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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!
薄々気づいていましたとも 3
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「風の防壁膜は張っておくから、強風は遮れるはずだ。だが、振り落とされる可能性はあるから気を引き締めてほしい」
私が慌てて彼の首に掴まるように移動すると、翼がバサバサと上下に動き浮上した。
ついうっかり首を絞めてしまわないか――などと心配したのだけど、充分すぎる太さがあって私の腕が回りきらない。本当に、デカい。
地面から離れていくと、高度に比例するように私の気持ちは高揚した。
「おおっ! 魔法で飛ぶわけでもないのね」
まさか私がドラゴンに乗る日が来ようとは! ドラゴンっていったら、ゲームの最後で倒されるだけの存在だと思っていたのに。ラスボスをするには、やはり見た目のインパクトが大事である。
当時は魔王も流行っていたけど、私は断然ドラゴン派。だって素敵じゃない? この図体で、結構機敏に動くのよ? 空でも陸でも最強なんだから!
って、あれ? そういえば、《緋竜の姫君》のラスボスって、赤いドラゴンじゃなかったっけ? 私の覚え間違い? タイトルが緋竜だからそう勘違いしちゃっただけ?
前世の記憶は現在の記憶と比べたら薄ぼんやりしてしまっている。記憶を辿り、イメージを懸命に引き出すと、携帯ゲーム機の画面に赤い色が目立って感じられた。これは炎の色でも血の色でもなかったはず。だとすると、その色はラスボスのカラーのはずだ。
うん、そうそう、あのグラフィックは赤よね……何度もプレイしたんだから。じゃあ、マッチョドラゴンはゲームのラスボスではない……人違いってか、ドラゴン違いってこと?
彼にとってはどうでもいいだろうことについて私が思案している間にも、高度は上がっていく。魔法の補助を受けているだけあってか、移動があっという間だ。
肌が冷たい空気に触れて高度の差に気づき、私は意識を現実に戻す。
「姿を消す魔法も必要だったりする?」
ふと、この巨体のことを考えて尋ねれば、彼は面倒そうに首をわずかに振った。
「いや、どうせ常人の目には捉えられないだろうから、いらん」
「そう」
どれだけかっ飛ばしていくつもりなのだろうか。全長や体高はパッと見て大型トラック以上。そんなものが飛んでいたら、大体の人はびっくりするはずなのだが――。
「さあ、加速するぞ!」
マッチョドラゴンがきちんと声をかけてくれたおかげで、私はしっかりくっつくことができた。ここでしがみつけてよかった――と、このわずか数秒後に思うことになる。
翼が上下に大きく動くと、周囲に魔法陣が展開。それを認識するや否や、弾丸が発射されるかのように西に向かって撃ち出された。
ひぃっ! 思ったのと違うんですけど‼︎
これなら短時間で王都周辺には出られるだろう。だが、無事に王都に到着できる気がしなかった。
私が慌てて彼の首に掴まるように移動すると、翼がバサバサと上下に動き浮上した。
ついうっかり首を絞めてしまわないか――などと心配したのだけど、充分すぎる太さがあって私の腕が回りきらない。本当に、デカい。
地面から離れていくと、高度に比例するように私の気持ちは高揚した。
「おおっ! 魔法で飛ぶわけでもないのね」
まさか私がドラゴンに乗る日が来ようとは! ドラゴンっていったら、ゲームの最後で倒されるだけの存在だと思っていたのに。ラスボスをするには、やはり見た目のインパクトが大事である。
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「そう」
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「さあ、加速するぞ!」
マッチョドラゴンがきちんと声をかけてくれたおかげで、私はしっかりくっつくことができた。ここでしがみつけてよかった――と、このわずか数秒後に思うことになる。
翼が上下に大きく動くと、周囲に魔法陣が展開。それを認識するや否や、弾丸が発射されるかのように西に向かって撃ち出された。
ひぃっ! 思ったのと違うんですけど‼︎
これなら短時間で王都周辺には出られるだろう。だが、無事に王都に到着できる気がしなかった。
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