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魔導師として宮廷入りしたので、殿下の愛人にはなりません?

目が覚めました

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 身体がなんだか重い。この気だるさは魔力を使い果たしたときと似ている気がする。だが、そんなことよりも下腹部の鈍痛が気にかかった。

 えっと……何があったんだっけな?

 もぞもぞと動けば、身体の下に敷かれた布の肌触りがやたらといいことに思い至る。それがきっかけとなって、ここにこうしているに至るまでの全てを思い出した。
 目をぱちっと開ける。

「あ、起きた?」
「ひっ」

 きっと近くにリシャール殿下の顔があるに違いないとは考えていた。だが、目と鼻の先という至近距離でまじまじと顔を見られているとは思うまい。
 私は悲鳴を押し殺して逃げ、立てかけられていた枕に頭を突っ込んだ。

「急に動くと危ないですよ」

 そう告げて、潰れた枕が取り払われる。やれやれといった表情だ。

「で、殿下がおどかすからです。そんな近くにいないでください」
「顔も好みだなって感じたので、じっくり見たかったのです。寝顔、可愛いですよ」

 無邪気な様子でリシャール殿下は返してくる。おそらく、彼の本心そのままを告げているのだろう。
 なお、互いに裸のままだ。

「はいはい、そうですか」

 視線を動かして周囲を確認する。
 部屋の明るさから考えて、あれから時間はそんなに経っていないようだ。よく見れば、行為の残滓が敷布のあちこちに散らばっている。それを見て、ふいに身体に熱が宿った。きゅうっと膣が締まる感じがして、それに私は驚く。これは余韻だ。

 あれ?

 この部屋にいるだろう人物の姿が見えない。隠れているのか気になって、つい頭を動かしてしまった。

「……メルヒオールは?」
「呼びます?」
「そうじゃなくて。どこにいったかなって」

 呼べば出てこられる場所にいるのだろうか。

 師範代になる最年少記録を大幅に更新するだろうと期待されている優秀な魔導師のメルヒオールなら、姿を消す魔法を使って潜んでいることも可能だろう。しかし、彼の性格的にはこの場をそっと離れたのだと推測できる。
 リシャール殿下はメルヒオールを探す動作をせず、ただ口を開く。

「扉の外で魔力の暴走に備えた魔法をかけているところじゃないですか? 多少アレコレがあっても平気なように」
「はあ。――今までそういったことはあったのですか?」

 今後の参考にしようかと思い、私は訊ねる。
 魔力の相性によって魔法が暴発することが稀にあることを考えると、傾向を知っておくことは行為中に使う魔法の良し悪しにも関係するだけに重要だ。

「うーん、あったようななかったような?」
「どうして曖昧なんですか。大事な部分ですよ、それ」
「立場上、行為中に命を狙われることもあるから、さ」

 リシャール殿下はおどけた言い方をしてきたが、つまりそれは――。
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