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鉱物研究者ですが、魔物退治はじめました。

戦場で俺の出番はなさそうで

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「……魔物討伐だと聞いてここに来てはいるんだが、アンタが指摘したように、おれたちごと処分するつもりがある可能性は捨てられない」

 オブシディアンがその低い声で状況を説明する。

「いきなり空中に放り出されたのも、か?」
「あれは割とデフォルトなんだよねえ」
「そうなのか……」

 エメラルドが苦笑した。
 そうか、いきなり空中に飛ばされるのは本当によくあることなのか。
 密かに、次の出撃命令があったらパラシュートの準備をしておこうと心に誓う。それはそれで目立ってしまうので、魔物と遭遇していたら悪手のような気もしないでもないが。

「任務の様子がおかしいのは事実なんだよな。これだけ動いているのに魔物が来ないってのも妙なんだ」
「それって、俺が一緒にいる都合で魔力の出力を抑え込んでいるからだったりしないか?」
「ああ、なるほど」

 オパールが手を合わせた。

「おびき寄せるために、魔力の解放してみるか」

 オパールが視線をオブシディアンに向ける。彼は頷いた。

「魔力あたりを防ぐためにオレがバルの盾になる。ルビは迎撃準備、エメラルドは索敵開始だ」
「了解」
「準備オーケー」

 それぞれが意識を集中させる。
 オブシディアンは携えていた剣を構えて精神統一を始める。魔力の影響からか周囲が重く感じられる。
 空気が震え、ガラスが割れるような音が響く。

「破!」

 一喝。オブシディアンの声が地下空間に響き渡る。それと同時にひゅるりと長い物体が彼に向かって伸びてくる。

「ほう? これは見ないタイプの魔物だな」

 ルビが間髪入れずに術で炎を出して長細い物体を焼き切った。焦げたにおいが立ち込める。

「鉱物人形の魔力に反応するタイプってことだな」
「気配が周囲に増えているよ」
「本体はどこだ?」

 冷静に分析し、次の攻撃も焼き払ってルビが情報共有をし、エメラルドとオパールがそれぞれの役割に応じた返答をする。
 戦場に慣れていない俺の出番はなさそうだ。

「空間全体の状況は把握した。ひとはらいするからしゃがんでろ!」

 オブシディアンが剣を構えて横に薙ぎ払う。
 オパールが俺の頭を下げさせて、なんとか衝撃波をかわせた。危ない。一般人、そんなに機敏に動けねえよ。
 プチプチという小さな破裂音が至る所で聞こえたかと思えば、ようやく静けさを取り戻した。

「ザコは一掃した。本体はこの奥だ。先行する」

 巨躯を使いこなしているようで、オブシディアンは宣言するなり暗闇に姿を消した。

「あーあ。……行っちゃった」
「いつも、ああいう感じなのか?」
「そうだな。だから、心配いらないぞ」

 直後、魔物の悲鳴が聞こえてきた。絶命の声。空気が震える。

「魔力を抑え込んでいた都合で、能力も抑え込んでいたのか。オブシディアンは強いんだな」
「戦場にもよるさ。向き不向きがある。俺はあいつより強いぜ?」

 俺がオブシディアンを評価すると、ルビがすぐに反論した。

「――それこそ、状況次第だろ。おれが勝つことも多い」

 そうたたずにオブシディアンは戻ってきて、ルビの言葉にツッコミを入れた。余裕の戦闘だったようで、着衣の乱れも汚れも見当たらない。瞬殺だったようだ。

「おいおい、喧嘩はよせ。模擬戦で決めるってことで」
「異議なし」

 オパールが仲裁に入り、エメラルドが強制的に模擬戦の方向に舵を切った。ルビとオブシディアンは渋々それに従う。

「じゃ、任務完了ってことで、地上への道を探しますかねえ」

 瘴気が薄まっていくのを感じる。魔物討伐に成功したのは間違いなさそうだ。
 オパールの指揮で出口を探しに行こうと動き出したその時だった。
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