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アフターストーリー【不定期更新】
梅雨入りは、遠く
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今年の梅雨入りは遅くなりそうな気がする。
こんなに雨に降られてばかりなのに。
「いやあ、すごい雨だったねえ」
休日の趣味になりつつあるジョギングをしていたら、突然大雨に当たった。ついていない。
「びしょびしょですね……」
次の角を曲がれば帰宅できるとあって雨宿りはせずにまっすぐ自宅アパートに走ったのだが、とんでもない量の雨で全身ずぶ濡れである。こんなことなら雨が降り出した時点でコンビニにでも入ればよかった。
私が靴を脱いで上着を脱ぐかどうかモタモタしていると、先に浴室に向かった彼がタオルを持って戻ってきた。私の頭にバスタオルを置いて髪を拭いてくれる。
「すぐにシャワーを浴びるから、そのままでも」
「雫が落ちるから、拭いたほうがいいよ」
「それは……そうですけど」
あまりにも心地がいいので、そのままわさわさと拭いてもらう。これは悪くない。
「ふふ。湯船にお湯を張っているから、溜まったら温まるといいよ」
「あの一瞬で用意したんですか?」
「だから、一緒に入ろう?」
手が止まってニコッとされる。私の好きな顔が、私に微笑みかけてくれるとグッときてしまうものだ。悔しいが、どうにも慣れない。
「まあ……そうですね」
「ふふ。許可が得られて嬉しいよ」
「元気そうでなによりです」
「風邪をひかないように気をつけないとね。だから、必要以上に体力を奪うようなことはしないさ」
「何をするつもりだったんですか……」
妙にご機嫌なのはスキンシップを希望しているからなのだろう。体力は奪わないつもりだと宣言しているが、気が変わるかもしれない。彼はそういう性格だ。
「ナイショ」
私は彼からタオルを奪って、雫がしたたる場所を拭う。少しの時間だったはずなのに、上着は絞れそうなほど濡れていた。
「……今年はこんなふうに急に天候が崩れること、多いんですかね」
ゲリラ豪雨がどうのという話はニュースで聞いている。ピンポイントで大雨になるから注意がより必要なのだという。今日のはきっとそれだろう。
「どうだろうねえ。ここの土地の神様の気分次第じゃないかな」
「そういうものなんですか?」
「そういうこともあるってことだよ」
彼は曖昧に返して浴室に消える。この天候の事情を彼は知っているのだろうか。
私はバスタオルをぎゅっと抱きしめて、彼を追ったのだった。
《終わり》
こんなに雨に降られてばかりなのに。
「いやあ、すごい雨だったねえ」
休日の趣味になりつつあるジョギングをしていたら、突然大雨に当たった。ついていない。
「びしょびしょですね……」
次の角を曲がれば帰宅できるとあって雨宿りはせずにまっすぐ自宅アパートに走ったのだが、とんでもない量の雨で全身ずぶ濡れである。こんなことなら雨が降り出した時点でコンビニにでも入ればよかった。
私が靴を脱いで上着を脱ぐかどうかモタモタしていると、先に浴室に向かった彼がタオルを持って戻ってきた。私の頭にバスタオルを置いて髪を拭いてくれる。
「すぐにシャワーを浴びるから、そのままでも」
「雫が落ちるから、拭いたほうがいいよ」
「それは……そうですけど」
あまりにも心地がいいので、そのままわさわさと拭いてもらう。これは悪くない。
「ふふ。湯船にお湯を張っているから、溜まったら温まるといいよ」
「あの一瞬で用意したんですか?」
「だから、一緒に入ろう?」
手が止まってニコッとされる。私の好きな顔が、私に微笑みかけてくれるとグッときてしまうものだ。悔しいが、どうにも慣れない。
「まあ……そうですね」
「ふふ。許可が得られて嬉しいよ」
「元気そうでなによりです」
「風邪をひかないように気をつけないとね。だから、必要以上に体力を奪うようなことはしないさ」
「何をするつもりだったんですか……」
妙にご機嫌なのはスキンシップを希望しているからなのだろう。体力は奪わないつもりだと宣言しているが、気が変わるかもしれない。彼はそういう性格だ。
「ナイショ」
私は彼からタオルを奪って、雫がしたたる場所を拭う。少しの時間だったはずなのに、上着は絞れそうなほど濡れていた。
「……今年はこんなふうに急に天候が崩れること、多いんですかね」
ゲリラ豪雨がどうのという話はニュースで聞いている。ピンポイントで大雨になるから注意がより必要なのだという。今日のはきっとそれだろう。
「どうだろうねえ。ここの土地の神様の気分次第じゃないかな」
「そういうものなんですか?」
「そういうこともあるってことだよ」
彼は曖昧に返して浴室に消える。この天候の事情を彼は知っているのだろうか。
私はバスタオルをぎゅっと抱きしめて、彼を追ったのだった。
《終わり》
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