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影の王女の成婚
隣国の婚約者 1
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「……僕にはね、幼い頃に婚約者がいた。隣国の王女、マリアンネ。彼女はプラチナブロンドで白い肌の可愛らしい少女だった」
唐突に始まる昔話。
私は快楽に流されたくなくて、彼の言葉に耳を傾ける。
私の記憶が事実であれば、彼の語る話は悲しい物になるだろう。
「――彼女はこの王宮で開かれた茶会に招かれて、僕を狙う刺客から体を張って守ってくれた。だが、その事件がきっかけで隣国との仲が険悪になり、戦火が街を焼いた。彼女の国は滅び、僕の婚約はなかったことになった」
国は滅んでしまった。私の祖国。
私は腹部の怪我を理由に遠縁であるこの国の貴族に身を寄せていた。戦が始まったと聞いて、私は身を隠すために特徴的な髪を染めてその貴族の養子になったのだ。
「僕はマリアンネが生きていることを願った。命の恩人だし、そもそも一目惚れだったんだ。刺客には気づいていた。僕は彼女を守ろうと動いたのだが、間に合わなかった」
――なるほど、バルドゥインが証言者だったのか。
戦を始めるために、刺客をマリアンネ王女に仕向けたのだろう。彼女に罪はないとして、せめて名誉は守ろうとマリアンネがバルドゥインをかばったことにした――と解釈していたのだが。
そもそもあの茶会はさまざまな思惑が交錯しており、飲み物に毒が仕込まれていたとも聞く。マリアンネが重傷を負ったことで誰が誰を狙っていたのかはうやむやになってしまったのだった。
「僕は君を迎えるために努力をしてきたよ。いつか、伴侶として迎えて君に報いたかったから。ずっと好きだったよ、マリアンネ」
「ですから……はぁっ……人違いです」
指が中の窪みを押す。その刺激にビクッとしてしまった。
「いい反応だな。処女でここまで反応がいいと、どのくらい加減をしたらいいか悩ましいな」
執拗に押されると無視できない。ジンジンするのを我慢できないばかりか、愛液が溢れてシーツを汚す。ビクビク震えて反応してしまうのを、私はバルドゥインの豪奢な服を掴んでやり過ごそうと努めた。
「や。もう抜いて」
「慣らさないと痛むだろう?」
「痛くてもいいからっ、やあっ、私、帰りたいのっ」
こんなところでのんびりしてはいられない。仕事に戻って、情報収集をして、少しでも有利に交渉が進むようにしないといけないのに。
「……では、真の名ではなく今の名前で愛してやろう、マグダレナ」
「ひゃぁっ……んぅっ……」
彼も親指が感じやすい粒を擦る。ジンと痺れて、中の指をきつく締めた。
バルドゥインが嬉しそうに笑む。
「どうして身分を明かせないんだ? 君の安全は僕が保証しよう」
「わ、私には使命がありますので」
「僕を誘惑して情報を引き出すことは考えないのか?」
もう片方の手が私の顎を持ち上げて唇を指でなぞる。
「そういう技術は教えてもらえなかってから……」
「ああ、王女に娼婦の真似はさせられないよなあ」
「ですから、人違いです。この傷だって、潜入する技術を身につける過程でしくじったからだから」
「ふぅん?」
秘所をいじっていた指がゆっくり引き抜かれた。
「君の本来の髪色がプラチナブロンドであることはここの毛でわかるんだけど」
そう言いながら、濡れたままの彼の手が陰毛に触れた。
確かにそこの毛は色素が薄い。こんなことになるとは思っていなかったから手入れを怠っていたことを後悔する。剃っておけばよかったのに。
唐突に始まる昔話。
私は快楽に流されたくなくて、彼の言葉に耳を傾ける。
私の記憶が事実であれば、彼の語る話は悲しい物になるだろう。
「――彼女はこの王宮で開かれた茶会に招かれて、僕を狙う刺客から体を張って守ってくれた。だが、その事件がきっかけで隣国との仲が険悪になり、戦火が街を焼いた。彼女の国は滅び、僕の婚約はなかったことになった」
国は滅んでしまった。私の祖国。
私は腹部の怪我を理由に遠縁であるこの国の貴族に身を寄せていた。戦が始まったと聞いて、私は身を隠すために特徴的な髪を染めてその貴族の養子になったのだ。
「僕はマリアンネが生きていることを願った。命の恩人だし、そもそも一目惚れだったんだ。刺客には気づいていた。僕は彼女を守ろうと動いたのだが、間に合わなかった」
――なるほど、バルドゥインが証言者だったのか。
戦を始めるために、刺客をマリアンネ王女に仕向けたのだろう。彼女に罪はないとして、せめて名誉は守ろうとマリアンネがバルドゥインをかばったことにした――と解釈していたのだが。
そもそもあの茶会はさまざまな思惑が交錯しており、飲み物に毒が仕込まれていたとも聞く。マリアンネが重傷を負ったことで誰が誰を狙っていたのかはうやむやになってしまったのだった。
「僕は君を迎えるために努力をしてきたよ。いつか、伴侶として迎えて君に報いたかったから。ずっと好きだったよ、マリアンネ」
「ですから……はぁっ……人違いです」
指が中の窪みを押す。その刺激にビクッとしてしまった。
「いい反応だな。処女でここまで反応がいいと、どのくらい加減をしたらいいか悩ましいな」
執拗に押されると無視できない。ジンジンするのを我慢できないばかりか、愛液が溢れてシーツを汚す。ビクビク震えて反応してしまうのを、私はバルドゥインの豪奢な服を掴んでやり過ごそうと努めた。
「や。もう抜いて」
「慣らさないと痛むだろう?」
「痛くてもいいからっ、やあっ、私、帰りたいのっ」
こんなところでのんびりしてはいられない。仕事に戻って、情報収集をして、少しでも有利に交渉が進むようにしないといけないのに。
「……では、真の名ではなく今の名前で愛してやろう、マグダレナ」
「ひゃぁっ……んぅっ……」
彼も親指が感じやすい粒を擦る。ジンと痺れて、中の指をきつく締めた。
バルドゥインが嬉しそうに笑む。
「どうして身分を明かせないんだ? 君の安全は僕が保証しよう」
「わ、私には使命がありますので」
「僕を誘惑して情報を引き出すことは考えないのか?」
もう片方の手が私の顎を持ち上げて唇を指でなぞる。
「そういう技術は教えてもらえなかってから……」
「ああ、王女に娼婦の真似はさせられないよなあ」
「ですから、人違いです。この傷だって、潜入する技術を身につける過程でしくじったからだから」
「ふぅん?」
秘所をいじっていた指がゆっくり引き抜かれた。
「君の本来の髪色がプラチナブロンドであることはここの毛でわかるんだけど」
そう言いながら、濡れたままの彼の手が陰毛に触れた。
確かにそこの毛は色素が薄い。こんなことになるとは思っていなかったから手入れを怠っていたことを後悔する。剃っておけばよかったのに。
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