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魔導師として宮廷入りしたので、殿下の愛人にはなりません?

宮廷入りした日に出逢いまして。

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 宮廷魔導師として宮廷入りした日のパーティのことだ。
 これまでのお礼のために私がメルヒオールに挨拶をしに行くと、そこには彼とよく似た美貌の青年がいた。先ほど壇上にいた人物だ。金髪碧眼、着痩せしてはいるが鍛えているらしいことの感じられる体躯の持ち主は、リシャール・ラフィエット。現在、王位継承権第一位を持つ――つまりは王子さまだ。

「ああ、君がモニックさん? メルから話は聞いていたけど、ふーん、なるほどなるほど」

 リシャール殿下はそう言いながら、私を値踏みするように足の先から頭のてっぺんまで目を向けた。
 不躾な視線にムッとするも、相手が相手なだけに私はなんでもないような顔をしてやり過ごすことにする。

「メルがなびかないのもよくわかるし、実に私好みだ」
「はい?」

 隣にいるメルヒオールが額に手を当てて、頭痛を訴えているような表情を浮かべる。私もこの場にそぐわない顔をしていたことだろう。リシャール殿下がすごく上機嫌なのが実に対照的。

「精神系の魔法が得意なんだって? 今夜私の部屋に来て誘惑してみないかい?」
「口説いているつもりであれば、もう少々言葉を選んで欲しいのですが、殿下」
「私はまどろっこしいのが嫌いなんで」

 彼はすでにお酒が回っているのではないだろうか、と思わず疑ってしまう。
 リシャール殿下の評判はかなりいい。頭脳面では政治や歴史に強いと聞いている。魔術師特性が低いがために幼い頃から身体を鍛え続け、国内の名だたる騎士と張り合える腕前とも噂される。次の世を任せるに足る存在だと、国民から慕われている男ではないのか。

「ではもっとストレートに仰ればいいのではないかと。……私の立場では、断ることはできないのですし」
「断ってもいいですよ」

 私が困っているのを察してくれたのか、メルヒオールがはっきりとした口調で言葉を挟む。
 それを聞いてか、リシャール殿下はあからさまに嫌そうな顔をした。

「あ、いえ、でも」

 助け舟だとしても、メルヒオールにこれ以上の借りを作るわけにはいかない。私は二人の顔を交互に見る。

 二人って似ているけど、何だろう。こんなに魔力の感じ方が違うものなの?

 そばにいるからよくわかる。彼らの関係も察せられれば、なおのこと肌で感じる魔力に異質なものが混じっているのが気にかかる。

「そーだっ!」

 他のことに気を取られていたら、リシャール殿下が手をポンと叩いて無邪気に笑った。

「メルも一緒に部屋に来てください。仲良くしましょう!」

 そのときのメルヒオールの顔を、たぶん私は一生忘れない。

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