12 / 12
目が覚めた後で【完結】
私は壁!挟まれたいわけじゃない!
しおりを挟む
※※※※※
目が覚めると、自分の部屋だった。
……じゃあ、全部、夢?
むくりと起き上がると、毛布がずるりと落ちる。肌をすべる生地の感触に違和感を覚えた。
ん、この感覚……服はどうした?
視線を胸元に向ける。白い膨らみが剥き出しになっていてびっくりすると同時に、アザのようなものがうっすらと肌に残っているのが目に入った。
「あ」
アメシストとシトリンと一夜を共にしたのは夢ではなかったようだ。肌に残っているのは、アメシストがつけたキスマークに違いない。
アメシストさんは私の胸、好きなんだろうな……
私は頭痛を覚えて頭を抱える。
「いや。ないわ……次って、無理でしょうよ……」
約束をしろと言われて頷いてしまった。眠っている間に移動させてくれたほかは、特にこれといった異常はなさそうだ。その点については安堵できたが。
どうしよう。
こんなことを相談できる相手がいないことに気がついた。なんてこった。一人で対処せねばならない。
ずっと唸っていても仕方がないので、私は着替えることにする。
ベッドから出てキョロキョロすると、椅子の上に制服を見つけた。私の制服はきちんと畳まれており、服の上に手紙が添えられている。
嫌な予感。
私はおそるおそるそれを摘んで、文面に目を通した。
シトリンより、マスターへ。
次の予定は週末でどうだろうか。任務がなければ、買い物に行くことを提案したい。よき返事を求む。
几帳面な文字はシトリンのものだとすぐにわかった。彼らしい堅い文面だが、デート及びそのあとのお誘いである。
あれ? アメシストさんは?
さんにんで、とは書いていない。ほかに手紙があるかと思って服やその周辺を探るが、アメシストからのものはなかった。
直接言いに来るつもりなのかしら?
見た目は似てるけれど、行動はそれぞれなのかもしれない――そんなところを微笑ましく感じはじめたところで、意識を切り替えた。
私は壁! 推しに挟まれたいわけじゃない‼︎
どうしてこうなった。
……私はアメシストさんとシトリンさんがなかよくしているのを見守りたかっただけなんだけどなぁ。
うまくことが進まないことを憂鬱に感じながら、私は制服の袖に手を通したのだった。
《終わり》
目が覚めると、自分の部屋だった。
……じゃあ、全部、夢?
むくりと起き上がると、毛布がずるりと落ちる。肌をすべる生地の感触に違和感を覚えた。
ん、この感覚……服はどうした?
視線を胸元に向ける。白い膨らみが剥き出しになっていてびっくりすると同時に、アザのようなものがうっすらと肌に残っているのが目に入った。
「あ」
アメシストとシトリンと一夜を共にしたのは夢ではなかったようだ。肌に残っているのは、アメシストがつけたキスマークに違いない。
アメシストさんは私の胸、好きなんだろうな……
私は頭痛を覚えて頭を抱える。
「いや。ないわ……次って、無理でしょうよ……」
約束をしろと言われて頷いてしまった。眠っている間に移動させてくれたほかは、特にこれといった異常はなさそうだ。その点については安堵できたが。
どうしよう。
こんなことを相談できる相手がいないことに気がついた。なんてこった。一人で対処せねばならない。
ずっと唸っていても仕方がないので、私は着替えることにする。
ベッドから出てキョロキョロすると、椅子の上に制服を見つけた。私の制服はきちんと畳まれており、服の上に手紙が添えられている。
嫌な予感。
私はおそるおそるそれを摘んで、文面に目を通した。
シトリンより、マスターへ。
次の予定は週末でどうだろうか。任務がなければ、買い物に行くことを提案したい。よき返事を求む。
几帳面な文字はシトリンのものだとすぐにわかった。彼らしい堅い文面だが、デート及びそのあとのお誘いである。
あれ? アメシストさんは?
さんにんで、とは書いていない。ほかに手紙があるかと思って服やその周辺を探るが、アメシストからのものはなかった。
直接言いに来るつもりなのかしら?
見た目は似てるけれど、行動はそれぞれなのかもしれない――そんなところを微笑ましく感じはじめたところで、意識を切り替えた。
私は壁! 推しに挟まれたいわけじゃない‼︎
どうしてこうなった。
……私はアメシストさんとシトリンさんがなかよくしているのを見守りたかっただけなんだけどなぁ。
うまくことが進まないことを憂鬱に感じながら、私は制服の袖に手を通したのだった。
《終わり》
0
お気に入りに追加
54
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は皇帝の溺愛を受けて宮入りする~夜も放さないなんて言わないで~
sweetheart
恋愛
公爵令嬢のリラ・スフィンクスは、婚約者である第一王子セトから婚約破棄を言い渡される。
ショックを受けたリラだったが、彼女はある夜会に出席した際、皇帝陛下である、に見初められてしまう。
そのまま後宮へと入ることになったリラは、皇帝の寵愛を受けるようになるが……。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。


どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました
鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。
素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。
とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。
「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる