破滅回避令嬢は婚約者の貞操を狙っています⁉︎

破滅回避したいだけの令嬢は全力で突っ走る。

とまあ、いろいろあって殿下の部屋にやってきまして、ベッドイン……するの？

「――なんで笑っている？」
「昔の……出会った頃を思い出してしまって」
「そうか。オレも思い出していた。あのときから、この想いをどう処理するのが正しいのか、ずっと悩んでいたんだぞ」

　私はベルトールドのベッドにおろされていた。私が逃げないように腰のあたりに乗っかって、彼は盛装を脱ぎ捨てていく。

　思っていたより筋肉質……ね？

　ベルトールドの上半身が露わになって、私はハッと我に返った。

「ま、待って？　え、本当に、本当に致しちゃうんですっ⁉︎」
「するに決まっているだろう？　いつこうなってもいいように、お前の実家からもオレの実家からも許可は取っている。妊娠した場合の休学措置についても学園には相談済みだ」

　マジですか⁉︎　四六時中いっしょに行動していたのに気づきませんでしたけど⁉︎

　私が慌てると、ベルトールドはクスクスと笑った。すべてをさらけ出すつもりでいて自分の気持ちに蓋をしていないからか、自然と楽しそうに笑っている。

「……避妊はしないんですね」
「する必要はないだろう。世継ぎは望まれている。励むがよいと父上に背中を押していただいた。案ずるな」
「ええ……」
「経験がないからツライ思いをさせてしまうかもしれないが、許せ。できる限り優しく愛そう」
「ドレス……気に入っているので、ちゃんと脱がしてほしいです」
「そうだな。このままだと傷めてしまうかもしれないから、そうしよう」

　上からどいてもらい、ベッドからおりるとドレスを脱ぐ準備をする。あちこちをきつく縛りあげて身体の線を出しているので、いちいち解かないといけないのが手間だなあと思う。

「素直になったな」
「誤解していたのだとわかったので」
「もう逃げないでくれ」
「あのようなみっともない真似はもうしませんわ」

　下着になったところで、待ちきれないとばかりに口づけを交わしてベッドに雪崩れ込む。触れ合う互いの肌がとても熱い。

「ベルトールドさま……」
「かわいいな、想像していた以上にそそられる。――まあ、計画どおりにお前が責めてきたらどうなっていたのかも気にはなるんだが」
「け、計画は未遂のままで終わりますよ、できないですもんっ‼︎」
「どうかな。衆目の認める中で熱烈な口づけをする度胸はあったんだ。あるいは可能だったかもしれないぞ？」
「だ、だったら、あのとき返さなければよかったのに‼︎」
「我慢できなかったんだから仕方がないだろ」

　告げて、ベルトールドは私の頭を押さえて舌を絡める口づけをする。なんか不思議な感覚に包まれた。

「ん、っふう」

　鼻から甘い声が漏れて、私は恥ずかしさに肌を染めた。いやらしい感じがする。

「愛している、グラーツィア」

　首筋に口づけをされて、やわやわと胸を揉まれる。大きく育ちすぎた膨らみは彼の大きな手からもはみ出た。

「揉むと気持ちいいんですか？」
「ふかふかで心地がいい。お前も気持ちよくなるように努力しよう」

　前世では経験があったが、胸で気持ちよくなったことは一度もなかった。ベルトールドの気遣いを感じる手つきには幸福感があったけれど、気持ちがいいとは思えない。

「……少し刺激を変えてみようか？」

　私の反応がイマイチなのを察してかベルトールドさまが提案してくる。私は顎を小さく引いて、提案をのんだ。
　お互いに全裸になって、ぎゅっと抱きしめる。少し汗の匂いがした。

「緊張してる？」
「初めてだから」
「オレもね、とても緊張しているよ。力でねじ伏せるのは簡単だろうけど、それはオレが望まないことだから」
「ありがとうございます」
「少しずつ、ひとつになろう」

　この人なら怖くない、そう感じられた。
　普段はポーカーフェイスなのに、私の顔を見てすごくすごく幸せそうに笑って、私の額に口づけをしてくれるのだ。
　この人が旦那さまになるのかな。
　不意をついて上下を入れ替える。私が上、ベルトールドさまが下。