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さあ、婚約破棄から始めましょう!
貴女は誰だ? 1
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「急にここを訪れることにした件について察するところもあっただろうが……いよいよロドリク様が動き出した。ティエリ公爵とカミーユも向こうにつくらしい」
そこで大きくため息をつく。
ゴーティエ王子の衝撃的な発言にもかかわらず、アロルドとエルベルはそれぞれ目配せをしただけで落ち着いている。
「それは……ゴーティエさまと敵対するということでしょうか?」
王弟ロドリクとゴーティエ王子の弟カミーユ、王家の血を引くティエリ公爵が手を結んでいるという報告は、ゲーム本編ではなかった。それぞれにそれぞれの理由があってゴーティエ王子と敵対する展開はあれど、共闘する話はなかったはずだ。
「ああ、そうだな」
ゴーティエ王子は頷いた。これはよからぬ展開だ。
想定外の事態に、ゲーム攻略知識を呼び出そうと記憶を巡っているとエルベルが挙手した。そのまま言葉を続ける。
「では、グールドン家はどちらにつくのでしょうね?」
「え?」
ウチ?
グールドン家の名を出されて、私は驚いた。なにを言い出したのだ。
思考を中断してエルベルを見やる。彼はきょとんとしていた。
「不思議そうにしていらっしゃいますが、元々、宰相殿は王弟派でしょうに」
「かつてはそうだったかもしれませんけれど、ゴーティエさまと婚約が決まったのですから」
「なにを。政略結婚でしょう。人質としての立場をお忘れですか?」
「私に人質としての価値がなくなったかのような発言はどうかと思いますわ」
グールドン家は確かに王弟派なのだ。ヴァランティーヌの父は現国王にいい顔をしているものの、祖母や叔父らは王弟派だったりする。宰相として国の発展に尽くすこと、王に逆らわないことを示すために、娘である私をゴーティエ王子の幼馴染にして忠義を誓っていたはずだ。
私が返すと、エルベルは薄く笑った。見た者をぞくりとさせる嫌な笑み。
「価値、ねえ」
「エルベル、これ以上の発言は侮辱と見做すぞ」
ゴーティエ王子が告げれば、エルベルは両手を小さく挙げた。
「ああ、それは失礼いたしました。でも、気にならないんですか、殿下は?」
「ヴァランティーヌをあの家に残していたら、いずれ処分される。ならばオレの手元に置いておくほうがいい」
「死にゆく様を見届けるために?」
「今度は死なせん」
はっきりと宣言して、ゴーティエ王子は私の腰を引き寄せた。
今度は……。ゴーティエさまは、私が死ぬ運命であることを知っているの?
「そうおっしゃいますが、もう彼女は死んでいるではありませんか」
エルベルの発言に、場が凍りついた。
私の腰にまわっていたゴーティエ王子の手が震える。
そこで大きくため息をつく。
ゴーティエ王子の衝撃的な発言にもかかわらず、アロルドとエルベルはそれぞれ目配せをしただけで落ち着いている。
「それは……ゴーティエさまと敵対するということでしょうか?」
王弟ロドリクとゴーティエ王子の弟カミーユ、王家の血を引くティエリ公爵が手を結んでいるという報告は、ゲーム本編ではなかった。それぞれにそれぞれの理由があってゴーティエ王子と敵対する展開はあれど、共闘する話はなかったはずだ。
「ああ、そうだな」
ゴーティエ王子は頷いた。これはよからぬ展開だ。
想定外の事態に、ゲーム攻略知識を呼び出そうと記憶を巡っているとエルベルが挙手した。そのまま言葉を続ける。
「では、グールドン家はどちらにつくのでしょうね?」
「え?」
ウチ?
グールドン家の名を出されて、私は驚いた。なにを言い出したのだ。
思考を中断してエルベルを見やる。彼はきょとんとしていた。
「不思議そうにしていらっしゃいますが、元々、宰相殿は王弟派でしょうに」
「かつてはそうだったかもしれませんけれど、ゴーティエさまと婚約が決まったのですから」
「なにを。政略結婚でしょう。人質としての立場をお忘れですか?」
「私に人質としての価値がなくなったかのような発言はどうかと思いますわ」
グールドン家は確かに王弟派なのだ。ヴァランティーヌの父は現国王にいい顔をしているものの、祖母や叔父らは王弟派だったりする。宰相として国の発展に尽くすこと、王に逆らわないことを示すために、娘である私をゴーティエ王子の幼馴染にして忠義を誓っていたはずだ。
私が返すと、エルベルは薄く笑った。見た者をぞくりとさせる嫌な笑み。
「価値、ねえ」
「エルベル、これ以上の発言は侮辱と見做すぞ」
ゴーティエ王子が告げれば、エルベルは両手を小さく挙げた。
「ああ、それは失礼いたしました。でも、気にならないんですか、殿下は?」
「ヴァランティーヌをあの家に残していたら、いずれ処分される。ならばオレの手元に置いておくほうがいい」
「死にゆく様を見届けるために?」
「今度は死なせん」
はっきりと宣言して、ゴーティエ王子は私の腰を引き寄せた。
今度は……。ゴーティエさまは、私が死ぬ運命であることを知っているの?
「そうおっしゃいますが、もう彼女は死んでいるではありませんか」
エルベルの発言に、場が凍りついた。
私の腰にまわっていたゴーティエ王子の手が震える。
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