
「話をしたかったのにできなかったんだろう。人前だったから説明できなかったのか、あるいは、気の強い貴女のことだから無視して出発してしまったんだろう」
おおう、図星かもしれない……
ドラゴン討伐を命じられた私はすぐに支度に取り掛かり、翌朝には旅立っている。準備をしている時に王宮から使いが来たが、それを突っぱねて帰らせたことも記憶にある。
いや、だってさ、浮気した上に開き直られて、しかも悪者として友人知人の前で糾弾して来た相手から連絡がきたって聞いても、言い訳される以外の展開を考えつくと思う? 弁解なんかしてほしくないし、早くドラゴンをぶっ飛ばしてスッキリしたかったんだから、私が取る行動なんて自明よね?
黙っていたら、マッチョさんはあきれたようにクスクスと笑って、私のヘソに唇を落とした。
どうしてこう、触れて欲しい部分に的確に刺激をくれるんだろう。そんなにわかりやすいだろうか。
「……あなたが言う通りだったとして、どうしてあなたを呼ぶ必要が? これから王都で何かが起こるってこと?」
「そうだ。王太子妃としておとなしく貴女を選んでいればよかったのに、彼は特殊系の魔導師を選んだんだろう? 彼女は、いずれ国を乱す」
私の問いに答えて、マッチョさんは険しい顔をした。何かを考えている。
「なんでそう断言できるの?」
「ルツィエは竜化については聞いていないんだな?」
竜化の話題を急に振られて、私は戸惑った。
質問を質問で返してきたということは、竜化の話と特殊系の魔導師には関連があるということだろうか?
しかし、魔導師の一族としての知識をしっかり叩き込まれているはずの私には、そのどちらの知識もほぼ持っていない。それが少し奇妙に感じてはいたのだが。
私は素直に頷いた。
「ええ、そうだけど。人間がドラゴンになるなんて初めて聞いたし、まさかこの目でその瞬間を見ることになるとは思わなかったわ。それって病気なの?」
興味があって、私は尋ねる。
マッチョさんが人間なのか、もしくはドラゴンなのかがちょっと気になる。むしろ、半獣というやつなのかしら?
半獣、という言葉を思い出して、私ははたと気づく。
あれ? マッチョさん、私の血が目覚めるとかどうとか言っていた気がするんですけど。
私の問いに、マッチョさんは小さく唸った。
「そうだな……話すと長くなるが――この世界の魔法がどこから来ているのか、その説明からしたほうがよさそうだな」
「最初にその話を聞いた時には死んでこいと言ったんじゃないかと思ったが、おそらくそういう意味ではない」
「だから、それは私がドラゴンを倒せるくらい強いと思ったからじゃないの?」
呼吸を整えながら、私が思ったままを返す。マッチョさんは首を横に振った。
「それも違う。貴女が偉大な魔導師の血を引く、かの有名な侯爵家のご息女だからだ。貴女は俺を呼びに来たはずだ」
断言された。だが、私にはそういう記憶がさっぱりない。
「いや、そんな話はされてないけど」
「話をしたかったのにできなかったんだろう。人前だったから説明できなかったのか、あるいは、気の強い貴女のことだから無視して出発してしまったんだろう」
おおう、図星かもしれない……
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いや、だってさ、浮気した上に開き直られて、しかも悪者として友人知人の前で糾弾して来た相手から連絡がきたって聞いても、言い訳される以外の展開を考えつくと思う? 弁解なんかしてほしくないし、早くドラゴンをぶっ飛ばしてスッキリしたかったんだから、私が取る行動なんて自明よね?
黙っていたら、マッチョさんはあきれたようにクスクスと笑って、私のヘソに唇を落とした。
どうしてこう、触れて欲しい部分に的確に刺激をくれるんだろう。そんなにわかりやすいだろうか。
「……あなたが言う通りだったとして、どうしてあなたを呼ぶ必要が? これから王都で何かが起こるってこと?」
「そうだ。王太子妃としておとなしく貴女を選んでいればよかったのに、彼は特殊系の魔導師を選んだんだろう? 彼女は、いずれ国を乱す」
私の問いに答えて、マッチョさんは険しい顔をした。何かを考えている。
「なんでそう断言できるの?」
「ルツィエは竜化については聞いていないんだな?」
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質問を質問で返してきたということは、竜化の話と特殊系の魔導師には関連があるということだろうか?
しかし、魔導師の一族としての知識をしっかり叩き込まれているはずの私には、そのどちらの知識もほぼ持っていない。それが少し奇妙に感じてはいたのだが。
私は素直に頷いた。
「ええ、そうだけど。人間がドラゴンになるなんて初めて聞いたし、まさかこの目でその瞬間を見ることになるとは思わなかったわ。それって病気なの?」
興味があって、私は尋ねる。
マッチョさんが人間なのか、もしくはドラゴンなのかがちょっと気になる。むしろ、半獣というやつなのかしら?
半獣、という言葉を思い出して、私ははたと気づく。
あれ? マッチョさん、私の血が目覚めるとかどうとか言っていた気がするんですけど。
私の問いに、マッチョさんは小さく唸った。
「そうだな……話すと長くなるが――この世界の魔法がどこから来ているのか、その説明からしたほうがよさそうだな」
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