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さあ、婚約破棄から始めましょう!
思惑どおりにならない 4
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「そういう事情なので、ソフィエット嬢と縁ができたついでにアロルドがソフィエットと結婚しろ」
「待て、いきなり話が飛んだぞ」
うん、飛んだわね。
私が別のことを考えていたばかりに聞き逃したというわけではなさそうだ。焦るアロルドに同意する。
「なんだ、縁談の話はアロルドにはないだろう?」
ゴーティエ王子が不満げに問う。ここにアロルドを呼んだのは、つまりはソフィエットをアロルドに押し付けようと考えたからということか。
「いや、確かに婚約者はいないし、恋人すらいないが、俺にだって好みはあるし、家の事情だってあるんだ。勝手なことを言うな」
「オレの命令だ。それ以外に理由など必要ないだろ。ノートルベール伯爵家は家柄としてかなり良いぞ。エルヴェ侯爵家との釣り合いも悪くはないと思うんだが」
確かに家柄は悪くはない。なんせ、王太子妃に選ばれる程度なのだから。
アロルドはむすっとした。
「生け贄にするつもりか」
「愛するヴァランティーヌを守るためだ。犠牲になれ」
ゴーティエ王子の意志は揺るがない。本気になれば、こうして直接に伺いを立てずとも事を進めることができたはずだ。それをしなかったということは、ゴーティエ王子にはアロルドの友人としての情もあるのだろう。
アロルドは額に手を当てて悩む表情をした。
「君の気持ちはわからなくはないんだが、さすがにいきなりすぎて困る。前向きに検討するから考えさせてくれ」
「ソフィエット嬢にふさわしい相手が他にいるのであれば、そっちに紹介するのも充分にアリだ。とにかく、ソフィエット嬢には申し訳ないが、オレとは関係のないところで幸せになってもらわねば困る」
「ふさわしい相手……ああ、ソフィエット嬢に気があるやつなら、心当たりがあるぞ?」
おや、意外な方向に話が進みそう?
アロルドがソフィエット嬢との結婚を即決しない理由が気にはなるが、ほかの相手というのも興味が湧いた。
よく考えてみたら、ソフィエットの結婚相手の候補ってゴーティエさまやアロルドさま以外にあと五人はいるのよね……。
「へえ。それは誰だ?」
ゴーティエ王子も興味が湧いたようだ。促すとアロルドが喋り出す。
「ユペール伯爵家嫡男のエルベルだ。騎士としても腕がいいが、頭の回転が速いやつで、薬学令嬢と名高いソフィエット嬢に興味を示している。エルベルとソフィエット嬢をくっつける場を設けるなら、やってもいいぜ」
エルベル・ユーペル……ああ、あの人か。
私はその名の人物を思い浮かべる。
黒くて真っ直ぐなクセのない髪を持つ、眼鏡男子である。クール爽やか系で、むさい騎士の連中に混ざっていると花が咲いているような印象になった。
確か、ゲームでもソフィエットの攻略対象の一人だったわよね……。
前世の記憶もひょっこり出てきて現在と混ざり合う。意識を保っていないと、ヴァランティーヌとしての記憶が書き換わってしまいそうだ。
「ならば、エルベルとソフィエット嬢の相性を見るためにパーティーでも開くか。騎士団との交流や息抜きという名目ならば、自然だろう。アロルド、手配は頼む」
「ああ、了解」
ゴーティエ王子は半ば押しつけるようにアロルドに提案すると、立ち上がって私の手を引いた。
「はい?」
話が済んだら帰るだけですよねと確認するために私が見上げると、ゴーティエ王子はとてもにこやかな顔をしていた。
「ヴァランティーヌはオレの部屋だ。話がある」
「……はい」
眩しすぎる笑顔とは裏腹に、あまりよろしくない事態が待っている気がして、私は身構えたのだった。
「待て、いきなり話が飛んだぞ」
うん、飛んだわね。
私が別のことを考えていたばかりに聞き逃したというわけではなさそうだ。焦るアロルドに同意する。
「なんだ、縁談の話はアロルドにはないだろう?」
ゴーティエ王子が不満げに問う。ここにアロルドを呼んだのは、つまりはソフィエットをアロルドに押し付けようと考えたからということか。
「いや、確かに婚約者はいないし、恋人すらいないが、俺にだって好みはあるし、家の事情だってあるんだ。勝手なことを言うな」
「オレの命令だ。それ以外に理由など必要ないだろ。ノートルベール伯爵家は家柄としてかなり良いぞ。エルヴェ侯爵家との釣り合いも悪くはないと思うんだが」
確かに家柄は悪くはない。なんせ、王太子妃に選ばれる程度なのだから。
アロルドはむすっとした。
「生け贄にするつもりか」
「愛するヴァランティーヌを守るためだ。犠牲になれ」
ゴーティエ王子の意志は揺るがない。本気になれば、こうして直接に伺いを立てずとも事を進めることができたはずだ。それをしなかったということは、ゴーティエ王子にはアロルドの友人としての情もあるのだろう。
アロルドは額に手を当てて悩む表情をした。
「君の気持ちはわからなくはないんだが、さすがにいきなりすぎて困る。前向きに検討するから考えさせてくれ」
「ソフィエット嬢にふさわしい相手が他にいるのであれば、そっちに紹介するのも充分にアリだ。とにかく、ソフィエット嬢には申し訳ないが、オレとは関係のないところで幸せになってもらわねば困る」
「ふさわしい相手……ああ、ソフィエット嬢に気があるやつなら、心当たりがあるぞ?」
おや、意外な方向に話が進みそう?
アロルドがソフィエット嬢との結婚を即決しない理由が気にはなるが、ほかの相手というのも興味が湧いた。
よく考えてみたら、ソフィエットの結婚相手の候補ってゴーティエさまやアロルドさま以外にあと五人はいるのよね……。
「へえ。それは誰だ?」
ゴーティエ王子も興味が湧いたようだ。促すとアロルドが喋り出す。
「ユペール伯爵家嫡男のエルベルだ。騎士としても腕がいいが、頭の回転が速いやつで、薬学令嬢と名高いソフィエット嬢に興味を示している。エルベルとソフィエット嬢をくっつける場を設けるなら、やってもいいぜ」
エルベル・ユーペル……ああ、あの人か。
私はその名の人物を思い浮かべる。
黒くて真っ直ぐなクセのない髪を持つ、眼鏡男子である。クール爽やか系で、むさい騎士の連中に混ざっていると花が咲いているような印象になった。
確か、ゲームでもソフィエットの攻略対象の一人だったわよね……。
前世の記憶もひょっこり出てきて現在と混ざり合う。意識を保っていないと、ヴァランティーヌとしての記憶が書き換わってしまいそうだ。
「ならば、エルベルとソフィエット嬢の相性を見るためにパーティーでも開くか。騎士団との交流や息抜きという名目ならば、自然だろう。アロルド、手配は頼む」
「ああ、了解」
ゴーティエ王子は半ば押しつけるようにアロルドに提案すると、立ち上がって私の手を引いた。
「はい?」
話が済んだら帰るだけですよねと確認するために私が見上げると、ゴーティエ王子はとてもにこやかな顔をしていた。
「ヴァランティーヌはオレの部屋だ。話がある」
「……はい」
眩しすぎる笑顔とは裏腹に、あまりよろしくない事態が待っている気がして、私は身構えたのだった。
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