【R-18】ザマァされた悪役令嬢ですが、腹癒せにドラゴン（ラスボス）退治に行ってきます！

腹癒せにドラゴン退治に行ってきます！

鈍いにも程があるだろうに １

　これでよく即死しなかったわね……さすがは最強の魔女と言われるだけあるわ……

　強烈な痛みで前世の記憶を思い出すくらいなら、即死したほうがよかったのでは――と私はちょっぴり自分の丈夫さを呪った。
　とはいえ、瀕死の重傷であるので、放っておけば確実に死ぬ。造血の魔法が効いているおかげで意識は保っていられるが、時間の問題だろう。

　まったく……くだらない人生だったわね。

　東方のドラゴン討伐に単身送り込まれ、私はそのドラゴンに返り討ちにされたところだ。私の腹にはドラゴンが生み出した巨大な氷柱がぶすりと刺さり、背後の岩に縫い付けるように貫いていた。結構グロいことになっている気がするので、細かい部分は見ないでおこう。
　ただ、この現状では回復魔法で傷を塞ぐことは可能だ。大怪我ではあるが即死級ではない。まだ治癒できるレベル。並みの魔導師は助からない傷であるはずなのだけれど。
　偉大な魔導師の血を引く名門侯爵家に生まれたために魔女令嬢などと呼ばれている私は、あらゆる魔術に精通し、使いこなせる稀有な存在だ。だから、こうして単身でのドラゴン討伐を押し付けられるわけで。

　だが、強烈な痛みから逃れるために回復をしようとした時に思い出してしまったのだ。
　この世界って、私が前世でめちゃくちゃやり込んだ乙女ゲーム《緋竜の姫君》の世界ではありませんかっ！

　そして、今私が対峙している巨躯のドラゴンは、そのゲームのラスボスである。超強いよ。

　ん？　どこが乙女ゲームだって？

　この《緋竜の姫君》は基本的には逆ハーレムの恋愛シミュレーションゲームなのだが、攻略対象と結ばれた後に東方のドラゴンが王国を攻めてきて、二人の愛の力でドラゴンを退けるというイベントが発生する。命がけでヒロインを守るヒーローにときめく、最高のエンディングなのだが――ここで突如アクションゲームになるので賛否両論である。

　――私はそこも好きだったけど。ってか、そもそもアクションゲームが好きだから、噂を聞いてこのゲームを手に取ったんだけども。

　その、ラスボスであるドラゴンが国に攻め入る前に、私は討伐しろと命じられて送られたのだった。当然、ヒーローは隣にいない。なんてこった。
　私にだって婚約者はいた。この国の王太子さま。だが、最強の魔女とも噂される私を前にビビったらしい。平民育ちでありながら、特殊な魔力を持つ少女に出会うなりあっさり鞍替えをしてしまった。