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魔導人形がうまれた場所
研究都市ギューフェオー
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研究都市ギューフェオー。プリムたちがこの町に入ったのはフェオウルを発った三日後のお昼だった。昨日のうちにギューフェオーに入る予定だったのだが、ウードを回収して以来プリムの体調があまり良くなかったために行程を少し延ばしたのだ。
その日の夜、宿屋。
ギューフェオーは各地から訪れる研究者が多いので、宿屋の数も多い。長期滞在ができるような施設もあちこちにある。プリムたちはその中でも最も協会から遠いところを選んだ。
「明日は依頼主さんのところに行って、さっさと仕事を片付けてここに戻るわ。だからあなたはここにいて」
眠る前に長い髪を梳いていたプリムは明日の予定についての確認をする。
「なんでついていっちゃいけないんだ?」
プリムの説明にリーフが首を傾げる。てっきり一緒に行動するとばかり思っていたので不思議に感じたのだ。
「エミリーの中にあなたの魂があったら、解除呪文を使ったときに光っちゃうでしょう? 魔術の効果の特性上、光は消せないからね」
「あ、そうだな」
意外としっかり考えているものだとリーフは感心する。ウィルドラドにいたときよりもしっかりと自分で物事を考え判断しているプリムを見て、リーフは旅に出たことは間違いではなかったと感じていた。頼りがいのある相棒に成長しているのがわかり、ちょっとだけ嬉しく思っていた。
(もしも人間に戻ることができなかったとしても、これはこれでいいかもしれない)
櫛を鏡台に置くと、プリムは寝台に移動してリーフを見つめる。
「ねえ、ふと思ったんだけど」
「ん?」
「あたしが魂のかけら集めをしなくてもさ、誰かがあなたの魂のかけらを持つ人形に対して解除呪文を使ったら、自然と魂が肉体に戻ってくるような気がするんだけど」
「理論的には正しいな」
プリムの意見にリーフは賛同する。リーフも一度は考えたことだった。
「魂のかけらが付着している人形に何らかの異変が起きたなら、それなりの処分を受けると思うの。解除呪文を使う事態もあるでしょう。あれから十日以上経ったけど、あなたの身体に変わったことはないの?」
「それが、プリムが回収したもの以外に魂が戻ってきているようには思えないんだ。たまに簡単な魔法陣を使って試しているんだが、これといった変化はないようだし」
残念そうな様子でリーフが答える。プリムも浮かない顔をする。
「そっか……なかなか大変なものね。いつ終わるのかもわからないし」
「そうだな」
本を枕の脇に置くとプリムの寝台のそばに立つ。
「ちゃんと休んで、回復しておけよ。解除呪文を使って倒れても、明日はお前の隣にいないんだから」
言いながらリーフはプリムの頭をなでる。
「わかってるわ。――って、なれなれしく触らないでよ」
顔を真っ赤にしながらリーフの手を払いのける。
「嫌いじゃないくせに。素直じゃないな」
払いのけられてもまたプリムに触れる。リーフが面白がってやっているとしか思えないプリムは膨れる。
「素直とかそういう問題じゃないわ。論点をずらさないで」
「うーん、少なくとも俺は心地よいんだが――人形だから、かな……」
リーフは寂しげに笑う。
「そんなこと言わないでよ! 少なくともあたしはあなたを人形だなんて思ってないよ? この旅の間、一度だってそう考えたことはないんだから!」
戸惑うような声でプリムは言う。どう言えばこの気持ちが伝わるのかわからない。うまく伝えることのできないもどかしさにプリムはずっと苦しんでいた。
「だったら、逃げるなよ」
リーフはプリムを引き寄せて抱きしめる。
「お前が望まないことはしないから」
優しいささやきに、プリムは身体から力が抜けるのを感じる。こうして抱きしめられると、安心することがよくわかっていたから。身を任せても大丈夫なのだとどこかで思う。
(でもね、その台詞は嬉しいけど、あたしには同時に不安にさせられる言葉なんだよ、リーフ君……)
温かい、居心地の良い腕の中でプリムは眠りに落ちた。
その日の夜、宿屋。
ギューフェオーは各地から訪れる研究者が多いので、宿屋の数も多い。長期滞在ができるような施設もあちこちにある。プリムたちはその中でも最も協会から遠いところを選んだ。
「明日は依頼主さんのところに行って、さっさと仕事を片付けてここに戻るわ。だからあなたはここにいて」
眠る前に長い髪を梳いていたプリムは明日の予定についての確認をする。
「なんでついていっちゃいけないんだ?」
プリムの説明にリーフが首を傾げる。てっきり一緒に行動するとばかり思っていたので不思議に感じたのだ。
「エミリーの中にあなたの魂があったら、解除呪文を使ったときに光っちゃうでしょう? 魔術の効果の特性上、光は消せないからね」
「あ、そうだな」
意外としっかり考えているものだとリーフは感心する。ウィルドラドにいたときよりもしっかりと自分で物事を考え判断しているプリムを見て、リーフは旅に出たことは間違いではなかったと感じていた。頼りがいのある相棒に成長しているのがわかり、ちょっとだけ嬉しく思っていた。
(もしも人間に戻ることができなかったとしても、これはこれでいいかもしれない)
櫛を鏡台に置くと、プリムは寝台に移動してリーフを見つめる。
「ねえ、ふと思ったんだけど」
「ん?」
「あたしが魂のかけら集めをしなくてもさ、誰かがあなたの魂のかけらを持つ人形に対して解除呪文を使ったら、自然と魂が肉体に戻ってくるような気がするんだけど」
「理論的には正しいな」
プリムの意見にリーフは賛同する。リーフも一度は考えたことだった。
「魂のかけらが付着している人形に何らかの異変が起きたなら、それなりの処分を受けると思うの。解除呪文を使う事態もあるでしょう。あれから十日以上経ったけど、あなたの身体に変わったことはないの?」
「それが、プリムが回収したもの以外に魂が戻ってきているようには思えないんだ。たまに簡単な魔法陣を使って試しているんだが、これといった変化はないようだし」
残念そうな様子でリーフが答える。プリムも浮かない顔をする。
「そっか……なかなか大変なものね。いつ終わるのかもわからないし」
「そうだな」
本を枕の脇に置くとプリムの寝台のそばに立つ。
「ちゃんと休んで、回復しておけよ。解除呪文を使って倒れても、明日はお前の隣にいないんだから」
言いながらリーフはプリムの頭をなでる。
「わかってるわ。――って、なれなれしく触らないでよ」
顔を真っ赤にしながらリーフの手を払いのける。
「嫌いじゃないくせに。素直じゃないな」
払いのけられてもまたプリムに触れる。リーフが面白がってやっているとしか思えないプリムは膨れる。
「素直とかそういう問題じゃないわ。論点をずらさないで」
「うーん、少なくとも俺は心地よいんだが――人形だから、かな……」
リーフは寂しげに笑う。
「そんなこと言わないでよ! 少なくともあたしはあなたを人形だなんて思ってないよ? この旅の間、一度だってそう考えたことはないんだから!」
戸惑うような声でプリムは言う。どう言えばこの気持ちが伝わるのかわからない。うまく伝えることのできないもどかしさにプリムはずっと苦しんでいた。
「だったら、逃げるなよ」
リーフはプリムを引き寄せて抱きしめる。
「お前が望まないことはしないから」
優しいささやきに、プリムは身体から力が抜けるのを感じる。こうして抱きしめられると、安心することがよくわかっていたから。身を任せても大丈夫なのだとどこかで思う。
(でもね、その台詞は嬉しいけど、あたしには同時に不安にさせられる言葉なんだよ、リーフ君……)
温かい、居心地の良い腕の中でプリムは眠りに落ちた。
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