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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!
こんなはずでは 1
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陽が落ちる。王都から最も近い宿場町に私たちはやってきていた。
夜の闇に紛れて町に近づき、マッチョドラゴンは広い草むらに着地。そこで人型に戻る。やはりドラゴンはマッチョさんだった。服も人型に戻るのと同時に復元されるのがすごい。
私の着ていた服についての説明で修復魔法に興味を示した本当の理由は、この貴重な魔法を彼も使えるからだったのかもしれない。
ってか、そういう魔法が使えるなら、私の服も直してよ……
だが、今の私には不満をぶちまける余裕はなかった。
「大丈夫か?」
心配そうな顔が私を覗いている。太い腕に私は横抱きにされていた。筋肉のベッドが思いのほか心地いい。
「うう……」
呻くのが精一杯だった。というのも、乗り物酔いになってしまったからだ。高速で移動する物体に乗るのは、酔うものらしい。いつも自分自身に高速移動の魔法をかけて、その上で飛行魔法を使うのであるが、その時には全然酔わないから油断していたのである。
「顔色が悪いな……。態勢を整えるためにもここで一泊し、明朝に王都に入るぞ」
「で、でも、急いでいるんじゃ……」
「まだ大丈夫だ。貴女が魔法で補助してくれたおかげで、時間ができたんだ。それに、ドラゴンの姿で王都には流石に入れん。必要な休息だろう?」
マッチョさんに何か策があるというのであれば、私は従うだけだ。なんせ、ひやかしでついてきただけなんだし。
私は小さく顎を引いて承知の意を示した。
「……えっと、なんで同室? おかしいでしょ? せめて、ベッドは二つでしょ? あなた、身体が大きいんだから!」
宿をとってもらっておいて文句を言える身分ではないはずだが、私には譲れるものと譲れないものがある。
なお、ドラゴン酔いは宿に到着して水を飲んだらだいぶ回復した。
「身体が大きい都合でベッドが二人用のこれじゃないといけないんだ、重量的に」
そう答えるマッチョさんは、自分が腰をおろしたクイーンサイズのベッドを軽く叩く。マッチョさんが座ってしまうと、大きいはずのベッドが普通のサイズに見えてしまうけれど、これは大きなベッドだ。彼の相当な質量にフレームが歪んでいるのが、なんとなくわかる。
ああ、確かに小さくてチャチな作りのベッドでは、マッチョさんの体重を支えられないでしょうね。
説明に、納得できてしまった。つまりは、私が勝手に妄想していただけということだ。マッチョさんは私と寝ようと思ったわけではない。
夜の闇に紛れて町に近づき、マッチョドラゴンは広い草むらに着地。そこで人型に戻る。やはりドラゴンはマッチョさんだった。服も人型に戻るのと同時に復元されるのがすごい。
私の着ていた服についての説明で修復魔法に興味を示した本当の理由は、この貴重な魔法を彼も使えるからだったのかもしれない。
ってか、そういう魔法が使えるなら、私の服も直してよ……
だが、今の私には不満をぶちまける余裕はなかった。
「大丈夫か?」
心配そうな顔が私を覗いている。太い腕に私は横抱きにされていた。筋肉のベッドが思いのほか心地いい。
「うう……」
呻くのが精一杯だった。というのも、乗り物酔いになってしまったからだ。高速で移動する物体に乗るのは、酔うものらしい。いつも自分自身に高速移動の魔法をかけて、その上で飛行魔法を使うのであるが、その時には全然酔わないから油断していたのである。
「顔色が悪いな……。態勢を整えるためにもここで一泊し、明朝に王都に入るぞ」
「で、でも、急いでいるんじゃ……」
「まだ大丈夫だ。貴女が魔法で補助してくれたおかげで、時間ができたんだ。それに、ドラゴンの姿で王都には流石に入れん。必要な休息だろう?」
マッチョさんに何か策があるというのであれば、私は従うだけだ。なんせ、ひやかしでついてきただけなんだし。
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「……えっと、なんで同室? おかしいでしょ? せめて、ベッドは二つでしょ? あなた、身体が大きいんだから!」
宿をとってもらっておいて文句を言える身分ではないはずだが、私には譲れるものと譲れないものがある。
なお、ドラゴン酔いは宿に到着して水を飲んだらだいぶ回復した。
「身体が大きい都合でベッドが二人用のこれじゃないといけないんだ、重量的に」
そう答えるマッチョさんは、自分が腰をおろしたクイーンサイズのベッドを軽く叩く。マッチョさんが座ってしまうと、大きいはずのベッドが普通のサイズに見えてしまうけれど、これは大きなベッドだ。彼の相当な質量にフレームが歪んでいるのが、なんとなくわかる。
ああ、確かに小さくてチャチな作りのベッドでは、マッチョさんの体重を支えられないでしょうね。
説明に、納得できてしまった。つまりは、私が勝手に妄想していただけということだ。マッチョさんは私と寝ようと思ったわけではない。
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