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さあ、婚約破棄から始めましょう!

それならこれでどうだッ! 4

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 座席に横たわらせられると、扉が閉められた。カーテンもきっちり閉められて、外からは中の様子が見えない。
 ゴーティエ王子と二人きり。

「ゴーティエ王子……?」

 すぐに出発するのかと思ったのに、馬車は動き出さない。その代わりに、ゴーティエ王子は私の上に覆いかぶさった。
 私を見つめるゴーティエ王子の瞳からは心の揺れを感じ取れる。迷っているか怯えているか、そんな雰囲気。彼の弱さが見え隠れしている。

「どうしてあんな迂闊なことをした? 貴女は充分に魅力的な女性だ。貴女の美貌があれば、男など簡単に誘惑できるだろう――オレが狂わされているくらいなんだから」

 そう問いかけて、私の柔らかなストロベリーブロンドをひと房持ち上げて恭しく唇を落とす。

「わ、私は――」
「オレとの婚約の解消を目論むために、アロルドと駆け落ちでもするつもりだったか?」
「えっ」

 ゴーティエ王子の目が鋭く光った。
 私はその目の恐ろしさに言葉を詰まらせる。

「アロルドは王立騎士団の筆頭騎士だ。その肩書きに恥じない能力がある。一緒に逃げるなら好都合だろうな」
「な、何をおっしゃっているのです? 私はただ――あっ……」

 露出していた首元をねっとりと舐められた。身体がゾクゾクして言葉が続けられない。アロルドの前でした官能的な口づけの余波が身体に残っているのだ。

「熱を出させるほど抱き潰してしまったことは申し訳ないと思っていたが、貴女がほかの男を誘惑するなら話は別だ。オレに抱かれて、ほかの男も試したくなったか? どんなふうに触れてくるのか、気になってしまったか?」

 散歩用のドレスの上から胸をやわやわと揉まれた。私への怒りをぶつけるためではなく、官能を引き出すためにそうしているのがわかる手つきだ。
 ああ、だめ……身体が思い出してしまう……
 ヘソの下あたりが疼く。胸の先が硬くなるのもわかった。

「やっ……そ、そんなことは微塵も考えておりませんわ」

 イヤイヤと首を横に振るが、ゴーティエ王子は行為をやめてはくれない。熱が内部でくすぶってくる。

「それに、女性が来るとわかっているのに、なんだ、あの格好は。普段どおりにしているにもほどがあるぞ。アロルドにきつく言っておかないといけないな」

 確かに、女性が視察に来るとわかっていながら上半身裸で筋肉を晒しているのはちょっと問題かもしれない。

「ああ、それは同感です……」

 ゲーム内では主人公のソフィエットが騎士団の詰所を唐突に訪ねるので、そのシーンは筋肉祭りの絵面になったわけだが、今日の私の訪問は公式のものだ。体調不良でスケジュールが変更になったが、予め伝えてあったはずである。少しは配慮されてもいいかもしれない。

「貴女は男性の身体に興味があるようだな。じっと胸や腕を見ていた」
「い、いつから私をご覧になっていたのです……?」

 私の息は甘く変わっている。手も足も自由なのだから、ゴーティエ王子を払いのけることはできるはずなのに、そうできない。

「アロルドに案内されて、椅子に腰を下ろしたあたりから、だったか」

 かなり最初から私は見られていたらしい。ゴーティエ王子は暇人ではないから、仕事をどうにか処理してわざわざ私を追ってきたのだろう。

「声をかけてくださったらよかったのに……」
「貴女がどのように視察をするのか、知っておきたいと思ったからな。――アロルドはオレが来たのを初めから知っていたぞ」
「……初めから?」

 だとしたら、アロルドはゴーティエ王子をけしかけるために私に触れたのではなかろうか――そう考えて冷静に思いかえそうとしたとき、彼の手が直接私の胸に触れてきた。

「ふえっ⁉︎ あ、あのっ⁉︎」

 いつのまにか上半身が乱れてはだけている。大きな胸がツンと天井を向いており、その先端がしっかりと膨れていた。ゴーティエ王子の手は私の胸を包み、指の股で硬くなった果実を巧みにしごく。

「やぁっ……わ、私にも話をさせて……っ‼︎」

 気持ちがいい。頭の中が真っ白になってしまいそうなくらい。
 とにかく行為をやめてほしくて、私の胸を揉む左手に自分の手を添えた。

「貴女とアロルドには大きな接点はなかったと思うが、噂を聞いて熱をあげる女子も多いからな。興味を持っていてもおかしくはない」
「ゴーティエ王子……私を信用して……」
「婚約をなかったことにしてくれという女の話など、そう信用できないな。オレは貴女の頭脳を評してもいる。おそらく、オレは貴女がしようとする計画の先回りはできない。裏をかくことも難しいだろう」
「そ、そんなことは……ああ、んっ、やめて……」

 刺激が変わって、私の身体は小さく震えた。快感が言葉を奪っていく。

「ヴァランティーヌ、貴女こそオレを信用したらどうだ? 子を流したくない、自分の死を避けたい気持ちはわかるつもりだ。オレだって貴女を失いたくはないし、オレとの子を流すなんて想像もしたくない。協力は惜しまないと告げたのに、貴女は勝手なことをしようとする。オレとの結婚がそんなに嫌なのか?」

 私は懸命に首を横に振った。
 これは拷問なのだと、やっと思い知った。

「い、嫌だなんて、めっそうもないことでございます!」

 私が否定すると、ゴーティエ王子はニタァと笑った。美形にはそういう笑みを浮かべてほしくはないが、不気味さの中に色気も混じっているように感じられて混乱する。すごくゾクッとした。

「――逃がさないよ、ヴァランティーヌ。あとでちゃんと話してね」

 頷く前に唇を塞がれる。左手は胸を揉みしだき、右手はスカートの中に潜り込んでいく。

「んんっ⁉︎」

 私の抵抗など意味をなさない。ゴーティエ王子によって引き出された快感でぐったりと身動きが取れなくなるまで、私はたっぷりと愛されたのだった。
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