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【後日譚】その日の夜に
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勢いというものは恐ろしいものである。
終電まではまだ時間があるくらいの夜更けで、そんな頃合いだからといってホテルに案内するにはペットのフクロウを連れては入れないしで、無難にオレの部屋を提案したわけだが――少し早まったかもしれない。
オレ、こと守永航は、シャワーの音を壁越しに聴きながら悶々としていた。
――よく考えたら、煙を吸わせてしまった都合で獣医に一晩預かってもらう展開は想像できたんだよな……仮にも獣医を目指して勉強中の身なんだし。
緊急事態で動揺していたんだな、とオレは改めて感じた。
転生先で再会した彼女――天宮萌絵が住んでいた木造アパートが火事になり、彼女の相棒であるフクロウのヴィヴィアンをオレが救助した。それが二時間前の話。
その後、ヴィヴィアンのかかりつけ医のいる病院に寄って診察。ヴィヴィアンは一晩預かりになった。煙を吸っているのも確かだが、事情が事情なのでお泊りにしたほうがラクだろうと気を利かせてくれたようだ。離れるときに暴れることもなかったので、そのままお言葉に甘える形になった。
そんなわけで、萌絵にはオレのうちに来てもらった。気が落ち着かない萌絵にシャワーを勧めて、今に至る。
――オレの精神力が試されている……
前世のオレは現世の彼女に想いを告げている。そのときの想いをオレは引き継ぎ、彼女と再会して気持ちが変わっていないことを確信した。オレは今の気持ちを彼女に告げて、とりあえず返事は保留中。
――混乱の最中に好きだと言われたが、さすがにノーカンだよな……抱きたいとも言ったが、やっぱりそういうことはもっと互いを知ってからがいいだろうし、うっかり酒を飲まされすぎたから、気が回るかわからないんだよな……だが、キスくらいはしたい……
前世のことが昨日のことのように思い出せる。萌絵に再会した夜に夢に見てしまったから、なおさら生々しい。深いキスをして、肌で触れ合った。いやらしいことはしていないつもりだが、暖かで柔らかな感触は、あんな状況じゃなければ理性なんて吹き飛んでいたはずだ。
「――航さん? お風呂、ありがとう」
「お、おう!」
瞑想状態になっていたオレは、急に声をかけられてびっくりしていた。目を開ければ、オレのパジャマシャツを羽織った萌絵がいる。シャツがぶかぶかなのは、オレの体格が良すぎるからだろう。
オレは両親が日本人であるにしては、恵まれすぎた体格を持っている。少し鍛えるだけで筋肉がすぐにつく体質なのだ。
――う……目の毒だな……
終電まではまだ時間があるくらいの夜更けで、そんな頃合いだからといってホテルに案内するにはペットのフクロウを連れては入れないしで、無難にオレの部屋を提案したわけだが――少し早まったかもしれない。
オレ、こと守永航は、シャワーの音を壁越しに聴きながら悶々としていた。
――よく考えたら、煙を吸わせてしまった都合で獣医に一晩預かってもらう展開は想像できたんだよな……仮にも獣医を目指して勉強中の身なんだし。
緊急事態で動揺していたんだな、とオレは改めて感じた。
転生先で再会した彼女――天宮萌絵が住んでいた木造アパートが火事になり、彼女の相棒であるフクロウのヴィヴィアンをオレが救助した。それが二時間前の話。
その後、ヴィヴィアンのかかりつけ医のいる病院に寄って診察。ヴィヴィアンは一晩預かりになった。煙を吸っているのも確かだが、事情が事情なのでお泊りにしたほうがラクだろうと気を利かせてくれたようだ。離れるときに暴れることもなかったので、そのままお言葉に甘える形になった。
そんなわけで、萌絵にはオレのうちに来てもらった。気が落ち着かない萌絵にシャワーを勧めて、今に至る。
――オレの精神力が試されている……
前世のオレは現世の彼女に想いを告げている。そのときの想いをオレは引き継ぎ、彼女と再会して気持ちが変わっていないことを確信した。オレは今の気持ちを彼女に告げて、とりあえず返事は保留中。
――混乱の最中に好きだと言われたが、さすがにノーカンだよな……抱きたいとも言ったが、やっぱりそういうことはもっと互いを知ってからがいいだろうし、うっかり酒を飲まされすぎたから、気が回るかわからないんだよな……だが、キスくらいはしたい……
前世のことが昨日のことのように思い出せる。萌絵に再会した夜に夢に見てしまったから、なおさら生々しい。深いキスをして、肌で触れ合った。いやらしいことはしていないつもりだが、暖かで柔らかな感触は、あんな状況じゃなければ理性なんて吹き飛んでいたはずだ。
「――航さん? お風呂、ありがとう」
「お、おう!」
瞑想状態になっていたオレは、急に声をかけられてびっくりしていた。目を開ければ、オレのパジャマシャツを羽織った萌絵がいる。シャツがぶかぶかなのは、オレの体格が良すぎるからだろう。
オレは両親が日本人であるにしては、恵まれすぎた体格を持っている。少し鍛えるだけで筋肉がすぐにつく体質なのだ。
――う……目の毒だな……
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