2 / 38
魔導師として宮廷入りしたので、殿下の愛人にはなりません?
宮廷入りした日に出逢いまして。
しおりを挟む
宮廷魔導師として宮廷入りした日のパーティのことだ。
これまでのお礼のために私がメルヒオールに挨拶をしに行くと、そこには彼とよく似た美貌の青年がいた。先ほど壇上にいた人物だ。金髪碧眼、着痩せしてはいるが鍛えているらしいことの感じられる体躯の持ち主は、リシャール・ラフィエット。現在、王位継承権第一位を持つ――つまりは王子さまだ。
「ああ、君がモニックさん? メルから話は聞いていたけど、ふーん、なるほどなるほど」
リシャール殿下はそう言いながら、私を値踏みするように足の先から頭のてっぺんまで目を向けた。
不躾な視線にムッとするも、相手が相手なだけに私はなんでもないような顔をしてやり過ごすことにする。
「メルがなびかないのもよくわかるし、実に私好みだ」
「はい?」
隣にいるメルヒオールが額に手を当てて、頭痛を訴えているような表情を浮かべる。私もこの場にそぐわない顔をしていたことだろう。リシャール殿下がすごく上機嫌なのが実に対照的。
「精神系の魔法が得意なんだって? 今夜私の部屋に来て誘惑してみないかい?」
「口説いているつもりであれば、もう少々言葉を選んで欲しいのですが、殿下」
「私はまどろっこしいのが嫌いなんで」
彼はすでにお酒が回っているのではないだろうか、と思わず疑ってしまう。
リシャール殿下の評判はかなりいい。頭脳面では政治や歴史に強いと聞いている。魔術師特性が低いがために幼い頃から身体を鍛え続け、国内の名だたる騎士と張り合える腕前とも噂される。次の世を任せるに足る存在だと、国民から慕われている男ではないのか。
「ではもっとストレートに仰ればいいのではないかと。……私の立場では、断ることはできないのですし」
「断ってもいいですよ」
私が困っているのを察してくれたのか、メルヒオールがはっきりとした口調で言葉を挟む。
それを聞いてか、リシャール殿下はあからさまに嫌そうな顔をした。
「あ、いえ、でも」
助け舟だとしても、メルヒオールにこれ以上の借りを作るわけにはいかない。私は二人の顔を交互に見る。
二人って似ているけど、何だろう。こんなに魔力の感じ方が違うものなの?
そばにいるからよくわかる。彼らの関係も察せられれば、なおのこと肌で感じる魔力に異質なものが混じっているのが気にかかる。
「そーだっ!」
他のことに気を取られていたら、リシャール殿下が手をポンと叩いて無邪気に笑った。
「メルも一緒に部屋に来てください。仲良くしましょう!」
そのときのメルヒオールの顔を、たぶん私は一生忘れない。
これまでのお礼のために私がメルヒオールに挨拶をしに行くと、そこには彼とよく似た美貌の青年がいた。先ほど壇上にいた人物だ。金髪碧眼、着痩せしてはいるが鍛えているらしいことの感じられる体躯の持ち主は、リシャール・ラフィエット。現在、王位継承権第一位を持つ――つまりは王子さまだ。
「ああ、君がモニックさん? メルから話は聞いていたけど、ふーん、なるほどなるほど」
リシャール殿下はそう言いながら、私を値踏みするように足の先から頭のてっぺんまで目を向けた。
不躾な視線にムッとするも、相手が相手なだけに私はなんでもないような顔をしてやり過ごすことにする。
「メルがなびかないのもよくわかるし、実に私好みだ」
「はい?」
隣にいるメルヒオールが額に手を当てて、頭痛を訴えているような表情を浮かべる。私もこの場にそぐわない顔をしていたことだろう。リシャール殿下がすごく上機嫌なのが実に対照的。
「精神系の魔法が得意なんだって? 今夜私の部屋に来て誘惑してみないかい?」
「口説いているつもりであれば、もう少々言葉を選んで欲しいのですが、殿下」
「私はまどろっこしいのが嫌いなんで」
彼はすでにお酒が回っているのではないだろうか、と思わず疑ってしまう。
リシャール殿下の評判はかなりいい。頭脳面では政治や歴史に強いと聞いている。魔術師特性が低いがために幼い頃から身体を鍛え続け、国内の名だたる騎士と張り合える腕前とも噂される。次の世を任せるに足る存在だと、国民から慕われている男ではないのか。
「ではもっとストレートに仰ればいいのではないかと。……私の立場では、断ることはできないのですし」
「断ってもいいですよ」
私が困っているのを察してくれたのか、メルヒオールがはっきりとした口調で言葉を挟む。
それを聞いてか、リシャール殿下はあからさまに嫌そうな顔をした。
「あ、いえ、でも」
助け舟だとしても、メルヒオールにこれ以上の借りを作るわけにはいかない。私は二人の顔を交互に見る。
二人って似ているけど、何だろう。こんなに魔力の感じ方が違うものなの?
そばにいるからよくわかる。彼らの関係も察せられれば、なおのこと肌で感じる魔力に異質なものが混じっているのが気にかかる。
「そーだっ!」
他のことに気を取られていたら、リシャール殿下が手をポンと叩いて無邪気に笑った。
「メルも一緒に部屋に来てください。仲良くしましょう!」
そのときのメルヒオールの顔を、たぶん私は一生忘れない。
0
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説
【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜
まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください!
題名の☆マークがえっちシーンありです。
王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。
しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。
肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。
彼はやっと理解した。
我慢した先に何もないことを。
ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。
小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる