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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!

不満なので許しませんけど。 1

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 マッチョさん――改め、ゲルハルトさんが、まさか王弟だったとは。いや、まあ、王族の血筋なのかな、とは考えたりもしたけど。もうちょっと遠い親戚かなって予想していただけで。

 身体を起こした私は、驚きで目をパチクリさせながらアーデルベルトを見つめる。見つめられた彼は肩を小さくすくめた。

「ゲルハルト叔父は我が国の歴史の中でも指折りの魔導師だったそうだ。それだけの力を持っていたために次期王にと期待されていたんだが、彼は長子であるオレの父を推して退いた。異母弟で側室の息子だったからというのもあるんだろう。オレが産まれれば、無駄に権力争いをしたくはないと隠居してしまった。そして、今に至るわけだ」
「詳しいのね……」

 王太子と王弟というわりと近しい親戚とはいえ、ゲルハルトさんは隠居してしまった人である。それに、アーデルベルトの現在の地位を脅かしかねない存在だ。高く評価しているらしいところもちょっと気になる。

 まあ、ゲルハルトさんもアーデルベルトさまのことを高く評価している気がしたけど。

「それは個人的に交流があるからな。父上には内緒で手紙をやりとりしているんだ」
「え、内緒で?」

 わざわざ内緒だと告げるので私が繰り返すと、アーデルベルトは真面目な顔をした。公務に携わっているときの表情。

 ええっと、思わず突っ込んじゃったけど、あんまり関わらない方がよかったりするかしらね? 王家の秘密には正直ノータッチでいきたいんだけど……婚約者辞めたし。

「ああ。父上が国民に何か重要なことを隠していると気づいてしまったからな。それで、叔父に協力してもらうことにしたんだ」

 ああ、やっぱりそういう展開なのね。

 自分自身の発言にやれやれと思いつつ、私は気になったことを指摘する。

「でも、ゲルハルトさんはあの山から動けなかったんじゃないの?」

 ゲルハルトさんがあの岩山から出られるようになったのは、私が祠を壊したからだ。その祠にはかなり高位の魔導師が関与しているとしか思えない丁寧な封印の魔法が施されていたのを思い出す。

 私の指摘に、アーデルベルトは「なんだそのことか」という顔をした。つまり、ゲルハルトさんが封じられていたことを彼は知っている。

「知識を得るだけなら、どこにいようが連絡さえつけば問題ないさ。それに、自由になってもらうためにお前を派遣したんだ。――なのに、まさか婚約者を寝取られるとは……」

 苦虫を噛み潰したような様子でアーデルベルトが頭を抱えている。珍しい光景だ。
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