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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!

二人きりの浴室 3

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「……あの。お身体に触ってもよろしいでしょうか?」

 アーデルベルトの身体を包むキラキラとした鱗が気になって、私は尋ねていた。告げてしまった後で、さすがに嫌がられるのではないかと考え直したが、彼は素直に私に右腕を差し出してくれる。

「構わないが、何か聞いているのか?」
「何も聞いておりませんけど、すごく綺麗なので」

 ただの興味である。意趣返しの意味合いもない。彼の色白の肌から急に現れる金色の鱗が幻想的で、魅入られただけの話だ。

「鱗を剥がされると痛むから、それだけはやめてくれ。なお、無理に剥がそうとした場合はお前を遠慮なく犯す」
「しませんって」

 アーデルベルトの目はマジだ。私は思わず苦笑した。

 この芸術品のような金の鱗を引っぺがして換金したら、相当な金額になりそうだ――などと考えていたことは黙っておこうと密かに誓う。

 浴槽を慎重に移動して彼に近づくと、差し出された右腕に触れた。傷つけないように優しく触れれば、それは人間の皮膚とは違って硬いことがわかる。ドラゴンになったゲルハルトさんの皮膚も同じような感触だった。

「アーデルベルトさまも、完全にドラゴンになることがあるのですか?」
「いや、今のところはない。こうして部分的に竜化の片鱗が現れている程度だ。そういえば、筋肉がつきやすくはなったな」
「なるほど……」

 確かゲルハルトさんは、王都にいるときはまだそれほど身体は大きくなかった、みたいな話をしていた気がする。つまり、竜化が進行すればするほど体格が大きく、筋肉質になっていく可能性は否定できない。
 私はアーデルベルトの身体をざっくり眺めて、そして距離をとった。
 着痩せして華奢な印象のアーデルベルト王太子であるが、筋肉のつき方はイメージよりもよい気がする。最低限は鍛えているのだろうが、公務の内容を思い出すに、こんなにしっかりとした筋肉が身につくようには考えられない。これは竜化の影響もあるのだろう。

「アーデルベルトさまは、竜化を抑えるためにゲルハルトさんに連絡を?」
「初めはそれが目的ではなかったんだが、顕著になってからは細かく相談している。入浴中は一人になれる貴重な時間だったから、この部屋からこっそりと、な」
「ああ、それでこの部屋なのですね」
「名目上は、一人の時間を作ることでストレスを減らせるからっていう理由にしているがな。城の構造上、ここは危険が少ないし、風呂場である以上、変なものを持ち込ませる可能性も減らせる。便利だろう?」
「そうですね」

 この部屋の念入りな魔法はアーデルベルトの特製なのだろう。よく考えられていると、素直に感心した。

 誰にも邪魔されない時間と場所は必要よね。この人の公務はとんでもなく激務だし。
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