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さあ、婚約破棄から始めましょう!
ここは湯治場 2
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「そういえば、国境の大河で魚介類が取れにくくなった話や、そこで獲れた魚を食べて病を患った話を耳にしたことがありますわ」
ヴァランティーヌには好んで食べている貝があった。それは大河でとれる希少な貝で、ヴァランティーヌの誕生日付近が旬であることをいいことに毎年取り寄せてもらっていたのだが、この数年食していない。
父に理由を聞いたら病気になるといけないからとの話だった。その頃にはゴーティエ王子の婚約者になることがほぼ決まっていたので、体を大事にするのは当然だからと諦めたのだけど。
「ん? その話は今必要か?」
どうもゴーティエ王子にはピンと来なかったようだ。
あ、これは私としての知識があるからの発想なのね。公害の概念がこの世界にはまだないってことか。
私はゴーティエ王子の言葉に大きく頷いた。
「もしかしたら、父は工業化と大河でとれた魚介類の摂取で起こる病気の間に何らかの相関関係を導き出していたのかもしれません。我が国は農耕と酪農によって支えられておりますゆえ、やみくもに工業化を進めれば、たちまちに汚染されて食糧難に陥るのではないかと危惧したのでしょう」
事実はわからないものの、父親を下げないのであれば無難な推測だろう。
現状維持でやり過ごそうとなさるようなお父さまではないもの。なにか理由があって進められないんだわ。
本来であれば王弟派に属するグールドン家が自分の一人娘を王子に差し出しているのだ。事なかれ主義者ではなかろう。
私の説明に、ゴーティエ王子は目をまんまるにした。
「驚いた。その視点はなかったな」
「北も東も、この国よりも工業化が進んでいるのでしょう? 私は政治には疎いですが、国王陛下も私の父も、それぞれの国の様子を伺っているのかもしれません。近代化は急務ではあるのでしょうけれど、利点と問題点の洗い出しも慎重になさる必要はあるかと存じます」
「それはそうだな……ギーセルベルトを通じて確認しておこう」
少しでも国が滅ぶリスクを回避したいのなら、この話題は必要な部分だろう。内乱を防ぐことができても、隣国との戦争が待ち受けているならそれにも対処は必要だ。ゴーティエ王子に状況が伝わったようで私は嬉しい。
しかし、それはそれとして。地質調査の知識も必要になるのかしら。貴重な金属……うーん。
「政治の話はここまでとして」
今後のことに意識を向けていた私の身体にゴーティエ王子の手が触れた。
「ひゃっ」
「ここは風呂だ。疲労回復にも効く湯だからな。身を清めて温まるぞ」
そうだ。身を清めるためにお風呂に来たんだもんね。
気持ちを切り替えて、私は布を構えた。
「そうですね。お手伝いいたしますわ、ゴーティエさま」
ヴァランティーヌには好んで食べている貝があった。それは大河でとれる希少な貝で、ヴァランティーヌの誕生日付近が旬であることをいいことに毎年取り寄せてもらっていたのだが、この数年食していない。
父に理由を聞いたら病気になるといけないからとの話だった。その頃にはゴーティエ王子の婚約者になることがほぼ決まっていたので、体を大事にするのは当然だからと諦めたのだけど。
「ん? その話は今必要か?」
どうもゴーティエ王子にはピンと来なかったようだ。
あ、これは私としての知識があるからの発想なのね。公害の概念がこの世界にはまだないってことか。
私はゴーティエ王子の言葉に大きく頷いた。
「もしかしたら、父は工業化と大河でとれた魚介類の摂取で起こる病気の間に何らかの相関関係を導き出していたのかもしれません。我が国は農耕と酪農によって支えられておりますゆえ、やみくもに工業化を進めれば、たちまちに汚染されて食糧難に陥るのではないかと危惧したのでしょう」
事実はわからないものの、父親を下げないのであれば無難な推測だろう。
現状維持でやり過ごそうとなさるようなお父さまではないもの。なにか理由があって進められないんだわ。
本来であれば王弟派に属するグールドン家が自分の一人娘を王子に差し出しているのだ。事なかれ主義者ではなかろう。
私の説明に、ゴーティエ王子は目をまんまるにした。
「驚いた。その視点はなかったな」
「北も東も、この国よりも工業化が進んでいるのでしょう? 私は政治には疎いですが、国王陛下も私の父も、それぞれの国の様子を伺っているのかもしれません。近代化は急務ではあるのでしょうけれど、利点と問題点の洗い出しも慎重になさる必要はあるかと存じます」
「それはそうだな……ギーセルベルトを通じて確認しておこう」
少しでも国が滅ぶリスクを回避したいのなら、この話題は必要な部分だろう。内乱を防ぐことができても、隣国との戦争が待ち受けているならそれにも対処は必要だ。ゴーティエ王子に状況が伝わったようで私は嬉しい。
しかし、それはそれとして。地質調査の知識も必要になるのかしら。貴重な金属……うーん。
「政治の話はここまでとして」
今後のことに意識を向けていた私の身体にゴーティエ王子の手が触れた。
「ひゃっ」
「ここは風呂だ。疲労回復にも効く湯だからな。身を清めて温まるぞ」
そうだ。身を清めるためにお風呂に来たんだもんね。
気持ちを切り替えて、私は布を構えた。
「そうですね。お手伝いいたしますわ、ゴーティエさま」
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