魔導師として宮廷入りしたので、殿下の愛人にはなりません?

一花カナウ

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すべての始まり

時間は遡る

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 今日は私が初めてお客をとる日だ。鏡に映る私の顔には緊張が滲んでいる。

 今までなんてことないと思っていたのにこのザマなのだからちょっと情けない。

 娼館で生まれ、そこで育ち十五歳を迎えた。この国では十五歳は立派な成人として認められている。私は自立するため、娼婦になることを選んだ。
 発育がよい身体を持っていたので、これを活かさないのももったいなく感じていた。店のお姉さんたちの仕事自体にも興味があったから、なおさら。

 そんな気持ちでいたわりには、その日がきたら不安のほうが勝るのだから、困ったものね。

 この日のためにお姉さんたちは私を着飾ってくれた。
 緩やかに波打つ黒髪は両わきの髪を束ねて後ろでまとめ、あとはそのままおろしている。髪飾りの代わりに生花を添えて華やかに。化粧も初めてやってもらった。浅黒い肌に映えるように色の淡い紅を目尻にひいて艶っぽくした。唇にも紅をさし、とても大人っぽい。

 巧くやれるかしら?

 緊張し、不安な気持ちが表情を暗くさせる。ずっと世話になってきたこの店にお礼をするつもりもあって娼婦になったのだ、ここで迷惑はかけられない。

 変なお客にあたる心配はほとんどないけれど……どんな人が私を選ぶのかしら。

 ここは王家御用達の娼館である。宮廷や王宮を出入りできる身分の人間しかここを訪れることは許されていない。つまり、身元がはっきりした人間しか利用できないのだ。それだけに、粗相は許されないとも言える。

 とりあえず、祈るか。

 私はこの国を守護する精霊王に本日の平穏無事を願い、待機場を離れたのだった。

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