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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!
裏切りと内通者 1
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マリアンネを探すといってもあてはない。私は王都上空をふわりと飛びまわり、日が昇って動き出した街を眺めていた。
特にこれといって変わった様子もないか……
人々のとてものどかな日常が目に入っただけで、特記するようなことはない。
街の人々からも飛んでいる私を見て「ああ、いつもの偵察ね」と思ったらしかった。早起きの幼い子どもたちから「お仕事がんばってー」と手を振って応援されたあたり、国家を揺るがすような事態になっていることさえ感じられない。知る前と知った後で私の見方は変わったかもしれないが、人々の営みは変わらずに続いている。
王都に戻ってくるのって数日ぶりではあるけど、やっぱり平和よね。
街の人々に応援されてしまうくらいには私は目立っていたので、マリアンネ一味がなにかを企てているのであれば隠れるかもしれない。
しかし、私は別の可能性を考えてわざわざ目立つ行動をしているのだ。
さて、こんなもんでいいかな?
時を報せる鐘が鳴ってから次の鐘が鳴るまで飛んでみた。大きな事件もなければ、違和感もない。なんの変哲のない日常がそこにあるだけなことに、私は安堵する。
そろそろ一回戻ってもいいかしら。
町を飛び回ること自体は作戦というほど大げさなものではないのだが、私には考えがあった。
マリアンネ一味が私を捕らえて陵辱しようと考えているのであれば、私が王都に戻ってきているのだとわかったらどういう行動を起こすだろうか。ひょっとしたら、私を捕らえようと動き出すのではないか――そう考えたわけである。
あとはお昼あたりに街をうろついて、様子を伺おうかな。
私は王宮内にある魔導師たちが管理している厩舎のほうに飛ぶ。詰所に寄ってから一度帰宅しようかと思った――のだが。
「ヴァルデマール?」
赤みを帯びた茶色い髪は私がよく知っているものだ。彼は上空の私に気づいたらしく、見上げると手を振って、招くようなジェスチャーをした。
こっちに降りてこいってこと?
宮廷魔導師たちが寝起きしている宿舎の裏に隠れて立っていたヴァルデマールの元に、私はゆっくりと舞い降りる。
なんでこんな場所に? まさか、アーデルベルト様に何かあった?
ヴァルデマールを伝令役にしているので、アーデルベルトの身に何か起きた可能性はある。上空からは見えやすくても地上からは木々が遮ってよく見通しが悪い場所に呼びよせたのは、よくないことを知らせるためかもしれない。
私は身構える。
「なにか起きたの?」
彼の様子がおかしい。周囲をしきりに気にしている。
「そっちこそ、何か掴めたか?」
「ううん。まだ何も」
「そうか」
ヴァルデマールの口の端が上がる。変だと感じたときには抱きつかれ、後ろに回された手に錠がはめられた。
「え、なに、こんな冗談⁉︎」
魔力が吸われている。私の手にはめられたのは、さっきやっと解除したものと同じ効力を持つ封魔錠に違いない。
特にこれといって変わった様子もないか……
人々のとてものどかな日常が目に入っただけで、特記するようなことはない。
街の人々からも飛んでいる私を見て「ああ、いつもの偵察ね」と思ったらしかった。早起きの幼い子どもたちから「お仕事がんばってー」と手を振って応援されたあたり、国家を揺るがすような事態になっていることさえ感じられない。知る前と知った後で私の見方は変わったかもしれないが、人々の営みは変わらずに続いている。
王都に戻ってくるのって数日ぶりではあるけど、やっぱり平和よね。
街の人々に応援されてしまうくらいには私は目立っていたので、マリアンネ一味がなにかを企てているのであれば隠れるかもしれない。
しかし、私は別の可能性を考えてわざわざ目立つ行動をしているのだ。
さて、こんなもんでいいかな?
時を報せる鐘が鳴ってから次の鐘が鳴るまで飛んでみた。大きな事件もなければ、違和感もない。なんの変哲のない日常がそこにあるだけなことに、私は安堵する。
そろそろ一回戻ってもいいかしら。
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マリアンネ一味が私を捕らえて陵辱しようと考えているのであれば、私が王都に戻ってきているのだとわかったらどういう行動を起こすだろうか。ひょっとしたら、私を捕らえようと動き出すのではないか――そう考えたわけである。
あとはお昼あたりに街をうろついて、様子を伺おうかな。
私は王宮内にある魔導師たちが管理している厩舎のほうに飛ぶ。詰所に寄ってから一度帰宅しようかと思った――のだが。
「ヴァルデマール?」
赤みを帯びた茶色い髪は私がよく知っているものだ。彼は上空の私に気づいたらしく、見上げると手を振って、招くようなジェスチャーをした。
こっちに降りてこいってこと?
宮廷魔導師たちが寝起きしている宿舎の裏に隠れて立っていたヴァルデマールの元に、私はゆっくりと舞い降りる。
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「ううん。まだ何も」
「そうか」
ヴァルデマールの口の端が上がる。変だと感じたときには抱きつかれ、後ろに回された手に錠がはめられた。
「え、なに、こんな冗談⁉︎」
魔力が吸われている。私の手にはめられたのは、さっきやっと解除したものと同じ効力を持つ封魔錠に違いない。
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