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さあ、婚約破棄から始めましょう!

主要人物たちの思惑 1

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 目が覚めたとき、自分がいる場所が見知らぬ部屋で驚いた。
 だが、心地よいふかふかのベッドで寝かされていたことと、左手首に鎖がつけられていたことから、自分がゴーティエ王子と一緒に旅行に出ていたことを思い出す。

 なんで私だけなの?

 この部屋には誰もいないらしい。気配はない。
 部屋の隅におかれたテーブルの上にランタンが置いてあって、部屋を照らしている。光源はこのランタンだけで、外からの明かりはない。日は暮れているということだろう。

 ゴーティエさまはどこ?

 心細くなって、私はベッドからおりた。
 鎖はドアの外に出られるほど長くはなかったが、ドアに耳を当てるには充分な長さだった。
 音を立てないようにドアに耳をくっつける。木製のドアはひんやりしていた。

 ううーん、誰もいないのかしら?

 私の安全のために騎士が外に立っているかもしれないが、とくにこれといった物音はしない。
 いきなりひとりぼっちにされるなんて思っていなかった。なんとなく、ゴーティエ王子がずっと私のそばにくっついて監視し続けるのだとばかり思い込んでいたのだ。

 ま、まあ、この旅行自体が邪魔してきそうな人間たちの目をあざむくことを目的としているだろうから、信頼できる少数の人たちと別室で会議中なのかもしれないけれど……。

 馬車の中でこれでもかとばかりに愛された私は疲れきって眠ってしまったらしかった。それはうっすらと覚えている。
 意識があった間は目的地までまっすぐに進んでいたように感じていたが、ここがその目的地なのかどうかは私が見知っている土地ではないのでわからない。

「……ゴーティエさま」

 逃げられないようにしてくるあたりは実に彼らしい。ただ、長時間離れるのであれば置き手紙くらいありそうなのに、それが見当たらないのが気になった。

 胸騒ぎがする……。

 できるだけ音を立てないようにベッドに戻り、周辺に手紙か鍵が落ちていないか目を凝らして確認するが、目的のものは見つからなかった。

 目が覚めてからもそれなりに時間が経っているのに、なんで誰も様子を見にこないんだろう……。なにか急ぎの用事があってここを離れて、そのまま戻らないってこと?

 前世の記憶を思い出そうと試みる。こういう場所でイベントがなかったか。ヴァランティーヌとゴーティエ王子が何者かから逃げるイベントはなかっただろうか。

 ざわざわする。何かが起こっているんじゃないか、危機が迫っているのではなかろうか。
 冷や汗が流れる。呼吸が浅くなる。

 怖い。怖いよ。誰か、状況を――

 願っていると、ドアが強めに叩かれた。
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