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さあ、婚約破棄から始めましょう!
起死回生の一手 2
しおりを挟む「そのはずなのだけど、ソフィエット嬢の望む未来でもなければ、ゴーティエ王子の願う未来ではなかった。――ゴーティエ王子はヴァランティーヌを心の底から愛していた。その傷を癒すことに努めたソフィエット嬢ではあったのだけど……やがて悟ったの。自分では殿下を支えられない、と。得意の薬学知識を使って科学的なアプローチもしたのだけど、それがかえって民の不信感を煽るかたちになって。隣国に攻められる隙を作ってしまい、やがてこの国は滅ぶ――」
「そんな……」
ゲームが完結したそのあとに、ソフィエットは幸せを得られないだなんて。
エリーの話を聞いても私はにわかには納得できなかった。このゲーム世界はソフィエットが誰かと結ばれて幸せになる物語からなっているのだから。
だが、アロルドとエルベルが口を挟まないことが証左となりえた。アロルドは悔しそうに口を閉ざし、エルベルは気まずそうな顔をしている。どちらのエンドもゴーティエ王子と対峙し倒すシーンがあるはずであるが、その後も続く物語を経験済みなのだろう。
「この世界はおそらく、国が滅ぶようにできているわ。その因果を変えることは、今のところできない。気付いた側の主要人物たちはみな病み始めているからね。不用意にアプローチして心を壊すわけにはいかないからと、気づいていない者たちとは距離を取っているの」
「ソフィエット嬢は? 彼女は気づいているの?」
私がエリーに尋ねると、彼は首を横に振った。
「なんとも言えないけれど、彼女の動きはこれまでのルートと大きく変わっているようには思えないわね。あたしに助言を求めるのも、すべて記憶にあるとおりだし」
「むむ……」
なんとも言えない、か……。
大した調査はできなかったものの、自力で調べられた限りでは私もエリーと同意見だ。
ソフィエットの行動は私の知るゲームでの言動に沿っている。助言を与える役割を持ったエリーの立場から見ても違和感がないのであれば、今のところゲームから逸脱はしていないのだろう。
となると、彼女は知らないままシナリオに沿った行動をしているのかしら? それとも、知っているからこそあえてシナリオに沿って行動しているのかしら?
「とにかく、これまでの流れを変えるために、あたしがゴーティエ殿下の身代わりとなって行動しましょう。このまま全員が病んでしまったら、永遠に続く国獲りの物語に終止符が打たれない。それは美しくないじゃない。ここが、あたしというバグの有効活用の場というものよ」
「貴様に利点があるとは思えんな」
ゴーティエ王子が鼻で笑い、エリーの正面に立つなり彼の胸ぐらを掴んだ。
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