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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!
ある意味では初恋の人 5
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やがて地上に出ると、そこは私にとって見知っている場所――王立魔導軍所属の魔導師たちの宿舎がある敷地内だった。陽が昇り始めたばかりの時間なので、まだひと気はない。
アーデルベルトは魔導師たちが管理している厩舎のほうに移動し、そこで馬から降りた。
「ほら、ルツィエ。お前はこっちだ」
のんびりする余裕もなく、私はヴァルデマールの腕の中からアーデルベルトの腕の中に戻された。しっかり横抱きにされて、当然のように逃げることは許されない。
ヴァルデマールも馬から降りると、周囲を警戒しながら歩き出す。
王宮内は終始無言。やはり特別な隠し扉や通路を使って、アーデルベルトの私室までたどり着いた。
「――ここまで来れば、もういいだろう」
アーデルベルトの言葉に、ヴァルデマールは一礼して部屋から出て行った。彼がこれからどこに行くのかは不明だが、とりあえずこれで二人きりである。
「――アーデルベルトさま、先ほどヴァルデマールから聞かされたのですが、私、狙われていたんですか?」
「ああ。オレが婚約破棄宣言をしたことで、今がチャンスと考えたのだろう。――まあ、それはオレの狙いどおりだったんだが」
そう答えながら降ろされた私は、勢いよく毛布を剥ぎ取られた。
「ちょっ⁉︎」
「風呂に入るのに邪魔だろう?」
「この手錠のほうがもっと邪魔です」
「そう言われても、外すわけにはいかないからな」
いつまで捕虜なんだろうかと思いつつ、私は膨れる。
「オレは朝風呂に入る習慣がある。支度はほとんどできているから、使うといい」
指で示された先には、浴室があった。一緒に移動して中を覗く。
タイル貼りの床、その奥にバスタブが置かれている。そこそこ広いバスタブは、一人で入るには充分すぎるくらいに大きい。すでに湯が張られているようで、湯気で煙っていた。
「身体を流すのに、手錠は邪魔でしかないんですが」
「そこはオレが手伝ってやるから、問題なかろう?」
「いや、問題アリアリだと思いますが」
私の指摘など気にかけない様子で、私はアーデルベルトによって問答無用でバスタブに沈められた。
アーデルベルトは魔導師たちが管理している厩舎のほうに移動し、そこで馬から降りた。
「ほら、ルツィエ。お前はこっちだ」
のんびりする余裕もなく、私はヴァルデマールの腕の中からアーデルベルトの腕の中に戻された。しっかり横抱きにされて、当然のように逃げることは許されない。
ヴァルデマールも馬から降りると、周囲を警戒しながら歩き出す。
王宮内は終始無言。やはり特別な隠し扉や通路を使って、アーデルベルトの私室までたどり着いた。
「――ここまで来れば、もういいだろう」
アーデルベルトの言葉に、ヴァルデマールは一礼して部屋から出て行った。彼がこれからどこに行くのかは不明だが、とりあえずこれで二人きりである。
「――アーデルベルトさま、先ほどヴァルデマールから聞かされたのですが、私、狙われていたんですか?」
「ああ。オレが婚約破棄宣言をしたことで、今がチャンスと考えたのだろう。――まあ、それはオレの狙いどおりだったんだが」
そう答えながら降ろされた私は、勢いよく毛布を剥ぎ取られた。
「ちょっ⁉︎」
「風呂に入るのに邪魔だろう?」
「この手錠のほうがもっと邪魔です」
「そう言われても、外すわけにはいかないからな」
いつまで捕虜なんだろうかと思いつつ、私は膨れる。
「オレは朝風呂に入る習慣がある。支度はほとんどできているから、使うといい」
指で示された先には、浴室があった。一緒に移動して中を覗く。
タイル貼りの床、その奥にバスタブが置かれている。そこそこ広いバスタブは、一人で入るには充分すぎるくらいに大きい。すでに湯が張られているようで、湯気で煙っていた。
「身体を流すのに、手錠は邪魔でしかないんですが」
「そこはオレが手伝ってやるから、問題なかろう?」
「いや、問題アリアリだと思いますが」
私の指摘など気にかけない様子で、私はアーデルベルトによって問答無用でバスタブに沈められた。
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