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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!

胃袋を掴まれたかもしれない 2

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 私はゲームとして知っている情報を付け足すことにする。

「彼女自身は媒体としてしか意味がないから、パートナーが必要になるのよ。強力な力を持っているのに不便よね。で、王太子さまはその力を必要としているはず。私を選ばなかったってことは、そういうことじゃないの?」
「特殊系の魔導師……その女、まっすぐで癖のない黒髪だったりするか? 魔法を使う時、普段は黒い瞳が金色に変わる、とか……」
「あら、よく知っているわね。その通りだけど、お知り合い?」

 私が返すと、マッチョさんは目を丸くして、勢いよく立ち上がった。

「え、あの、どうしたの?」
「その女――マリアンネ、だっけ。そいつは王都にいてはいけない奴だ」
「はい?」

 話が急展開していませんかね?
 目をパチクリさせてマッチョさんを見上げると、彼は私の隣に来て腕を引っ張り上げた。

「食事は終わりだ。山から出るのを手伝ってくれ」
「え、待って」

 私は自由な方の手でカップを取り、果汁を喉に流し込む。まだお腹はいっぱいになっていないが、病み上がりに満腹になると負担になる。ここはこれでよしとしよう。
 口元を軽く拭い、私はマッチョさんの顔を見る。彼は焦燥しているように見えた。

「――手伝ってもいいけど、今魔法は封じられているから大したことはできないわよ?」
「それならすぐに解除する。説明は移動しながら……と思ったが、貴女は瞬間移動の魔法は使えるのか?」
「瞬間移動は手紙程度の物だけね。生物はリスクが高くて」

 前に実験した時、ラットが真っ二つになってしまった。あれは申し訳ないことをしたと思う。
 その当時のことは、食事中にはスプラッタすぎるので忘れよう。

「高速移動なら私自身にも他人にも使えるわ」

 代案を出すと、マッチョさんは力強く頷いた。

「それはありがたい。貴女を乗せることはできても、俺の足では半日以上かかるからな」

 半日以上……? 充分早いですけど。

 王都からこの国境付近の岩山までは一般人の足でひと月以上、馬を使って半月。並みの魔導師の魔法で強化したら一週間。私くらいの高位の魔導師では三日かかる。一晩と言わなかったことが、すでにすごい。

 やっぱり、私よりも高位の魔導師?

 あれこれ考えている間に、私の華奢な身体はマッチョさんに横抱きにされていた。そして部屋の移動を開始。私が下されたのはベッドの上だった。

「……ん?」
「悪いな」

 私が状況を理解できずに首を傾げると、真っ先に謝られる。そして私の着ていたシャツが左右に引き裂かれた。まるで薄っぺらい紙がビリビリと真っ二つにされたかのような感じ。ボタンが弾け飛んだ。
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