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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!
薄々気づいていましたとも 1
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もうおわかりだろうか。
ですよねー、などと心の中で言ってはみるが、まだ納得できない。というか、認めたくない。
「え……マジ?」
かろうじて出た声は、存外に情けないものだった。
「なんだ、気づいていると思っていたぞ」
人語を操るその巨大な生物は、この世界では《ドラゴン》と呼んでいる存在だ。
声は聞き覚えがあるマッチョさんのもの。人型の時と比べたら声のボリュームが大きいけれど、低くて落ち着いていて、ちょっとぶっきらぼうな喋り方は、どう考えても彼である。
その大きな身体は深い青い色をしており、ミッドナイトブルーが私の知っている色の名前で一番近いもののように思える。煌めきが感じられる、夜空の色。
トカゲやワニを想起させる爬虫類系のフォルムに、その巨体に合う大きさの蝙蝠のような形状の翼がついている。胴は少しでっぷりとしていて恰幅がよさげ。でも、あれは脂肪ではなく筋肉でできているのだろう。
肌は鱗で覆われており、硬そうだ。全身を鱗に覆われているものだと思い込んでいたが、背中や脚には鱗がびっしりだが、腹部は違うようだ。光沢から質感が読み取れる。
そんなドラゴンの姿はとてもとても美しいと思った。同時に畏怖もしたけれど。なんにせよ、人間が関わっていいような相手ではない。
ああ、この世にこんな存在がいるなんて。
遭遇するなり魔法を放った自分の判断は間違いがなかったのだろうと、私は私を褒めた。この空気に飲まれたら、おそらく魔法を使えない。
私は幻術を見せられているのだと自分に言い聞かせ、相手をマッチョさんだと思い込むことにする。
いや、このものすごい質量がありそうなドラゴンは、確実にマッチョさんなんだけど。
「ええ……そ、そりゃあ薄々は」
どこまではぐらかすことができたのかは謎だが、とりあえず無難な返答をし、にっこりしておいた。こんなことで怖がっていたら、最強の魔女の名が堕ちる。
よく考えたら、このドラゴンに致命傷を与えられたわけで、身体が怖がってしまうのは当然かもしれない。指摘されたら、そう言い返そう。
青いドラゴンは大きな頭を私に寄せた。頭部だけでも私の上半身程度の高さはありそうだ。顎も大きいので、大口を開けたらおそらく私を一飲みできる。さすがにしないと思うけど。
鼻息で私が着ているシャツがはためく。裾がめくれるからやめていただきたい。今はノーパンなんだから。
ですよねー、などと心の中で言ってはみるが、まだ納得できない。というか、認めたくない。
「え……マジ?」
かろうじて出た声は、存外に情けないものだった。
「なんだ、気づいていると思っていたぞ」
人語を操るその巨大な生物は、この世界では《ドラゴン》と呼んでいる存在だ。
声は聞き覚えがあるマッチョさんのもの。人型の時と比べたら声のボリュームが大きいけれど、低くて落ち着いていて、ちょっとぶっきらぼうな喋り方は、どう考えても彼である。
その大きな身体は深い青い色をしており、ミッドナイトブルーが私の知っている色の名前で一番近いもののように思える。煌めきが感じられる、夜空の色。
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肌は鱗で覆われており、硬そうだ。全身を鱗に覆われているものだと思い込んでいたが、背中や脚には鱗がびっしりだが、腹部は違うようだ。光沢から質感が読み取れる。
そんなドラゴンの姿はとてもとても美しいと思った。同時に畏怖もしたけれど。なんにせよ、人間が関わっていいような相手ではない。
ああ、この世にこんな存在がいるなんて。
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いや、このものすごい質量がありそうなドラゴンは、確実にマッチョさんなんだけど。
「ええ……そ、そりゃあ薄々は」
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よく考えたら、このドラゴンに致命傷を与えられたわけで、身体が怖がってしまうのは当然かもしれない。指摘されたら、そう言い返そう。
青いドラゴンは大きな頭を私に寄せた。頭部だけでも私の上半身程度の高さはありそうだ。顎も大きいので、大口を開けたらおそらく私を一飲みできる。さすがにしないと思うけど。
鼻息で私が着ているシャツがはためく。裾がめくれるからやめていただきたい。今はノーパンなんだから。
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